レコードジャケットの中で
ビルエヴァンスの黒い手が
握っている、白いボールの
{ルビ刳=く}り抜かれた内側に
真空のそらが、広がっている

もし、僕が大事なあなたに向けて
ボールを投げる ....
今から百四十億年、昔――
謎の巨大爆発があり
宇宙の闇は、生まれました。

科学のみでは計れない
(何者か)の意図による
ビッグ・バンの一撃は
この世の摂理に、重なります。

さぁ、 ....
√ Rute るーと

「 √を、開く 」

あなたの日々の門戸は、ぽっかり黒く
未知への通路を、開くでしょう――

(今日も天から、吹き渡る
 あなたへの  
 air mail ....
(南無アッバ)をひとすじに唱え
天寿を全うした井上洋治神父が
空へ吸いこまれ、風になった日

霊柩車を見送る
カテドラル教会の庭の木々の緑に
透きとおる一陣の風は吹き抜け――

アンジ ....
フォークで肉を、刺す。
スプーンで米を、掬う。

皿に盛られた
ガーリックステーキライスを
凡そ10分で、たいらげる。

皿の上に残された、尖ったフォークを
包むように重なる、楕円のス ....
遥かな空へ伸びてゆく
日々の素朴な道のりを
彼は探しに往くだろう――

変哲も無い石ころが
日に照らされて、反射する

あの{ルビ瞬間=とき}を  
頭に菊の飾りを、挿した
大正浪漫の着物美人は
ほんのりと笑みを浮かべ
白い両手に裏側のカードを3枚
つまんでこちらに、見せている。

(これはあなたの運命よ…
 さぁ、どれを引きましょう ....
片方の手を取って
九十歳のきくさんと
介護の青年は
デイサービスの廊下を
ゆっくり、歩く。

きくさんは、皺の寄った右の拳で
くしゃくしゃなちり紙を
握り締めている。  

「それ ....
熱燗の、おちょこの横の
受け皿に
五匹のししゃもが銀の腹を並べ
口を開いて、反っている

いつか何処かで観たような
あれはピカソの絵だったろうか?
絶望を突き抜けてしまった人が
空を仰 ....
ソチ・オリンピックのテレビ中継で
上村愛子選手の姿を見て
ぐ…っと来た、僕は
少々涙腺を緩ませながら
隣に座る、妻に云った。

「攻めに攻め、金にも勝る、滑りかな」

数日後、シスター ....
大雪の翌日

退院間近の幼い息子を迎えに行けるように
シャベルを握り、腰を据え、無心になって
門前に降りつもる雪の{ルビ塊=かたまり}を、掬って、投げた。

玄関から顔を出した、姉さん女房 ....
「詩」は「言葉の寺」と書くので
玄関の戸を開いた
小さい「口」に
一度、私は入ります――

ふたたび{ルビ娑婆=しゃば}に出る時は
世界の総てが
「言葉の寺」の中に在るような
新たな目 ....
ほんとうに「優」れているものは
「優」しさが、宿っています。
そうして「優」しい人というのは
どこか「憂」いている「人」です。

じぃ…と「優」を視ていると
(百の愛を身ごもる人)の、微笑 ....
御褒美の、早いひとがいる。
御褒美の、遅いひとがいる。

人生の開花予報はいつなのか?
そんなことは、知ったこっちゃあないのです。

(明日は明日の風が吹く)
と誰かさんが言ったっけ。
 ....
僕は一日、働いて
妻は入院中の周を日がな看病した後
落ちあった、ファミリーレストランの、夕の食卓。

「今日は俺が運転するから、たまには飲みなよ」
「え、ほんとう?」

つい先ほどまでは ....
ほんの{ルビ些細=ささい}な一言で
あなたの顔に、灯はともる。

ほん些細な気づきから
日々の場面に、光は射す。

今・今・今・今・今なのです――
禅体験は古都のお寺の
背後に広がる空 ....
一日の仕事を終えた、独りの夜。

組んだ両手を、一つに{ルビ統=す}べるように
閉じた瞳の前で、ぎゅう…とあわせる。

日々の仲間と横一線に、手をつなぎ
悩みという名の{ルビ靄=もや}さえ ....
幸福は、煙のようなもの
しゅるる…と宙に消えては
ほら
気づけばそこに、漂っている  
白隠禅師が、墨で描いた
手のひらの絵が
硝子ケースの外に立つ、僕に
語りかけた

(両手を打つと、音は鳴る
 片手で音は、どうすれば鳴る?)

姿の無い白隠禅師が問うので
硝子ケース ....
妻が一歳の周をつれて
立ち寄った鎌倉の教会に、入ると
お告げの鐘は、夕焼け空に響き渡り――
グレーのベールを被った修道女等は
晩の聖歌を歌い始める  

祭壇に姿を現したのは  
私達に ....
人は、日々の食事を摂っています。  
心には(言葉の食事)が必要です。

もし、あなたが
本屋の棚に並んだ背表紙へ
伸ばした手を、引き寄せられて
開いた本の活字等の
一文字ずつを、よく視 ....
3年前の3月11日にり・ぼーんした
横浜・野毛のジャズ喫茶・ちぐさにて
「詩とジャズの夜」というライブをやることにした。

店長の島さんを「マスター」と呼べば
「マスターは今もあの、おやじさ ....
母の胎に宿ったあの日から
天の両手につくられている
あなたは世界に一人の、彫刻です

遥かな空の青さの中に
薄っすら透けた天の両手は
黙った姿で、待っています――

いのちの全身を、震 ....
金色のジョッキの中で
無数の気泡が昇ってる
(この世の重力と、逆だねぇ…)

そう思いつつジョッキを片手に
金色の水をぐい、とひと飲みすれば
火照った頬はあたたかく――

日々の悩みも ....
時折、詩友達で集う
神楽坂のキイトスのドアを、開いた。
1年ぶりのマコト君が
カウンターで教えてくれた。  

「○○さんが沖縄から来て
 この近所で詩の展示をやってるよ」

   * ....
「果」という字をじぃ…っと見ていたら
「田」のマスに、よっつの実が浮かんできた
「木」の下には、見えない根が巡っていた

「果」という、くだものの木の姿を現す
ひとつの漢字の幹の中に
(天 ....
電気を節約するために
暖房のリモコンを
遠くに置いて
日がな布団に包まり
みの虫の姿で、本を読む。

外から帰り
しろい吐息をはく妻が
傍らに坐るので
火照った手を取り
少々疲れた ....
「軽くふれて下さい」という場所に
そっと手をあてると、自ずとドアは開いた。  

人の心も、軽くふれてみようと思う。  
10年前の僕よ、なんだか憂鬱そうに涙を
浮かべ、夕暮れのベンチに俯いて、一体ど
うしたんだい?君の目に、透明な僕の姿は
映らないだろうけど、心配だから様子を見
に来たんだ。やがて君の涙は(時の ....
切符があるから、電車に乗れた。
食券があるから、ラーメンを食べた。
パスポートがあるから、異国に行けた。

それならば
鏡に映る(わたくし)が
一体何者なのか?という
最も不思議な秘密に ....
服部 剛(2142)
タイトル カテゴリ Point 日付
LIVING TIME  自由詩114/3/29 23:29
ビッグ・バン自由詩4*14/3/22 21:16
自由詩414/3/22 21:02
風の祈り自由詩2*14/3/22 20:41
フォークとスプーン自由詩5+14/3/6 21:48
旅人自由詩214/3/2 23:03
浮世絵の女自由詩314/3/2 22:50
白いちり紙自由詩1014/2/27 23:30
ししゃも自由詩21*14/2/20 19:54
選手宣誓ー或るスキーヤーの涙ー自由詩6*14/2/20 19:34
詩人と雪掻き自由詩9*14/2/16 22:36
「詩」  自由詩3*14/2/16 22:19
「優」  自由詩9+*14/2/12 22:47
葡萄酒の晩餐自由詩7*14/2/10 22:24
歪んだコップ自由詩11*14/2/8 23:16
禅画について  自由詩3*14/2/8 23:01
手つなぎ鬼の夢自由詩014/2/8 22:48
幸福自由詩514/2/1 23:32
家族の手自由詩414/2/1 23:23
神のいたずら自由詩414/2/1 22:53
言葉の食事自由詩6+14/1/30 21:36
モ・ガンボセッションを、聴きながらーちぐさにてー  自由詩414/1/24 23:59
天ノ両手自由詩614/1/23 20:14
金色の水ージャズ喫茶・ちぐさにてー自由詩414/1/20 23:59
ギャラリーフラスコにてー詩友との再会ー  自由詩414/1/20 23:56
いのちの文字  自由詩6*14/1/16 18:01
掌の花自由詩6*14/1/16 17:42
自動ドア自由詩14*14/1/16 17:30
声援ーあの頃の僕にー  自由詩5*14/1/14 23:52
パスポート自由詩5*14/1/14 23:41

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