季節風が未練がましく吹きつのり
北野天満宮の梅苑に白梅が咲き始めた
春が来るのか
昨日よりは
今日よりは
明日よりは
理想の 胸に馳せめぐり浄らかな人生を
描いて ....
あなたはつづき
かつていた
誰かのように歩き
かつていた
誰かのように迷う
纏っているのは
誰かの悲しみのつづき
そうやって続けていれば
いつかは悲しみ終るかな
いや
....
そしたら
遠まわりをして、
ゆっくりと忘れていこう
したことのすべて、
思ったことのすべて、
何度でもおなじふうにするしかない
春のすべてを
すみれ、れんぎょう、えにしだ、は ....
半分に割ったシュークリームのように頭の中から脳が溶け出す
皿の上にこぼれたカスタードと血と共に流れていった自我
甘みと痛みも違いはなく同じプレートの上この地球を彩る
感情は起きた出来 ....
声を触っているうちに
忽然とある日ひとだった
言葉は貧弱だけれど
壊れることのない強さと温かみがあった
恋をしていたのだと思う、生きるということに
固形の身体と
呼吸はいつしか覚え ....
毛糸の陽だまりにも春は来ていた
健気に母が計算した数式は
今朝、消しゴムで消しておいた
経験だけではどうしようもない
結論や結果があって
けれども僕らは
健康な明日を願うのだった
....
あしたから春です
という宣言がされ
そこかしこで煙があがった
すべてを語ろうとする僕たちは
不足を抱えることになり
かろうじて嘘ではない かもしれない
くらいの言葉で
このほそい ....
小路を下り来た足が
民家の庭先にある酔芙蓉の木に
止まってしまいます
日差しを浴びる幾つもの
いくつもの花を
見てしまう
どれもがすっかり
酔い心地
木は通 ....
昏がり
伸ばされた少女の白い腕
僕の地平線のすべて
そうよ
私がいなくなれば
永遠に陽はのぼらないわ
僕は鳥
魂は地平線の彼方---
不意に少女が腕を下ろす
僕は
....
世界が暗いので、相対的に私は明るい
雨だ。一弦を鳴らし、
耳に少し明るすぎる音を確かめて、
朝はもっと暗くあろうと努める
そうしないと、不理解が空を覆い尽くしてしまいそうでしょう
....
鍵盤の上をいつもおくれてくる指のように
わたしはすでに取り残されてひとりで立っている
ビー玉を空に撒いたような
ボールパークの歓声に耳をふさいで
美しい惰眠をむさぼる緑色の猫の舌が
....
草が夏を繰り返している
雲になることを空想していた少年は
九九の練習を終えた後
空港事務所の職員になった
苦痛ではない、けれど確かな痛みが
暮らしの中、靴にも降り積もっている
空気 ....
傷つけないあなたと
傷つかない私が好きだった
モクレンがいくつか咲きました
ほいっ、ほいっ、ほいっと咲きました
あたたかな青空に
花たちはとても得意げでした
でも今日はとても寒いので
蕾たちが得意げです
花は開く前から強い光で ....
メルカリで買った言の葉を煮出している間に君への手紙を書いている
春という暴力に曝されながらも何とか眠らずにいるのは君が好きだからだ
君が好きだからだ
ガラスの水滴が互いに引き寄せられるように ....
一睡もできなかった、朝
産毛はきんいろにひかって
ふっくらと水をたたえた丘に
まだかわかない涙のあとを見つける
そのときに思いしります
あまりに深かった穴と
その埋めかたについて
い ....
僕は砂漠を歩いた。足跡が一つもない純白の砂漠だった。
僕は汚れていた。汚れていると思えば思うほどに僕は汚れていた。
綺麗な少女が立っていた。少女は微笑して腕を広げた。
僕は脅迫的に少女を抱きしめ ....
宇宙船の窓には地球が浮かんでいる
球面には雲が広がっている
雲の遥か下に屋根がある
屋根の下で誰かが炬燵でうとうとしている
余計なお世話だ
掬ったプリンの味どうだろう、手作りで卵が余ったからつくった。揺れるね、精神と地面。足が踏みしめているの何だろう。卵と乳製品が食べられないの知らなくて、作っちゃった、後でひとりで食べたバニラエッセンス ....
花の話をしていると
何で花の話をしてるんだろうね
という話になって
僕らが花だからじゃないかな
ということでよく見ると
お互いに花だったね
とわかって
笑って
咲いて
入学す ....
冬の日差しを背に受けると暖かでした
布のブックカバーはザックリとよい手触りです
賑わう道の際にある私の影の中で
詩集のページを開いてみました
ある詩をゆっくり二度読みま ....
私たちの地下鉄は地下を進む
地下を進むからいつしか
地下鉄と呼ぶようになった
図鑑で虫の名を当てて遊び
折にふれ季節の果物を食した
軋む音、擦れる匂い
鼓動と呼吸の合間を縫って
....
白色矮星、
大切に ハンカチで包んだ
時間に刻まれて、
泣いていて かわいそうだった
音ではなく 文字でもなく
心臓に「ありがとう」をもらった
もらいすぎて溢れて、
勿体ないよ って ....
水に浮かべた言葉がね
ゆらゆら揺れて 透けてゆく
にじんだ意味が 虹色に
かさなりあって消えてった
答えは無人駅に
各駅停車ではないから
いつもは拾えない
長いまどろみの後でふと
車窓から外を眺めると
満開の桜並木
目がくらむ
駅の方では知っていた
肥満だ肥満だ
着ていく言葉がない
終わろうとする冬を
あらゆる手で引き止めながら
誰かを信じたわけじゃない
思想を委ねたわけでもない
すべては嘘なのだから、
いちばん機嫌の良い嘘 ....
君のヘアセットが僕の体の中を流れていく
洋服もそして君の言葉も流れていく
それを君と言うことも出来るが
僕は時々思う
それは社会的価値の代弁なのだと
社会的価値は不自由で僕を悩ませる
その ....
冬の滑り台は
凍ってしまって
子どもたちの
渋滞が起きている
春になると
一斉に放流されるチャイムで
淀みなく帰路に着く
足がたくさん生えてくる
(きみがいいと言うのなら
(もう ....
いつも言葉は先に途切れる
それは相応しい形をまだ見つけられないからではない
まるで全てを知らなかった時代に戻る
私たちは思い出す
始まりはいつも懐かしいものだと
私は確信する
いつ ....
僕の瞳にはオレンジだけど
君の目には何色なのか
そよぐオレンジの群れに
君はお尻を向けて移動中
ちょうど僕の胸の高さに居て
翅を広げる
胸部と腹部の背中がはっきり
見 ....
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