先輩の女性職員が 
傘も差さずに 
雨の中、楽しげな小走りで 
施設の入口に入っていった 

来春寿退社する先輩は 
そうして幸せの入口へ 
姿を消してゆくだろう 

僕がまだ2年目 ....
もし愛というものを 
真正面からみつめたら 
それは幻と消えるでしょう 

もし愛というものを 
少しずらしてみつめたら 
うっすらと立つ 
透明な詩人像は 
僕等の前に両手を広げるで ....
ごきげんよう、明けそめる世紀のあけぼのよ・・・! 
僕は恐れることなく、この歌を君に捧げよう 

{ルビ嘗=かつ}て古の国が再建されたあの日 
若者達が肩を並べて合唱した 
解放のう ....
ひとしずくの涙を 
顕微鏡で覗けば 
そこは内包された 
ひとつの宇宙であり 

やがて夜も更ける空に 
ひとつ、ふたつ・・・ 
星々は灯り始める 

あれはきっと   ....
恋も夢も 
日々の仕事も・・・ 
最後には 
「自分の生き様」 
だけが 

一冊の本の 
序章から終章を貫く
魂の矢となり 
ひとすじの軌跡を遺すだろう 

開いた頁の上にいつ ....
ふと立ち止まり 
足元の小石をみつめる 

ふりそそぐ 
日射しを仰いで立つ石は 
道の上に  
傾いた影を映して 
立っていた 

(私は一人じゃないかもしれぬ・・・) 

日 ....
只ひたすらに 
無心で歩いているうちに 
(私)は消えて 
道そのものになっていた 
生前の君と最後に語り合った 
このCafeに来るといつも 
テーブルに一つ  
硝子の灰皿を置いてもらう 

向かいの空席に 
ぼんやりと君の面影を浮かべ 
日頃誰にも言えない 
秘密 ....
観音さまは 
山に身を埋めて 
どんな時でも 
じっとしている 

人々の隠し持った 
哀しみを 
瞳を閉じて観るように 
じっとしている 

弱い私が 
揺らぐことの無いように ....
不思議な風を両手に集め 
無我夢中でかためたら 
いえすきりすとの顔になった 

深く澄んだ瞳を見たら 
じわりとした小波が 
心の{ルビ襞=ひだ}に広がった 
最近何故か 
夜の道で 
片目のライトで走る車を 
よく見かける 

日頃の僕が片目でしか見えてないのか 
最近出逢ったひとは片目の女なのか 
どちらの暗示にせよ 

人は誰もが両手 ....
上司の言葉に傷ついた先輩が 
辞表を出そうとしていたことを 
打ち明けられて 

床に広げた模造紙に 
クリスマスツリーの絵を描きながら僕が 
見上げた先輩の背後にぼんやり浮かぶ
十字架 ....
うむまあの木といふ
器量の悪い詩人みたいな木がある 

穴の開いた幹は 
{ルビ欠伸=あくび}をしている顔のようで 
暗闇の深遠に 
なにかを隠し持っている

うむまあといふ
 ....
手にした「水版画」という本を開き
(うた)という詩の行間で 
夕暮れのすすき野原に立つ彼 

今は亡き女の風の面影に 
いつまでも手をふり 

すすき等もまた 
金色の海の波間に 
 ....
天丼のどんぶりを空にした後 
海老の尻尾をふたつ 
ちり紙の上に並べたらじゃれあい  
嬉しそうに光った 
昨日の夕餉は 
友人夫婦と食卓を囲み 
玄米とおでんを食べました 

今日の夕餉は 
繁華街の店で独り 
天丼を食べました 

誰かと食べても 
独りで食べても 
幸福なのかもしれ ....
天性の間の悪さで 
お土産のケーキを買いそびれたまま 
友達の住む秩父まで着いてしまったので 
仲通り商店街をきょろきょろ 
見回しながら歩く 

古い売店の前に 
ぶら下がる 
1本 ....
先月開店したばかりの 
真新しいコンビニの店内に 
入るとばったり 
大きいふたつの瞳と 
目が合った 

「 おぉ 」 

小学校の同級生のともこちゃんは 
すっかりいいお母さんに ....
昨日もテレビの国会中継は 
党首が総理の粗を探して 
{ルビ脛=すね}を掴んでは 
「地位」という名の空席に 
よじ登ろうとしていた 

(その頃アメリカでは 
(史上初の黒人大統領の演 ....
思えば今迄数えきれぬほど 
脱いでは洗い 
洗っては干し 
畳んで仕舞う 
引き出しから取り出しては 
毎朝少々気分を変えて 
鏡の前で服を着る 

昇っては沈む 
太陽の数ほどに  ....
夕暮れの彼の部屋に
掛けられた一枚の絵  
額縁の下に書かれた題字は
「夜の酒場」 

カウンターに頬杖をつく 
{ルビ朧=おぼろ}な人々の面影は時折  
傾けた空のグラスの氷を鳴らす  ....
 今、僕の机の上には「ランボー詩集」(堀口大學訳)
と「地獄の季節」(小林秀雄訳)が置いてある。個人的
には小林秀雄訳が好きだが、作品によっては堀口大學訳
がいいと思う場合もある。同じ詩でも訳者 ....
都会のビルの幻影に 
透けて見えるは 
幾千の顔々埋まる 
墓地の群 

電信柱の頂に 
舞い降りた一羽の烏 

びゐ玉の
澄んだ瞳に映るは 

過ぎし日の
東京に燃え盛る 
 ....
散歩帰りに立ち止まり 
我が家のガレージに停まった 
親父の愛車を眺める 

右前部には2ヶ月前 
免許取り立てで 
調子にのって 
ガードレールに擦った傷 

もちろん反省したのだ ....
  群衆は「悪」を免れぬ、羊の群  
  国も、病院も、街も、荒んだ牧場・・・  

  その昔 
  人体実験の手術に 
  加われず執刀医の背後で 
  怯えたまま青白い顔で立ち尽くす ....
駅の構内で 
四つん這いの子供が 
夢の荷物を積んだミニチュアの
貨物列車を走らせ 

ぴょん 

と飛びついて捕まえる 

小さい掌から夢を放って 
自ら夢に腕を伸ばす 

 ....
「この病室は、眺めがいいねぇ・・・」 

ガラス越し
輝く太陽の下に広がる 
パノラマの海 

ベッドの上で点滴に繋がれて 
胸の痛みに悶えながら 
なんとか作り笑いをする祖母をよそに ....
PC画面の暗闇で 
林檎が独り 
浮かんでいる 

紅い皮の傷口から 
白い肌を晒しながら 

( 昔々、楽園にいた 
( アダムとイヴを誘惑した 
( 私は紅い林檎です  

 ....
送迎車で 
地域のお婆さんの家を訪ねたら 
陽だまりの窓辺で 
お婆さんは 
まだ寝ていました  

部屋の奥の遺影から 
若き日に世を去った夫が 
年老いた妻を今も見守っていました  ....
「 ありがとう 」 

声に出して 
君に伝わるのは 
たぶん言葉自体ではなく 

「 ありがとう 」 

の五文字の背後にあるものが 
僕の目から君の目に伝わり  
互いの笑顔が ....
服部 剛(2142)
タイトル カテゴリ Point 日付
幸せの入口 自由詩208/12/18 17:07
告白 自由詩108/12/18 16:50
Tonight 〜世界の何処にも無い詩の夜〜 自由詩008/12/15 21:45
涙ノ星自由詩408/12/15 21:20
余白ノ足跡 自由詩108/12/12 23:39
もう一人の私 自由詩008/12/12 23:27
自由詩1+08/12/12 23:03
硝子の灰皿 〜亡き友との対話〜 自由詩208/12/7 13:36
観音さま 自由詩308/12/6 18:25
風の人形自由詩008/12/4 21:44
(無題) 自由詩308/12/4 0:53
背後の声 自由詩108/12/4 0:45
うむまあの木 自由詩308/12/2 22:54
余白ノ顔 自由詩208/12/2 22:45
ふたり自由詩508/12/1 22:17
昨日の夕餉 自由詩4+08/12/1 22:01
ながもの 自由詩308/12/1 21:24
サンタクロースの白い袋 自由詩308/11/29 23:08
幻の旗 自由詩0+08/11/29 22:45
正午の太陽 〜ベランダの夢〜 自由詩308/11/27 18:49
酒場の警笛自由詩008/11/27 18:26
少年詩人と老いた戸棚の対話 〜ランボー詩集読書記〜 散文(批評 ...108/11/26 21:16
曙の昇る日 自由詩308/11/25 23:06
愛車の傷 自由詩008/11/23 17:29
( 病棟の屋上にて ) 自由詩208/11/23 17:16
樹木の人自由詩108/11/23 16:57
祖母の見舞い 自由詩508/11/18 18:34
林檎の転生 自由詩408/11/18 1:36
「 幸福駅 」 自由詩508/11/13 20:43
魔法の言葉 自由詩108/11/12 23:19

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