すべてのおすすめ
コウノトリ卵か赤子かキャベツの畑シチューのニンジン余所の星から
カタカナのルビはいやだよひらがなでぼくたち鴉を読めない子には
かあさんはカケスだったといま知った道行くヒトがそう云っ ....
その落葉樹は絃となる葉をすべて失っていたが、月の明るいこの夜また、訪問者を得ることができた。
「もう、歌わせてあげられないのに」
いつものその風に、いつものように詫びてみる。
「通り道なんで ....
そのまなざしは父親には赦された
母親は女の子だったから赦せなかった
のだろう(自らへの)失意と憤り
* * *
旅立ちたかったのは
なみだの源泉へだった
そこが故郷なのだと覚え
....
ミモザの美しいころに
父さんと手を繋いで
理由もしらず
バス停まで歩いたことは
憶えているわけもない
わたしは二歳
父さんの掌はきっと
わたしのちいさな手に
この世でほかにはみ ....
お父さんは素敵な人で
わたしはおかしな人で
お父さんには常識があって
わたしにはそれがまるでなくて
常識が非常識を命がけで守備してた
非常識はそれを空気だと勘違い
空気は人力の愛と汗と ....
どんなにかあたためても
言葉は言葉でしかない
たまごとは違う
なにも孵らないよ
書ける人ならペンと紙とを
書けない私はワードを使って
きょうもいまもあたためながら
ほんとに求めるもの ....
ごめんね神さま
いますぐにゆるす、がほしい
この{ルビ心音=こころね}の証しに
樹海に奔って自爆したい!
リハビリをさぼり始めて
二十日ほど過ぎた
理由はある
誰にも云わない
誰も聞かないし
知りたくもないだろうし
わたしが彼の世に持ってゆく
ダイヤモンドを鏤めたマグカップに注いで
表参道で下車し
迷わず骨董通り界隈の路地裏に滑り込む
ことのできる哀しみを
誰かうたったことがあっただろうか
{ルビ時間=とき}の迷子たちがいつも
喪服を選び歩く路
解放的なカフェには ....
善いですね、花は
いつみても善いですね
たぶん神さまです
たぶんなんでもゆるします
きょうは特に会いたかったです
路傍の石っころは
決して言葉を使いません
でも 言葉を持っています
....
騙されたってかまわない
優しいことばが好きだから
信じたふりも上手だし
信じたいうそがいまほしい
騙したってかまわない
優しいことばに限っては
信じたふりなら大丈夫
だけど約束してほ ....
フラスコの底に立ってる私
ここから覗く世界が限りなく
どこも邪魔や目隠しのされてない
限りなく 世界そのもの であってほしい
なぜって 曇るばかりのこのガラスのこちらから
背伸びしても屈 ....
道化師はあした泣く
毎あした 毎あした 泣いてる
膝を抱えて蹲ってあたしの心で場所とって
いつまでも消えてなくならないその
道化師と云えば女の子
かと思えばきょうは老婆
あさってはきっ ....
{引用=さびしさで明けた一日は
かなしく暮れゆきまた終わる
遠くのどこにも里はなし
近くのどこにも愛はなし
かなしみで終えた一日は
知られぬなみだで幕となる
みあげるどこにも星はなし
....
よくわかってたよね
(わかってなかった)
とてもよくわかってたよね
(まったくわかってなんていなかった)
かなしみの通り道
さびしさの通り道
孤独街道への標識
独りへまっしぐら
....
雨の今朝 町を歩く
レインコート、長靴そして傘
二十分ほど
鴉すらいないがさびしくもない
二時間ほど経っていま
ふと私はなにを思っていたのかと
歩きながら 私はなにを
と、とぼけてみ ....
変わらないものなんてないのだけど
変われないものもある
わたしのなみだの理由はずいぶん変わって
そしてだけど相変わらずだ とか
わたしの住む 世界 はずいぶん変わって
そしてだけど相変わ ....
猫のうたをたくさん描いた日日
束の間のしあわせと平和をしる
それをしるすよろこびが 実は
のちに癒せない痛みとなっても
そのことである
そのことである
そのことである
猫はもういない ....
猫の死を看取って
父の死を看取らなかった
看取れなかった
間に合わなかった
タクシーがいけない
わけじゃないたまたま
道路が
父さんの死は私の最初の死、で
その後に仰天の連続たとえ ....
九年前に書いた詩には
そういえばカナリアのこと
雀のことそしてなにより
鴉をあえて黒い鳥として好んで描いた
詩作の真似事始め
弱いものや厭われるものを
徹底的に痛めつけて そして
そ ....
もう一度夕空と雁行が見たい
それだ わたしの望みと言えば
もう二度と命を捨てようとしない
それだ あの少女との約束と言えば
いま迷っているのは この長すぎる髪を
切ってもよいものかという ....
あの{ルビ娘=こ}は女の子 なのに
選べなかった積み木で建てた家には
花を飾る場所がない
わたしが贈りたいのは
やわらかな色のラナンキュラスの束なのに
どうしたらいいのかわからない
だ ....
西の海に陽の帰ってゆく情景を
一度もみたことがない
焦がれながらまた
首都高に落ちてゆく今日をあきらめている
父さんが大好きだということ
会いたくてたまらないのに、ということ
その父さ ....
もしもたとえば恋の詩を
どこかで発表したならば
こんなに狭いそのどこか
きっと思惑され放題かと
匿名希望のそれ以前とは
全く私の居る場所なのに
なにゆえひろびろ考えて
自分の知るあて ....
心音を確かめにゆく明日まで今夜の夢で胎児になって
椪柑の味の香りの優しさはいつか会いたい母に重なる
この冬は椪柑知らずに過ぎ去って如月終わる春の雨音
季の絵の具ほどくあしたに約束の白い花描く春と名づける
春始発父さんと猫と私の分切符もとめて銀河も超えて
父さんのお骨どこ ....
吐き気を呼ぶバロックが
鍵盤に叩きつけられている
CDジャケットを見ればピアニスト
理由に気づき 音を消した
やすらぐためにそつなく選んだつもりだった
その曲がその曲のせいではなく
弾 ....
かつてきんいろの風渡る風景を持っていた胸には
いま寂寞としたはいいろのさびしさのみ置かれ
泉のなく息吹のなく色彩もない体温のない
さびしさのみ置かれ
帰りたいのに果たしてふるさとがない私、 ....
母を知らない子になって
母に焦がれてみたかった
いくど夢みたことだろう
母を知らない子になって
父しかいない子になって
母に焦がれてみたかった
いくど願ったことだろう
父しかいない子 ....
真実の朝に快晴である
真実の陽光は
残酷である
真実の
何もかもが
なにもかもが
まぶしい
とてもまぶしい
ほがらかに女のそれは
嘲笑ほかならぬ産道のぬめりが謳う
生まれよ ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35