ふいに足を止めた、夕暮れの帰り道。 

畑の道の傍らに、夕陽のあかねに染まる 
とうもろこしの草々は、きれいに整列して 
緑の背筋をまっすぐ伸ばし 
両腕の葉をひろげながら 
顔を揃えてに ....
なけなしの金を 
銀行ATMから下ろして 
伊東への旅に出たら 
財布も口座も 
すっからぴんになってしまった 

安月給から食費だけは 
嫁さんにあずけているが 
幼い息子と3人で  ....
なぜ彼等はあの日、自ら日々の線路を下りて 
漆黒の闇の彼方へ堕ちていったのか――? 

地上に堕ちた天使等は、時に 
ふたたび空へ舞いあがってゆくだろうか――? 

地上に遺されたひとりの ....
日々の職場で、ある日  
宿題が、天からふってきた 

不器用な僕が 
眉間に皺を寄せる 
難解な教科書の、設問 

この小さい両手の皿から 
今にもあふれそうな
こぼれそうな、なに ....
異国のひとの後ろに並んだ。 
ぷうんと異国の匂いがした。 

異国のひとはその前の背中から 
日本人の淡い匂いを嗅いだ。  

他人の匂いは良く嗅ぐが 
自分の体臭は知らないもの 

 ....
両手をそっと前に組み 
瞳を閉じる少女は 
窓から射す日に照らされた母が 
膝の上に開いた本の言葉を 
じっと、聴く―― 

   * 

数十年後、大人になった彼女は 
街中のとあ ....
ミレーの描く風景の中で 
鍬を手に畑を耕す農夫の汚れた体に 
{ルビ朧=おぼろ}な姿を重ねている 
(透きとおった人)の澄んだ瞳  

遠い異国の風景から、ふりかえり 
あなたをじっと視て ....
(ほんとう)を見なければ 
この口から{ルビ血反吐=ちへど}ははき出され 
この体は透きとおった屍になるだろう 

(ほんとう)が靄の向こうに 
段々と姿を現す時 
この足は自ずと前へ、踏 ....
枯草の中に埋もれた 
名も無き花のつぼみが 
こちらに口を開いていた 

花の声に耳を澄ましていると 
自らのつぼみが 
開いてゆきそうな気がする 
何処へ行っても 
同じような人間ばかり住んでおり 
同じような村や町やで 
同じように繰り返される日々―― 

旅を求める私の道は 
人が時空と因果の外へ飛翔する 
あの瞬間 
夢と{ ....
日常の何でもない場面の空間に 
ふと、穴があくことがあり 
光の手が(こちらへおいで)と 
私を招いて、呼びかける 

瞳の色が失せた時も 
その手を見ると 
心臓はめらめら燃えて 
 ....
体の無い死者が描いた絵を 
体のある生者は、額縁に    
重ねるだろう 

生者の描いた絵は 
死者が透きとおった額縁に 
重ねるだろう 

震災から一年後 
旅人の僕 ....
夜、自分の部屋に入り 
スタンドの灯をともし 
広げた日記のスクリーンに 
「今日一日」を映してみる 

いちめんの白紙から 
日中の妻の声が聴こえてくる 
「周はパパが好きなのねぇ」  ....
自分の好きな時間割をつくろう 
自分の好きな勉強をしよう 
(チャイムとは、心の中に響くもの) 

ほんとうの時間割は 
先生にもらうものじゃない 
ほんとうの学校は 
決まった通学路の ....
19年前にお線香をあげた 
尾崎豊さんの実家に行ったら 
雨戸と鍵が閉まっており 
古い家はひっそりと沈黙していた 

「せっかく遠くから来たのにねぇ 
 ゆたちゃんのお父さんはご高齢で  ....
車で信号を待つひと時は 
役者が舞台にあがる前の 
あの瞬間、に似ている 

交差点を 
右から左へ、左から右へ 
車はゆき交い 

のたり、杖をつくお爺さんと 
たたた・・・と駆け ....
在りし日の祖母の部屋にて 
スタンドの灯をぽつんと点けて 
幼い頃に玩具で遊んだ 
炬燵の机の細かい傷を 
じぃ・・・っとみつめた

向かいの座布団の上から 
からだの無い 
祖母のに ....
駐車場に停まった
車の助手席から眺める 
スーパーの硝子の向こうで 
ベビーカーを押しながら 
おむつを買っている、妻の姿 

長い間、出逢わなかった 
二つの道が一つになっている 
 ....
庭にじっと佇んで 
土に根を張るあの花は 
いつのまに 
こちらに蕾を開くでしょう 

時というものが 
ぴたりと止まった
{ルビ永遠=とわ}ならば――? 

湖上にぽつんと浮かび  ....
食卓の上に置かれた 
一つの{ルビ匙=さじ}は 
天井のらんぷの灯を映し 
遥かな光をのせている 

この右手を同じ形にして 
そっと宙に、差し出してみる 
目の前に、一本の棒がある。 

誰も高飛びをしろとは言わない 
ただ、越えねばならぬ。 
向こう側に、行かねばならぬ。 
誰もお前の美しい技を待ってはいない 

目の前の、一本の棒を見る ....
一つのものをじっと視ると 
目が熟してゆく 

机上に置かれた 
何の変哲もないコップに宿る 
一つの目が、こちらを視ている 
目の前にまっさらな木の板がある。 
ペンを持つ手があらわれ 
中心に名前を書いていった 

それは一つの遠い約束。 

生まれるよりずっと昔から 
何者かに記されていた 
あなたの名前 ....
地下鉄のホームに 
吹き抜ける風の方に 
貼られたカラー写真の新聞から 
「オリンピックメダリスト・銀座でパレード」に 
押し寄せた人波の歓声が聴こえてきた 

夜明けと共に、眠い目をこす ....
人はそれぞれの会社と、契約する。 
もっと大事な、契約があるかもしれない。 

五感を越えた 
こころの{ルビ襞=ひだ}に沁み渡る 
天の声 

(あなたに託された夢を、吟味せよ――)  ....
いつか何処かで――  
あなたに逢った気がする 

あなたのお母さんと 
歌に生涯を捧げたあなたの思い出を 
初めて語り合った日の夜 

生前のあなたも来たという 
故郷・朝霞にある  ....
あなたの瞳に、僕が映る 
僕の瞳に、あなたが映る 

あなたの中に、僕はいる 
僕の中に、あなたはいる 

あなたの内に、天はあり 
僕の内に、天はあり 
天の内に、僕等はいる 

 ....
嫁さんと周に駅まで送ってもらい 
仙台行きの新幹線に乗る前 
待合室で一人になって、はじめて 
(今日で周は一歳か)という 
思いがじわり・・・と胸に広がった 

毎日嫁さんのやりくりで  ....
木々の葉が周囲に
ざわざわ鳴っている 
{ルビ藁葺=わらぶ}き屋根の山門が 
中天の日に照らされている 

あの門を{ルビ潜=くぐ}った向こうの 
石段を上ってゆけば 
一体何処へ導かれ ....
思いをこめた白球を、無心で投げる。 
霧の向こうから返ってくる白球を、両手で捕る。 
霧の幕が開いてゆく――空白の明日を見据え 
もう一度、白球をにぎる。 
服部 剛(1972)
タイトル カテゴリ Point 日付
あかね色の畑 自由詩312/12/13 17:55
からっぽの旅  自由詩712/12/5 0:13
風の息吹  自由詩212/12/4 23:58
日々の設問自由詩112/12/4 23:45
ひとの匂い 自由詩512/11/27 21:27
母の声自由詩612/11/27 7:05
清貧の絵 自由詩212/11/27 6:52
無題 自由詩312/11/23 20:23
花の声自由詩612/11/22 23:25
瞑想散歩 自由詩212/11/22 23:17
呼びかけ自由詩712/11/17 22:13
更地のひまわり 自由詩512/11/17 22:03
絵日記 自由詩512/11/16 20:04
夢の教室 自由詩512/11/16 19:55
夢のつづき 自由詩312/11/16 19:38
交差点にて 自由詩1212/11/9 23:23
祖母のにおい 自由詩112/11/9 23:06
家族 自由詩412/11/9 22:58
花の時間 自由詩212/10/24 23:59
匙の手 自由詩412/10/24 23:52
向こう側  自由詩212/10/24 23:45
ものの目 自由詩312/10/15 20:24
名前自由詩312/10/15 20:20
聖火 自由詩212/10/15 20:14
契約 自由詩512/10/8 23:55
盃の音ー蕎麦屋・吾平にてー 自由詩712/10/8 23:47
自由詩512/9/23 23:22
約束 自由詩612/9/23 23:14
山門 自由詩712/9/20 23:25
対話自由詩312/9/20 23:15

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