掌に乗る
生命の記憶の
なんと軽いこと
 

  父は帰ってこなかった
  後で知ることになるが
  街の花柳界で板前として働いていたようだ
  華やかなところだから飲む賭つ買う
  生活を送っていたらしい
  ぼくた ....
朝目を覚ましたら、隣で眠っているはずの妻が、蟹になっていた。
かさかさ、もぞもぞ。
全長40センチくらいはあるだろうと思われる蟹が、妻の枕のあたりでうごめいていた。
僕は驚いて体を起して、メガネ ....
蛾か何かの最後尾が
視界の斜め上をかすめ逃げ去る場面、に似た
或いは、目尻の痒みにも似た
地下鉄の、蛍光灯の、黄緑色の、光芒の
消える寸前の瞬間と消えた直後の瞬間、との
交互 ....
なんで 私が
あなたの詩が好きかっていうと
ソウルフル だからだよ

どんな アプローチでも 言葉も形
完璧じゃない

音や みてくれから くるものが
ほっとけない感じなんだ
 ....
空を

どこまでも飛んでみるということを
振り返った視線の、端のほうの夢の中
ほんの少しの香りで、漂っている

今、この辺りで



いつのまにか、梯子がなくなっている
あの木の ....
雨の日にてんとう虫を探すよりむづかしいこと考えていた


ゆれている壁の写真や金魚鉢自信を失くしたきみにゆれてる


驚いた山の紅葉へたくそなきみの手編みのマフラーそっくり


霧の ....
  

    優しい娘がいます
    方角を間違えて北口へ出てしまった杖を持ったばあさんを
    難解な通路を通って
    南口まで案内してやったのです
    そうっと肩口に手を ....
えんぴつ
ちいさく

そらで
むいた

くもりが
こぼれて

かさ
さし

あい
ふれよん

くるり

ぬらした
ぺーじに

きざまれる
じゅず
どこにでも
約束は無いとして
真夜中で
月の沈む場所
緩やかな寝息で
どこへ落ちていく私にも
約束できる
ものは無いとして


少し
はぐれる


月の端を狙撃して
落ち ....
つられた 無類の栞
かけられた 風の綱

そこから はなれなさい
かさばって 誰も
助けにはこないの

逃げる足音
深く さとす
色あせた カーテン

抜き打ちの 眩暈
 ....
空中に放り投げたる自転車の車輪の下の花びらが好き


背景として描かれる枯野にてかんざし拾うそれはゆうやけ


水没す古代遺跡の燭台にふたたび炎が灯る邂逅


風邪薬ばらまく園児裏山 ....
トップページを何気なしに見ていたら、「ランダム」というボタンを発見。
いつの間に出来たのか、全然知りませんでした。
ためしにぽちっとボタンを押してみると、全然読んだことのない作品が出るわ出るわ ....
遠くから はさみの鳴る音が聞こえる
それはとても正確で 狂いの無いリズムで
冬の雲を切りそろえ 月の出る準備を
飛び散った雲は星に変えよう

はさみの刻む音で 月がくる
光輪のファーを巻き ....
 
 冬には空が降下する
 みんな誰も見てないし
 奪えるものがあるなら
 私から奪って構わない


(雪霧の向こうに浮かぶ
 あれは管制塔の光源だ
 低い轟音を響かせて
 離陸す ....
娘が補助輪無しで
自転車に乗ることが出来るようになった
それは昨日のこと

最近左手がきかぬと
父がペットボトルの蓋を人に開けさせた
それは今朝のこと

僕は時のパズルと戯れながら ....
買ってくださいとうつむき加減に
冷えた指先は白い花を思わせた
不幸を売り物にできる時代じゃない
他をあたれよと背を向けたとき
飛ばされた風に散らばる花片
見開かれたままの瞳は残像をとらえ
 ....
モラ/モーラ/モラ
君の早鐘を
僕は拾い集める

モラ/モーラ/モラ
君は細くかなしい指先で
世界をつかんでゆく

モラ/モーラ/モラ
君の横は
ひどく白い
ひどく ひどく ひど ....
毎日まいにち
腕を鍛えあげることが大切だって
教わった
常に鍛錬を絶やさず
たくましい腕を持つことができたら
不自由なく生きていけるそうだ
学校は毎日まいにち
腕を鍛える授業ばかりで ....
じーちゃんは 耳が遠い
ばーちゃんは 歯がなくて発音が悪い

二人の会話は
何度も聞き直し
何度も言い直し
互いの顔を
くっつけるように近づいて
可愛らしくて
仲がいい

ばーち ....
「少女の名前」

ちょんちょんと
ケンケンを
庭石でしている
突然かがみこむと
名も知らぬ花に
手を伸ばす
摘みゆかれる花
かわいそうなお花さん
お花はきっと痛いから
摘まないよ ....
右手を軽く握って手首を曲げます
そしてそのまま右耳のそばへ

もしできるなら
左足で首のつけねを掻いてみましょう
気持ちいいです

陽だまりでぐてーっとなって
幸せそうな表情を浮かべま ....
窓辺のてーぶる
並んだふたつの影を朝日に落とす
じゃがいも・いちご
似ても似つかぬ後姿の影を背に
似た たましいの まなざしそろえ
窓の外に光のたまる
明るいほうへ   *

 

 ....
この住宅地は
どこか変なんです
川っぷちにあって
どぶ臭いなんてことは問題じゃありません
臭いのならむしろ
どこからともなく漂う
昔の横須賀線の臭いの方が
ずっと気になります
日当たり ....
ワン!
と唐突に始まる詩
を数編書き
少女はそれから二度と詩を書こうとはしなかった
ターコイズ、ターコイズ、ターコイズ・マーチ
ターコイズ・マーチ
先生!山下君のターコイズ・マーチ ....
指先でつまんで
そのあとどうするの?

まさか捨てたりしないよね

脇役は最後まで残っても
結局脇役で
だけどその場面を彩るのには必要なんだ

パセリ
緑色のアクセント

僕が ....
   喜びは天まで昇り
   はじけて消えた

   哀しみは砂漠の水を
   補給できずに

   怒りは津波を起こし
   人身家屋をうばった

   楽しみはいま文字がつづれる ....
荒れるといった 天候はやはり
買い物に行こうと 車だしたら
あたった

ふきさらしの 水田に積まれた雪は
風にたたかれて 横に 流れる

降る雪と 流れる雪で
前も 後ろ も見 ....
そうして
僕らのこれまでの順路を
紙の上に書き出してみる
その上に雲なんか浮かべたりして
無駄に力を入れて笑ってみたり




過ぎ去ったあとで
自然に昔話ができれば
それはそれ ....
 偏頭痛の片隅で
 子供が
 膝を抱えている

 いつかの子供

 立ち上がってもらわないと
 そこは
 一番痛みがひどい

 僕は手を伸ばす

 知ら ....
千月 話子さんのおすすめリスト(2082)
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