机上の聖書の上に置かれた 
ひとりの骸骨が 
遥かな明日の空を視て、笑ってる。 

骸骨は、恐いものと思っていたが 
全てがそうではないらしい 

どんな人もいつかきっと骨になり 
顔 ....
ふと手にした一枚の紙切れに 
優れた画家のデッサンが浮かぶように 
鏡は少女の清らかな 
一瞬の微笑を映すだろう 

ほのかな{ルビ灯=ともしび}のひかりの中に 
明け方の少女がひとり 
 ....
夫婦みたいに並んでいる 
ふたつの小島の周囲には 
ひかりの宝石を無数に散りばめた 
松島の海が穏やかに 
さらさら滑ってゆくのです 

先ほど赤い福浦橋の上から 
遠い空の下にいる嫁さ ....
松島の丸い湯ぶねに身を浮かべ 
きらりと笑う枯葉舟かな 

さやさやと幹に映る光と影は 
旅する我の{ルビ心鏡=しんきょう}となり 

歓びを{ルビ天=そら}いっぱいに広げてる 
白、白 ....
つらい出来事があった時 
詩は、きみのしょげた背中をそっと押すだろう  

現実の壁が立ちはだかる時 
詩は、きみの涙に濡れた瞳をまっすぐ前へ向けるだろう 

詩は、暗闇に射すひとすじの光 ....
昔々、虔十さんという風変わりな男は 
ぶなの木の葉がちらちら揺れて煌くほどに 
もう嬉しくてたまらなくなり 

一枚々々の葉のひかりが 
自らの体内に踊っているかのように 
いつのまに、ぶ ....
お玉杓子のような百舌達が 
雨上がりの空に 
ばらまかれては、舞い下りて 
すすき野原にすーっととまる 
静寂のひと時 

ばらばらだった者達は 
ひとつになり 

きらきら光るすす ....
お年寄りの入浴介助前に 
同僚のU君が着替えた後はいつも 
僕の下の引き出しが閉まらないまま 
脱いだ衣類が、もりあがっている 

引き出しを開けるたび 
骨が折れるが 
日頃の僕にも気 ....
今日という日を 
宇宙にひとりの自らでみたす迄 
私の体は幽霊です 

机の上に置かれたコップは 
水を入れるために、ある。 

窓から射す日に 
水面のひかる
あの瞬間を、待ちわび ....
桜のつぼみが口をひらいた3月27日は 
遠藤周作先生の誕生日で、奇遇にも   
結婚前の僕等が恋人になった日なので 
府中の遠藤先生のお墓参りに行った  
生後7ヶ月の周の、旅の始まり 

 ....
つまらぬことで口げんかをして 
下の階にいた嫁さん・子供を呼んできて 
布団の上に座らせて 
ごめん、ごめん、と育児にこった肩をゆっくり揉んだ 

布団の上にひとりあぐらをかいて腕を組む、午 ....
うつを抱えながら、日々がんばっている彼が 
汗だくで机をぴかぴかにした後 
休憩室で青い顔してのびていた 

あんまり一生懸命だったので 
(無理すんな)とは言えずにいたが 
ぐったりして ....
あぁ全てのひとは 
透きとほったぜんまいを背中に巻かれて 
晩夏に樹からぽてっと落ちる 
あの蝉に似ています 

(宇宙の銀河の果てから観れば 
 ひとの百年は一瞬です・・・) 

あ ....
床屋さんで伸びた髪を 
ぱさぱさ、切った 

エプロンの上に 
切り落とされる髪は 
いつのまにか 
白髪交じりになっていた 

青年と呼ばれた頃よりも 
白い髪が増えた分 
ここ ....
町の喧騒の外れで
川のほとりに佇み 
一台の車が、風を切って 
傍らの道を通り過ぎた 

ふと、耳にした水の音に 
下の方、下の方へと 
へりくだってゆく 
水のすがたを思う 

 ....
障子に無数の白い桜が舞っている 
流れてないのに流れてる 
風の姿であるように 

旅先の花巻の宿にて 
窓から射す日向には 
あの黒い帽子を被りうつむいて 
畑を歩く賢治さんの影絵が  ....
今迄きらいと思った人と 
互いの気持をぶつけた後で 
くるり、と心が回転して 

鳥の場所から眺めれば 
思いもよらぬ親しみが 
じゅわっと胸に湧いてくる 

その時ようやく私は
私 ....
僕の前に、一つの丸い窓がある。 

春の嵐にずぶ濡れて 
身を{ルビ撓=しな}らせながら、葉をきらめかせ 
必死の思いで立っている 
ひとりの木 

それは今夜も 
世界の何処かで{ル ....
変えよう、昨日まで濁っていた空気を 
変わろう、まあたらしい明日を演じる役者へ 

昔の僕は、めんどうくさいと思っていた 
今の僕は、仲間と一つになってゆこうと思う 

3・31という日付 ....
鞄から引っ張り出したノートの角が 
勢いあまって目に入り 
白目に赤い線がひとすじ入った 

思わず両手で片目を抑え 
あいたたたたた・・・とうずくまり 
まったくついてねぇや、と目医者に ....
秋の日の銀杏並木を歩き 
ふと、見上げた高い空 

背の高い銀杏の黄色に縁取られ 
ひとすじの空の道になっていた 

これから私が旅をする 
未知なる道も 
あの空のひとすじになろう  ....
画廊喫茶ラバン・アジルに 
人生の四季を旅してきた詩人は集い 
Jazzの流れる店内は 
セピア色の電球に照らされ 

白髪の詩人達は 
在りし日の詩人の魂と 
いくつもの思い出を語らい ....
誰かが自分に投げた棘を 
この両手でつつめるだろうか? 

私は弱いので 
すぐ相手に投げ返してしまう 

後から思えば 
それは些細なことであり 
体を少し斜めにすれば 
宙に消え ....
「働き」といえば 
重荷を負ってゆく坂道が視える 

「はたらき」といえば 
風になった自らが視える 

矛盾にみちた一日の 
狭間に開く  
一輪の花を揺らす 

あの風に 
 ....
五年程前に、上のの美術館で見た 
山下清の描く「地下鉄銀座線」   

暗い線路のトンネルに 
あたらしい昭和のライトを灯して 
完成したばかりのホームに 
ゆっくりと入ってきた 

 ....
そろそろ何でもない日常の革命を起こそうか 

お爺ちゃんやお婆ちゃん達の前で 
昨日都内の喫茶店で、偶然 
美川憲一さんに遭遇したという  
一期一会の詩を、朗読してみようか 

職場の ....
「何事も、前向きに考える」 

「ゆっくり、飲ませてくれ」 

「マイペースでいこうぜ」 

「ワイングラスになみなみ{ルビ注=つ}いだら、美味くない」 

「長く、死ぬまでのみてぇな ....
旅の時間に身を置くと 
宿で食べる朝食の 
目玉焼きの黄味や
納豆の一粒までも 
電球の日に照らされて
嬉しそうに皿に盛られているのです 

小皿には仲良く並んだらっきょうの間に 
も ....
年度末の会議の後 
僕は所長に 
新たな年の契約書を、手渡して 
旅の報告をした 

「 石巻の日和山から見渡す一面の荒地に 
  ひとり・・・ふたり・・・と 
  笑顔の花を咲かせたい ....
人生は素晴らしい―― 
という言葉はいらない 
洋鐙のらんぷの灯る名曲喫茶にて 
物語の「   」だけが、真実です。 
服部 剛(2142)
タイトル カテゴリ Point 日付
あかるい骸骨ーセザンヌ展にてー  自由詩812/5/23 19:24
ルノアールの少女 自由詩7*12/5/19 22:27
めおと島ー松島にてー 自由詩112/5/19 22:13
松島・石巻小品集ーおくのほそ道をゆくー 自由詩212/4/27 23:59
言葉の寺 自由詩112/4/27 23:58
虔十さん 自由詩512/4/21 23:59
山の笑い 自由詩312/4/19 23:59
まなざし 自由詩512/4/19 23:48
ひとの器 自由詩412/4/19 23:38
おさなごの夢ー遠藤先生の墓前にてー 自由詩4*12/4/18 22:32
川になる 自由詩312/4/18 21:59
ぴかぴかの机 自由詩2*12/4/17 23:57
夢の惑星 自由詩812/4/12 23:53
1ピース 自由詩312/4/12 23:17
春のうた自由詩412/4/11 23:43
賢治の影絵 自由詩3*12/4/11 23:36
みどりの切符 自由詩412/4/11 23:11
ひとりの木 自由詩512/4/9 22:22
空の銃声 自由詩2*12/4/9 20:44
詩人の目薬 自由詩612/4/5 23:40
自由詩112/4/5 23:15
長島三芳さんを偲ぶ ー画廊喫茶ラバン・アジルにてー 自由詩412/4/4 0:05
夕暮れの海 自由詩212/4/3 23:59
はたらき自由詩212/3/29 23:56
夢の電車 自由詩312/3/28 23:54
実験台で○○しよう 自由詩212/3/28 23:35
ある酒場でのおじさん達の会話 自由詩212/3/24 22:04
花巻の宿にて 自由詩8*12/3/24 21:53
約束 自由詩412/3/22 23:59
らんぷの灯 自由詩112/3/20 23:57

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