ぼくは病院を経営していた叔父叔母に育てられました
ぼくの部屋は病室でした
かたくて高いベッドと狭い机しかなかったけれどなんの不自由もありませんでした
妹の部屋は病院の最上階、叔父叔母の居住するフ ....
ここが気持ちの良い伸びやかな場所だということが
霊能のないぼくにもよくわかる
水のふくよかさが光に自由だ
土や風はじっとりとあえなく色彩へとかわり
そして私は鼻腔から生まれかわる
この地で生を受け ....
{引用=最後に}
本当は星なんて見えていなかった
ただ、そう思うことで
楽しんでいたかったんだ
そう
どんなに空虚な嘘でも
信じることでそれが扉になった
でも開くには ....
あー遅刻しちゃう
パンをかじって
牛乳飲んで
ネクタイして
そしてボールペンを
持っていた。
急いでコピーをして
お茶を飲んで
いつの間にかに
ゆとりを忘れて
いつも時間と ....
さまざまなことが一度に起きるこの一つの点は世界と呼ばれる
お元気?と聞き覚えない声がする電話の向こう詐欺師の匂い
何歳になろうと夢は美しいあの世この世の間で揺れる
台風が接近中と告げる声眺める空に恋文飛ばす
退屈な授業に背中向けたまま遥か彼 ....
ひとつの幽霊となって
ある日の透明をかえりみる
止まない雨に
裂けない雲に
青空の贖罪を聞く
糸を編む蚕の
たゆまない運動の
底の磨り減った靴の
歩いてきた時間を告げる
再会 ....
「空色のワゴンに乗ろう、あぜ道の綿毛を雲に届けるために」
人形の折れた手首を持ったまま母の帰りを一人待ってた
説明しようとして絶命してしまった僕のレジュメが空へと
深夜、ヒツジが僕を数えている、可愛そうにまだ眠れないのだ
....
今日は、みなさんに。
ありがとう。
いつも、私の詩をよんでくれて、
ありがとう。
コメントも、たくさんもらって、
ありがとう。
口下手な、わたしです ....
ヴァージンロードを歩きたい
――ある難病の女性の話から
歩いてみたい
この道を
車椅子から立ち上がって
遠い道
遥か彼方にあなたがいて
本当は ....
貝の中で眠る
エナメルに身を添わせ
なめらかな肌に
潮騒を聴きながら
貝の中で歌う
孤独とは空間原理
反響して丸く閉じていく
原初細胞の相似形
世界の外では日が昇り
また太陽 ....
いっこの点
ぐいるぐいる
切断面
にぃぃつやと
喉仏を動かして
ありったけを
跨ぐ
道と道が交差する
信号機は
滑舌よく
大人たちは
お囃子に合わせて
黒い眼を回しだす
....
おじいちゃんが
おおきくなったなぁ、と
わたしとせいくらべした
ぬかされちゃったな
と、あたまをかいてわらう
おじいちゃんに
まだちょっと、おじいちゃんのほ ....
春の雨 寂れたビルの 屋上P 車を停めて シート倒した
さざなみがさらっていった
いつしか悲しみが
すべすべとした滑らかなものに
変わっていくように
すこし冷たい雨が研いでいった
行き先を見失うときはいつでも
はじめに心をひらいた場 ....
階段は途中で空につながる
これ以上は歩けないかな、と思って
これ以上は歩けないかも、と思った
風がとても心地よい季節のことを
寂しさを微塵も感じないで過ごした
短い時間のことを振り返 ....
女の腹が真珠(たま)孕み 男の腹に指が這ふ
愛ほしいひと、今宵貴方を離さない
貴方をわたしに誘ひたい
迸る極楽浄土を黄金で編んだ煉獄に
火と蛇で撚つた鎖で繋ぎたい
男の胸に日が昇り 女の ....
すこやかな寝息としろくなめらかな腕 みだれうつぼくの欲求
水を抱くように おもいだしている 髪の毛 指先 かさなるため息
{引用=
「まっ黒な」セーラー脱いでメイクしたピアスもあけた(東京)へ行く
春の風強すぎるけどもう飛ぶの夢の翼が消えないうちに
伸びた髪亡き私への手向けです「来た・見た・ ....
疲れた身体を脱いで
立ち上がれたら
なんて楽だろうと思う
始まったばかりの朝は
あっという間に夜になる
何をしたのか数えていると
堕ちて行くように目が閉じる
明るい朝が来ます ....
見つめ合う 二人同時のタイミング クスリと笑う 愛しいえくぼ
チョコレートを頬張って
寝る前の歯磨きをさぼったら
真夜中に
頭がうなり始めた
甘い甘いチョコレートの逆襲だ
虐げられたカカオ豆農奴の
怨念だ
うなる頭を抱えながら
積み重ねた ....
ここは 来たこともない街角
さもなければ
山色の険しいけもの道
道標もない白い雪原
あたしは一人ぽつねんと 立っている
足あとさえもなくして
道に迷ったのです
どうして ....
ざわざわしている森の中で
私の命だけが静かでいる必要はないのだ
煌いている光の中で
緑にも影がある 川の光も影を持つ
入ってみない?
なんて聞く前に足を踏み入れてもいいのだ
川には ....
左折レーンにいた
交差点にしゃがみ込む人たちを見た
赤い小さな水たまりを見た
音声を風が運んだ
がんばって…
がんばって…
助手席の彼女が見たもの
人の言葉を持たない小さな生命が
消え ....
カタログを開けば色の洪水であたしは靴の箱舟に乗る
花と線香と手桶を持って
目印に辿り着き
うろ覚えの作法で
てのひらを合わせながら
ついでに
貴方達のことを少し想った
そうだよ
罰当たりな僕は相変わらず
此岸のモラトリアムを
見苦しく這いずり回 ....
台所に転がっていた
折りに入っていた桜餅は
ちんまり小さくて
一口でも食べ切りそうだ
桜色が濃すぎて
鮮やかでキッチュで
どう見ても体に悪そう
だから少しニヤけながら食べよう
....
少年は向かい風に負けず
自転車を漕ぐ
徒労とは思わず
ひたすら前に進む
そんな彼も吐くことを覚えた
空腹に身をよじりながら耐え
むさぼった
それでも痩せほそる身体を
重く感じながら ....
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