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住む場所の変わりて水は甘くなりわれ懐かしむ塩素の匂い
きょうからは花野綴じられ立冬の訪れしこと足から沁みる
旅立った秋を追うことゆるされずこの世の生の切なさ想う
みあげれ ....
{ルビ夕星=ゆうずつ}の夕より深い夕が来て十一月の宙の産声
箱舟の群れが港を離れゆく未明という名の{ルビ時間=とき}の幕間
金と銀そしてこちらは銅の夢おさない日日のトラウマが問う
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一つ恋めばえても花を望むまい仄かな想いのままが身の丈
強がりを組み立て終わり終わらなくても終わったと消したアドレス
昨日みてない虹でした明日もまたみたいものです出さない手紙
....
寝苦しい夏に猫との熟睡がかなった不思議な十七年余
想うのは初冬のこども暗くとも帰れずにいる駅のベンチに
秋服のままで真冬を越えた子がうつむき見てる花そして花
星が無いわけではなくて街赤く黄色く白く今日は見えない
{ルビ初 ....
潮風に抱擁されてポチはいま天に召されてゆきました
小母さんの嘆きがたとえ届いても返せぬポチの無念の眠り
ほんとうに一瞬のことでありました轢かれ引き摺られて五メートル
小母 ....
人魚姫対岸をみて泣いている男女二つの影の七夕
地球では雨が降っても宙は晴れ人魚の想いとうらはらに晴れ
織姫がもどる頃には泡となり人魚はとわの一年の旅
自転車を漕ぎ忘れゆく日常の都会の暮らし軽井沢にて
手折ってはいけない花を手折ってるこどもを赦す手折られた花
この空がずっと続くと信じてた学生時代の常夏の空
雷に打たれてしまいたいほどの失恋の日に不意討ちの雨
傘二つ隠して君を待ち伏せてカフェで二人はクリームソーダ
ごめんねと云わ ....
もう恋はしないと決めた哀しさを一人のものとして綴じる寂しさ
{ルビ夕星=ゆうずつ}を見ない日続く梅雨のなか届かぬ{ルビ手紙=ふみ}とそのあてのなさ
ジャズピアノ似合う私でないけれど ....
幻聴でなくて難聴を患ったせんせい誤診のままが良かった
ありうべき嘘だと思う創作を巡る血潮にこころ赤裸々
朧夜の想いうらはらくっきりと願える{ルビ朝=あした}の爽快な空
泣き腫らしそれでも明日の靴をいま磨いています頑張っています
青空を覚えぬ五つの日になぜか四季はそれぞれに掴んでいた{ ....
かの冬が懐かしいかもまだわたし母なる海で旅をしていた
雪が降る音と覚えた海原の夜の遠くの母の心音
二月から待たれていると知りながら躊躇っていた三月生まれ
三月のまだ浅い日 ....
春みそか初めて電話で聴く姉はデジャヴのような懐かしい声
姉ひとり妹ひとりの生活を東京のなかで思い描く夜
両国の回向院まで手を繋ぐ姉と妹みずいろの初夏
港町夕焼け市場の小母 ....
原宿を歩くわたしを占うと「甘えたりないあなたは長女」
午前二時はじめて電話で聴く声にデジャヴのような姉の面影
目覚めるとデータがすべて消えているケータイ」という夢に戦く
今日もまた打ち捨てられたあの部屋であなたと行ういけない遊び
なすがまま私はあなたのお人形何をされても動いちゃダメよ
窓ガラス映るふたりのシルエット誰にも言えない秘密の儀式
しっとりと ....
亡くなったひとを悪くは云うなというお子さまランチ食べ飽きている
父さんは私のこして行ったじゃない一人で先に行ったじゃない
生者との人付き合いができなくて切符ください百年後への
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{引用=言葉など信じられない風景はうそを吐けないたとえば樹海}
父の骨減り続けてゆく骨骨骨胸のロケット重たいままに
ころおん
こるろおん
くるうくるう
くるうおん
{引用=先生が選んでくれた歌抱きしめて灯りを消してみたいと思う}
真夜中のバッハはビオロン選曲を間違ってない強がってない
何度でも何度でも自らに云うどんなに困れどニコンは売るな
こどもの日見た空よりも凄い空きっと見てからそこへ行きたい
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空が知るアスファルトも知る自らもだけど足りないそれはパンです
遠い日もいまも変わらぬリボン無きみすぼらしさよこの人生の
いつだって観ている隣の人生の味は甘いかどんな甘さか
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想いならわたしのほうがと明らめる意味の種蒔き可愛がる春
あなたからわたしからとかいうでなく朝のひかりが解していたり
かなわずに終わった希いはひとの世を背負った花のなかでもアネモネ
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人よりも鳥がよかった身投げして少女は眠るアコヤガイの夜
シャンデリア灯して暮らす深海の秘密を護るための灯台
サカナ族だけが持ってる声帯で唱えると開く海底の門
竜宮に棲む緑 ....
春愁は翼ひろげて訪れて翼やすめるわたしの指で
春愁は長居の気配カレンダー覗き込んでる三か月後の
春愁を俳句でいじめてやりたくて考えてもみる客の奇特さ
赦したい赦されたいと ....
人間の別の名前を鬼といういま笑っているあなたのことだ
ねえ父さんもう疲れたよいつまでも居たくはないよこの人の世に
ナツメ球一っつほしい暗闇に灯って護れ哀れな部屋を
てづくりでゆめをうたって現実の個を視たくない観られてはいても
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