一日の仕事を終えた後 
同僚がデジタルカメラの中から出した 
小さいカードがないと言い 

皆でうろうろ 
あちらの引き出しを開き 
こちらの机の下を覗いた 

15分後、元気印のAさ ....
浜辺にて、両手で掬った 
無数の砂に 
たったふたつの光った粒は 
あなたと私 

無限に広がる宇宙の闇に 
ぽつん、と浮かんだ地球の中で 
たまたま出逢った 
あなたと私

た ....
なかなかはいはいが進まずに 
布団に顔を埋めた{ルビ周=しゅう}を 
仰向けにしてやったら 
全身を{ルビ真赤=まっか}にしてうああ、と泣いた 

周は、悔しがっているのだ。 
夢中で声援 ....
僕の背後にはいつも 
ひとつの透明なカメラが浮いている 

カメラを意識すると 
この胸の奥で燃え始める 
小さい太陽 

日々目の前に現れる一人ひとりと 
私がともに織り成す 
全 ....
国道1号線を渡る前 
信号待ちの車の窓から、遠のいてゆく 
最下位のランナーのもつれた足で走る後ろ姿に 
歩道から無数の旗をふる 
人々の声援が、彼の背中を押していた 

国道1号線を渡っ ....
人は皆いつか「自分」という
透けた衣服を、脱いでゆく 

その日まで誰もが人という 
何処かが欠けた、器です。  

(器にはゆるしという
 {ルビ一滴=いってき}の水が響く  ) 
 ....
愛する{ルビ女=ひと}と結ばれる前 
この手は一度、天にあずけた 

働く場所が決まる前 
この手は一度、天にあずけた 

これから家族3人で 
叶えるたった一つの夢の為に 
妻のぬく ....
お正月に風呂屋へ行き 
入口でもらったサービスの甘酒を手に 
目に入った「足湯」に 
ズボンをまくって、足を浸す 

紙コップから{ルビ一滴=いってき}の甘酒がこぼれ 
お湯が一瞬、白く濁 ....
一年の仕事を終えて 
家に帰った年の瀬の夜 

テレビで久しぶりに 
「ガソリン値下げ」のニュースを見て 
はじめて(嬉しい)と思う自分に少し驚く 

僕の顔に似た赤ちゃんを 
今夜も ....
何もない所に
一つのドアと
見知らぬ場所へ昇ってゆく
階段があった

昔見た夢で
ドアの向こうの階段に
どう抗っても行けない所で
ぱっと目が覚めたが

僕はこれまでの生の歩みで ....
職場で調子が出なかった日 
凹んだまま布団に包まり、さっさと寝た。 

目が覚めて、妻が見ていた 
朝のニュースは 
{ルビ白鳥=スワン}の舞を
世を去った母に捧げる浅田真央 

場内 ....
日常に潜む「?」という文字から 
背を向けてないか? 
逃げようとしていないか? 

いつからか、目の前に 
私と等身大の氷塊が、ある。 
足元に一本の斧が、置かれている。 

目を凝 ....
はぶさんは、いつも 
ぺっぺっと唾を吐く 
所構わずトイレになる 
介助しようと抱きかかえれば 
細い手足で、殴る、蹴る 

そんなはぶさんの細枝のような体が 
実は末期癌に蝕まれていな ....
ほんとうの深呼吸をしよう 
北国を旅した時に泊まった宿で 
火鉢の前で両手を暖めるひと時のように 

ほんとうの手紙を書こう 
血の通わない文字のメールを
百通送信、するよりも 
旅の便 ....
渋谷のライブハウスgeeーgeに入ると 
唄歌いの君は 
カウンターで手づくりのおでんを 
皿に盛り、お客さんに手渡していた 

若い歌姫が「涙そうそう」を歌い 
チャイナ服のバンドの「モ ....
妻の運転する車に乗り 
CDの再生ボタンを押す 

「状況はどうだい、居ない君に尋ねる」 

新たなる日々が、始まろうとしていた。 
3年前、自ら世を去った友を思い出していた。 

こ ....
上野の美術館内で 
ガラスの内側に坐る法然上人は 
時を越えて歩いて来た 
旅人の私を待っていた 

少し猫背に身を屈め 
指のすき間から数珠を垂らし 

700年前に描かれた 
色 ....
数珠を手に坐る 
法然と親鸞は 
21世紀の上野の美術館内に 
少し離れて向き合っていた 

親鸞像の瞳は、無言で 
(この数珠を見よ・・・)と呟き 
両手の間で輪になる数珠を見ているう ....
都会には「タテマエ」と書かれた 
大きい看板に、ひとりの顔が 
ニッコリ営業スマイルをする 

そんな看板の全てを引っ剥がした 
後に残る
(ほんとうの顔)と 
一度、ゆっくり話してみた ....
金曜の休みに出かけた日 
終電に近い電車で帰ったら 
くたびれ果てたいくつもの寝顔が 
ネクタイを緩めて、右に左に傾いていた 

サラリーマンの皆様の顔を見て 
(これがほんとの疲労だろう ....
数日前にすっと切った 
指の傷口を
ほうっておいたら 
裂けた肉と肉の間を 
細い血の糸が縫っていた 

心の傷もきっと 
体の傷とおんなじで 
あれこれ{ルビ穿=ほじく}ってしまうよ ....
今日、天は私に 
新たなる日々の舞台を与えた 

「12月から服部君がうちに来ます」 
会議で所長は皆に、言った 

「これからの現場をつくる1人になりたいです」 
密かな決意で、あいさ ....
嫁さんのお腹がふくらんだ頃に 
富山に嫁いだ姉から 
大きなダンボールに詰めこんだ 
育児セットが届いた 

やがて赤ちゃんが生まれてからの日々を 
哺乳瓶や抱っこひもが 
育児に追われ ....
生まれたばかりの娘が 
心臓を手術して 
暗闇に頭を抱える父がいる 

夫と別れた後 
アパート暮らしで 
幼い息子達を必死で育てる母がいる 

人はそれぞれ何気ない顔で 
日々を過 ....
神保町の古書店でみつけた 
亀井勝一郎の本を開く 

薄茶けた頁の紙を捲れば 
文中の「純粋」の粋のところに穴が開き 
前のページの「醜」という字が穴に重なり 
「純醜」という言葉になった ....
誰もが四つ葉のクローバーを、探している 

三つ葉のクローバーとは呼ばないが 
四つ葉のクローバーという名は、しっくりする 

三つ葉のクローバーは(ふつう)だが 
四つ葉のクローバーは奇 ....
世の人々が何処までも積み上げた 
バベルの塔が崩壊した後 
全てが消えた荒地の空に 
崩れることなく 
透き通ったまま立っている、風の塔 

全ての者が去った後 
たった独りで荒地に立ち ....
いま「時」は体を{ルビ傾=かし}げて、私にふれる 
あの不思議な金属音に 
私の感覚はふるえる、そして感じる 
私にはできると―― 

(それは遠いスクリーンに 
 映し出されている、まこ ....
生まれた時から 
小さい掌は、何も持っていなかった 

大人になるにつれて 
大きい掌は、様々なものを持つようになった 

やがて訪れる夜、掌は「闇」に覆われるだろう  

  * 
 ....
この手から放った 
いくつものテープを握りながら 
私を見送る人々が 
埠頭に小さくなってゆく 

船は往く、二度と戻れない国へ 

別れのテープは千切れても 
消えない人の契りを胸に ....
服部 剛(1977)
タイトル カテゴリ Point 日付
宝もの 自由詩1*12/1/13 23:59
夫婦の星 自由詩3*12/1/13 23:51
さけび 自由詩6*12/1/13 23:35
「 ON AIR 」自由詩2+*12/1/8 20:02
燃える人 〜箱根駅伝を見て〜 自由詩212/1/8 0:03
人の器 自由詩7+12/1/7 23:59
明日のドア 自由詩12*12/1/6 19:58
甘酒の味 自由詩8*12/1/6 0:07
家族の船 自由詩712/1/1 13:49
夢の階段 自由詩7*11/12/31 22:04
妻のひとこと 自由詩511/12/31 21:54
斧と氷塊 自由詩311/12/20 22:55
はぶさん 自由詩511/12/20 22:43
絵手紙のこころ 自由詩511/12/17 23:36
渋谷一軒屋の夜 自由詩311/12/17 22:57
船に乗る日 自由詩511/12/13 20:37
不思議な声ー法然と親鸞展にてー 自由詩511/12/12 22:51
縁の糸 ー法然と親鸞展にてー 自由詩211/12/12 22:21
酒をつぐ 自由詩311/12/10 23:45
東京動物園 自由詩411/12/10 23:28
自然治癒力 自由詩311/12/10 23:17
絵の世界へ 自由詩111/12/7 23:58
オルゴールの唄 自由詩411/12/7 23:51
涙の泉 自由詩311/12/7 23:36
窓 自由詩511/11/29 23:19
四つ葉のクローバー 自由詩411/11/29 23:06
風の塔 自由詩511/11/29 23:03
天のポスト 自由詩611/11/11 0:00
掌の器 自由詩211/11/10 23:59
出航 自由詩211/11/5 19:35

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