あまり過保護になっては
ひとり立ちできないなどと
父母が 孫の話をする
だんだん 友人との付き合いが
目の届かないところまでいき
不安そうだが
あまり しばりつけても
本人のためにな ....
よく晴れた日
ハンガーに吊るして
自分を干してみる
きっと人はこのように
優しく干からびていくのだろう
水分も記憶も失いながら
+
鏡に向かって
笑う
そんな嘘
ばかり ....
改札口にて
お待ち申し上げております
行き先を
詮索したりはいたしません
どうぞ
ご安心を
あなたがここを
通過してゆく事実のみ
確かめさせて頂きたいのです ....
眠りは当局から支給される
月にいちど注文をすることになっている
私は主に スタンダードな「白の眠り」を注文する
けれどいつもおなじ眠りというのも
あじけない気がするので
やはりスタンダードな ....
街のすみの
白い白い花を
夜へと向かう暗がりのなか
したたる滴を追うように見つめる
からだが少しずつ咲いてゆく夜
時間と穴と痛みたちの夜
すべての窓と見つめあいなが ....
ひ ゆるめば
あかされぬ 水平線 の
語り 眠らせる 睡蓮
トレモロ
頬 寄せれば
いななく しらかぜ の
うちつける 火 の 扉
飛沫 で 消して
そこ ....
人の嘘で
鳥は空を飛ぶ
鳥の嘘で
ドアは人を
閉じ込める
ドアの中で
人は鳥を
飛ばし続ける
+
いつも
三人なのに
いつも
八等分
してしまう
+
....
もう一度、始まるのです
そう言って眠り落ちる人
危なくはないですか
休みたくは、ないですか
瞼の裏側の静かな暗闇で
一人で旅に出るそうです
朝までには戻るから、と
その人は
積 ....
玄関の隅に
白い蝶が 逝っている
ちりとりに さらい
外へ
いつもと 変わらぬ
朝が はじまる
仏前へ 供えるご飯
今日一日の無事を祈り
自分も 食して
....
窓越しのアルデバラン
暖炉が背中でうたうなら
ベテルギウスは指輪にかわる
ポタージュの香り満ちる星座紀行は
甘くも、はかない
やがて旅人は
アンドロメダへの郷愁にかられ ....
わたしの血は
青く青く沸騰し
ゆらめきながら立ちのぼり
はてしなく透きとおった
青をふらせた
しなだれた渇望のからだは
ゆく先のしれないおもいと
めまいの予感を内包していた
いよい ....
触れ合うためにあるものを
手、と呼ぶのなら
私はいらない
私には
ない
たそがれは穏やかに
その時を待つ
眠れない暗闇と静寂は
心を熟すのではなく
怯えさせるのでもなく
た ....
窓を閉め忘れ
緑のにおいに
眠れずにいる
空腹の夜
ひとかけらずつ
崩れる街を登りつづけ
眠れずにいる
空腹の夜
触れることさえないままに
気づいたときに ....
あなたの方で風が吹いている
わたしはわたしで知らないことばかり捜している
秋がそこらじゅうで溶けはじめるとき
空き瓶には夕くれが満たされるとき
幾つもの詩を繋げるようにして
わたしはあな ....
こころの機微をおひとつ、どうぞ
かわりに今後もよろしく、どうぞ
わたしの背後のあれこれの
言い尽くせないあれこれの
混じり気のない よろず味
恥ずかしながら
....
中国に住む僕のおじいちゃんは
ボロボロだけどしっかりとした舟を漕いで
川を下るのが仕事です。
さすがに漕ぐのがすごく上手で
コースどりも強かで
僕も一度乗せてもらった ....
兄、あるいは姉と呼ぶべき
生まれなかった命にむけて
もしかしたらこの時代は
貴方たちの手で変えられたかもしれないと
そんな期待を寄せるわたしは
我が侭だとわかっています
....
タクシー未満の部屋を
間借りすると
運転手がいません
タクシー未満の部屋なので
運転手未満の僕がいます
それから線路のように
どこまでも間延びした
顔の恋人
そのために僕は ....
あなたはよく熱を出して
自分できづかないでいるので
いつも僕は
こっそりとあなたのひたいをひやす
あなたがきづかないままで
また
まっしろな
あのベランダに 立てるように
....
風のかたちになりたいのです
なのに
縫いつけておいたはずの秋風が
かたちをうばいました
(ほたる 湯けむり はぐれ雲)
うばわれたと思ったのは勘違いでした
かたちがない ....
ついっと 顔をあげ
仰ぎみている
病室の 窓は薄暗く
パジャマ姿の そのひとは
ベットを 脱け出し 立ち あがって いた
「いまねえ そらを かこうと おもって」
少しとまどい ....
ぷぷちゃんのつぶらな瞳が
踊るように歩く
青の裾野を
静けさを流しながら
口笛を吹きながら
踊るように歩く
いがらっぽい重みに耐え忍び
針と糸で生活を縫う
母
この家は。
....
私の大好きな二人が
木蓮の詩を書いていたので
私も書こうと思って
毎日 家にある木蓮を見に行った
山の日陰にある木蓮は
つぼみはつけても
なかなか咲かず
そこだけいつまでも
く ....
海辺に
打ち捨てられた羽衣
水底に たぐりとられ
心 なくすばかりの 果て
指が 訪れる
風に 似た とろむ甘さで
ふれる やさしく
どうして そんなこと してくれるの
どうし ....
少しだけ、冷たい風が吹いてきたのは
とても遠い場所からだった
人はいなくなる、ということが出来るらしい
世界はいつも通りに明るくて
僕らは同じように電車に乗り込む
乗り継ぎ駅で世界が追い ....
萎れてゆく花ではなく
1.「ゆびぬき」
でんとうの 咲いてゆく中で
ちくりと刺さるところを
そっとつつんで
もう無い
てのひらの形を
朝 ....
空を泳ぐ鳥たちでさえ
死はいつも地上のある
明るすぎる地下に雨は降らない
きのうの洗濯物を今日の朝日に干す
明日は雨らしい
シャツには見覚えのない涙の跡がついている
毎日クスリを飲 ....
夕飯を食べたあと
タバコを吸っていると
ささと風がふいた
まぼろしにささやきかけたように
近くでおんながくしゃみした
僕の物思いの雨の中を
通りすぎた
あれら透明な命はなんだった ....
あなたを 美しいと 思った 秋の日
秋の日
あなたは ものごとを わたしの肉に
染み込ますように わたしを 叱るのでした
わたしは 朝露を 飲むように
あなたを 識る
遠くに 近く ....
赤錆の目立つ時刻表のバス停に立ち
来るか来ないかの
微妙な時刻にバスを待ってみた
進路の前にバスは無い
順路の後ろに気配も無い
行く先も馴染みの無い駅の
名前の書かれた ....
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