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ある日、あなたの背中に
窓があるのを見つけた
開けてみると
普通に外の景色があった
眩しければ鳥になるといいよ
とあなたが言うので
わたしは鳥になって
空へと飛びたつしかなかった ....
食べてすぐ横になると
牛になって
川まで来ていた
晴れたら洗濯をして
布団を干そうと思っていたけれど
雨も降り出して
残っているものもない
これからの人生どうなるのだろう
いや牛だ ....
長い信号に引っ掛かった
本当に長くて
五十メートルくらいはあった
長いものには巻かれろ
という言葉があるけれど
何かを巻くほどの
柔軟性はなさそうだし
それならばいっそのこと
 ....
鞄の中には
ひと握りの青空と
昨日捕まえた飛行機
微かなその羽音
生きていく毎日の走り書きは
遺言のように積み上がって
夏、という言葉だけが
いつまでも
うまく書けなかった
 ....
部屋の中に集落ができた
小さな集落だった
本家、という男の人が話にきて
畑で採れた作物を
いくつかくれた
学校が無くて困っている
というので、近所の小中学校と
市役所の場所を教え ....
声を触っているうちに
忽然とある日ひとだった
言葉は貧弱だけれど
壊れることのない強さと温かみがあった
恋をしていたのだと思う、生きるということに
固形の身体と
呼吸はいつしか覚え ....
毛糸の陽だまりにも春は来ていた
健気に母が計算した数式は
今朝、消しゴムで消しておいた
経験だけではどうしようもない
結論や結果があって
けれども僕らは
健康な明日を願うのだった
 ....
草が夏を繰り返している
雲になることを空想していた少年は
九九の練習を終えた後
空港事務所の職員になった
苦痛ではない、けれど確かな痛みが
暮らしの中、靴にも降り積もっている
空気 ....
花の話をしていると
何で花の話をしてるんだろうね
という話になって
僕らが花だからじゃないかな
ということでよく見ると
お互いに花だったね
とわかって
笑って
咲いて
入学す ....
私たちの地下鉄は地下を進む
地下を進むからいつしか
地下鉄と呼ぶようになった
図鑑で虫の名を当てて遊び
折にふれ季節の果物を食した
軋む音、擦れる匂い
鼓動と呼吸の合間を縫って
 ....
壊れた室外機に腰を掛けて
春が来るのを待ってる
いくつも季節は過ぎていくのに
春だけがまだな気がする
私は雲ではないけれど 
春が来たら食べたいものを思い浮かべ
その食べ物に
う ....
外野を抜けた白球を追って走る
走者が一掃して
試合が終了しても
ひたすら追いかける
悲しみも寂しさも
ただの退屈だった
人の形を失っていく
それでも最後の一ミリまで走る
(午前7: ....
人が笑っている
人も笑っている
空は何もしない
近所の人が歩いている
犬を連れている
性別は男とオス
海は遠い
(午前6:53 · 2021年2月3日·)


椅子が眠っている ....
肩幅で生きる
肩に幅があって良かった

夏は草の履歴と
雲の墓場
ただいま
おかえりなさい
言葉が影になる

初めてできた影だ
子供たちに見せてあげよう
昨日いた犬にも見 ....
 
 
とり急ぎ、という言葉を初めて聞いたとき
鳥も急ぐのだと思った
正確に言うと
へえ、鳥も急ぐんだ、と思った
それはユウコの初めての言葉だった
今思えばあの頃
鳥は皆、急いでいたよ ....
 
 
薄色の電車
駅に着くたびに
肋骨を触って
遊んだ
指先に水滴が集まって
見ていると
きれいだった
お父さんが、いい、
と言ったから
遊び続けた
手やその先が
優しい人 ....
 
 
とてもとても遠いところから
君の訃報が届いた
時刻表を確認することもなく
僕は一番最初にやってきた列車に乗る

いったいどれだけ乗り継げば
君の場所に行けるんだろう
君の生き ....
耳鳴りが気になって眠れない
そう言う君の耳に自分の耳を当てて
同じ耳鳴りを聞き続けた

あれしたい、これしたい
語り合う夢はまだまだある
この年になればいっそのこと
実現しない無 ....
雨季、冷たいだけの
椅子に腰
かけて
朝方の蝉が穏やかに
絶滅していく様子を
眺めていました

手を伸ばす
伸ばす手が
その手が
範囲
何も守れない

窓があってよか ....
書き損じた天気図の余白に
僕らは昨夜見た偽物の夢を書き続ける
筆圧があまりに強いものだから
明日見る予定の夢まで記してしまう

つけ放したラジオから聞こえる
ネジが酸化していく音
そ ....
車を洗車したら戦車になった
仕方なく戦場に行った
遅刻をしてしまったようで
味方から怒られ
敵からも罵声を浴びせられた
激戦地と言われているけれど
生き残る方法は
偉い人が考えてくれ ....
夜明けの街を自転車が
自転車に乗って走って行く
やっと夢がかなったのだ

自転車にしか経験できないこと
自転車でなくても経験できること
それらすべてを
貧弱な荷台に積んで

やがて世 ....
 
 
理由のいらない椅子が並ぶ
未明に墜落した紙飛行機の残骸と
食べかけのルーマニア菓子
砂浜の砂の数は
既に数え尽くしてしまった
栞の代わりに挟んだ魚が
静かに発酵して
すべての ....
 
 
駅前で女が
ヴァイオリンのように泣いていた

男がやって来て
指揮者のように煙草をふかし始めた

観客のように
人々は足早に通り過ぎた

銀色の魚が身を翻し

都会は ....
 
曖昧な更衣室で
僕らはすべてのものを
等号で結びあわせた
軟らかい材質でできた身体は
嘘をつくことが
何よりも得意だったから

花粉の積もった改札を抜けると
溢れだす人という人
 ....
  
 
眠っている祖母の頬に
桜の花びらが一枚落ちる

そんな季節ではないはずなのに
掌に握らせて
悪戯でしょ?と笑ってしまう

見送るつもりが
見送られているのは私たちですね
 ....
ぼくの隣
静かなきみのポケットに
たぶん幼い
春が来ている

手を入れれば
指先に形のない手触り
必要な幸福は
それで足りる

春になったら
そう言い続けて
ぼくらは今
何を ....
ノックをしてみる
と、きちんとノックが返ってくるので
僕は待ってる

春になって数回目の風が吹く
見上げる空の青さも
鳥の羽ばたきも
風にさらされている皮膚も
本当は多分
言葉でしか ....
 
話す声が小さくなっていく、朝
きみは一冊の
ノートになった

軽くなった身体をめくって
話の続きを書く
これからは大切なことも
大切、とは少し違うことも
こうしなければきみに届か ....
ポケットが汚れ始めている
待合室は朝から眠たい
何かの整備工の人が
口を動かしている
語りかけるように
沈黙を選ぶ言葉があった
目を閉じようとすると
少しばらばらになる
水が優しい濃度 ....
水宮うみさんのたもつさんおすすめリスト(32)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
不在- たもつ自由詩17*24-3-23
波紋- たもつ自由詩8*24-2-28
信号待ち- たもつ自由詩4*24-2-17
走り書き- たもつ自由詩624-2-3
集落- たもつ自由詩23*23-7-9
- たもつ自由詩4*23-3-24
景色- たもつ自由詩623-3-21
繰り返す夏の- たもつ自由詩823-3-16
花の話- たもつ自由詩623-3-3
地下鉄- たもつ自由詩1123-2-20
春待ち- たもつ自由詩722-12-18
つぶやかない(四)- たもつ自由詩1321-5-23
つぶやかない- たもつ自由詩1221-2-21
終戦- たもつ自由詩1120-8-7
生活- たもつ自由詩9*20-3-20
西陽- たもつ自由詩420-2-29
せかい- たもつ自由詩7*19-12-8
片思い- たもつ自由詩1219-11-17
範囲- たもつ自由詩619-11-15
余白- たもつ自由詩1319-11-7
帰宅- たもつ自由詩4+19-9-25
魔法- たもつ自由詩219-9-24
理由- たもつ自由詩1615-6-25
都会魚- たもつ自由詩713-3-23
初夜- たもつ自由詩613-3-19
悪戯- たもつ自由詩211-7-9
裏木戸- たもつ自由詩3008-3-7
ノック- たもつ自由詩2408-2-27
軽い身体- たもつ自由詩2108-1-28
その海から(理由)- たもつ自由詩1607-9-2

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