この町の夜は静かなもので
特に冬の夜は衝動に駆られて
大きな音を立てて改造車で走る
少年少女もいない
その代わり目には見えない何かが
充満していて、それに触れられると
その部分だけ鳥肌が立 ....
大根の葉っぱにくっついていた
かたつむりが
ひこうきぐもは
そらをきる
わたしはてらてら
ちじょうをぬう
さいほうばこを
もってこい
よいしょよいしょと
ぬってやる
ひこうきぐも ....
僕と君とが引かれあった
その引力は
桜散るほどのちからで
電車の踏み切りで
隔てられた思いは
初恋の思い出
春の訪れを教えてくれた
ひとひらの桜の花びらを
失くしてしまわないよ ....
「みなさんに明日が来ることは奇跡です。それを知っているだけで、日常は幸せなことだらけで溢れています。」
これは「余命1か月の花嫁」のドキュメンタリーの中で出てきた言葉だ。
この言 ....
小学三年までと二十代後半を東京で暮らした
いまも出張で月にいちどは東京にゆく
きょうは機械の立ち合いで東京だった
加工テストが順調だったので
そこの社長に言ってちょっと散歩に出る
狭い道に風 ....
宙から糸を引くように
いくつもの魂が
みちびかれてゆき
草むらのコオロギもまた
静かに時を止めた
ゆっくりと過ぎてゆく僕の時間も
に包まれて
黄金の金糸に引かれてゆく
冷え ....
あたふたと駆け寄りきつく抱きつく
君の骨の重さ確かめるために強く
そして呼吸する間を惜しんで
キスをしてそれがいつまでも続く
金縛りにあったように体が収斂して
こうしていることが日常だと ....
エスペランサ、希望という名の覆輪のピンクの薔薇は超巨大輪
新顔の虫ミニバラを食害中。今度のやつはちょっと嫌いだ。
颯と薫る風を前にして満開はまだといわれても引き返せるか
天高く薔薇肥 ....
くるくるくるりと
来ぬ人の心
ころころころりと
待ち焦がれ剥き剥き
彼恋焦がれ桂剥き
料理利用して篭絡しよう
そうしようそうよ
そうしそうよ
つつつつポとガスの火をつけて
お ....
君の素肌に触れた日は
忘れもしない
君が十九の秋でした。
僕の心は君だけを
思い焦がれて
千々となり
集めて鈍く燃えたのです。
誰にも言わず
誰にも知れず
躊躇する手を最初 ....
明け方にこころ ざわつく
人の死があったのだと
匂いで分かる
電話が鳴るずっと前に
昼過ぎに喪服を取り出す
やりかけの仕事を放り出し
昔その方からいただいた
手紙を探してみる
....
小舟を浮かべて 新しい世界を求めて
僕は旅に出ようと思います ひとりで
生きていく才能のない僕は
誰かが傍らにいてくれないと
ウサギのように震えて死んでしまいそうです
それでもひとり ....
僕に裁ける空はない
僕に裁ける光はない
僕に裁ける風はない
僕に裁ける悲しみや
僕に裁ける幸福など
そんなものないのだ
空も光も
風も悲しみも幸福も
....
気付かない振りしてるだけで
わたし、とっくに気付いているんだ
夕食後の洗い物とかしている最中
わたしのバッグのなかを探っているのを
縁起良いからと買い求めたガマグチから小銭抜いたでしょ ....
「またね、今日はホントにありがとう」と言ってわかれました
最後は握手で
あのとき抱き締めてたらどうだったかな
違っていたのかな
手を伸ばせば良かった
ぎゅっとすれば良 ....
昨日と
同じ景色に
乾いた風が
吹き抜けて行った
昨日と同じ
景色の中で
わたしは
昨日と同じでは
いられない
天気の良い
朝方だったかしら
母が
庭の小さな一角に
ありがとうの種を
植えたのを見た
それから
気になってはこっそり
母を
見ていた
芽が出て
茎が伸びて
母の背丈を ....
いきているのか
しんでいるのか
わからないまま
湖水の上を歩く
光はもう見えず
声ももう聴かぬ
私の肌を通して
水面に気泡立つ
温度は寂しさで
あなたは弱くて
困った人だけ ....
踏切
仮に待たされたと考えて
横切っていく貨物列車の裏側には
「さよなら」さえも存在しない
元々は一方的に出来合いとして扱われていたのだから
どこにも間違いはないと言えるのだが ....
ベッドに横たわり
窓から入ってくる光は
いつも白い
思い出しては悔やむばかりで
明日を思い描く 明日は
死への怖ればかり
私は年老いた
若い頃から想像し
脅えていた まさにその ....
私はなぜ生まれたのだろう
誕生してほしかったのは
確かに母の願いだが
生まれ出でたのは私の意志なのだろうか
あれから何度考えても答えがでないのだ
悲しいとおもうたび
苦しいとおもうたび ....
十月さいごの日だまりが
ぼくらに光を継いでゆく
風のしたで悲しみをかまえ
いちばん好きな他人を失う
恋人の不実をまえにして
ぼくは悪くなかったのか
神様、怒って ....
残り少ない飴を手に取り
それを口の中に運んだ
昔々の魔法が使えた頃の日々は
それはそれは楽しそうだな
軽快なケルト音楽に合わせて
何処までも蒼い草原を杖片手に歩いた
....
太陽がサンサンと
ふりそそぎ
雲一つない
オレンジの匂い
太鼓の音
シーツの波
犬の散歩
麦の穂
笑顔の君
ひざまくら
ピアノの音
全てが平和だ。
夕暮れが
あまりに悲し過ぎたので
もう 伸びない
と言って
影は離れて行った
柿の種とピーナッツが奏でるハーモニーは
僕らの心を捉えていつまでも放さない
こんな絶妙なバランスを保ちながら
僕と君が一緒に暮らしていけるのなら
時折感じるピリッとした辛さも
....
窓辺にうつる
あたしの頬が
便箋に文字をしたためる
不惑は遅くて
別々のよるが
哀しみをガラスで仕切る
こんどの夢は
ながすぎたメルヘン
こんどの愛 ....
四次元ハーモニクスは
夜の公園に不気味に響く
欠片を拾うことを
罪へのお返しだと思い
喜んで組み立てていた
見えない所では
僕が思う人は今日も
ネオン街へ知ら ....
ふと君と出会ったので
なにを思ったのか
結婚する気になってしまい
程なくして言葉に出してしまい
ふと言葉に出してしまったため
なにを思ったのか
結婚することが現実的に思え
程なくして ....
君の唇の くれない が
僕の内側を伝い落ちると
日常が育んだなけなしの植物群は
夢見るように朽ちていった
君の爪の くれない が
僕の外側を掻きむしると
日常に着せたつきなみな制服 ....
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