その頃 俺は
ピコピコハンマーを ピコピコさせていた
夕暮れが また通過していく
コンビニに行く
コンビニは24時間 コンビニやれてるから すげえな
俺は 24時間 俺をやれてる ....
たしかな春の日差しを得ました。土曜日、風は必要以上につめたく、でもそれよりも空気のなかに溶けている季節がしきりに春を叫びます。わたしたちは指先をひんやりに染めながら、ねえねえ来たよね、これだよね、と笑 ....
春は
自然ですよというふりをして
人にしか聞こえない言葉で話している
下に行くほどきりがなくて
上に行くほど見苦しい
そんな場所がここにあるよ
三月に降る小雪をつかまえようと
手のひらを天にむかって
差し出せば
どの子もふわり、
風にひるがえりながら
上手にわたしをよけて
アスファルトへと着地するから
こんにちはも
さようなら ....
目覚めは1人ぼっちの朝に始まり
誰もいない街を歩く1人きりの昼
終わりは明かりも音もない孤独な夜
1つや1人はたくさんあるのに
私は私だけ
食べてすぐ横になると
牛になって
川まで来ていた
晴れたら洗濯をして
布団を干そうと思っていたけれど
雨も降り出して
残っているものもない
これからの人生どうなるのだろう
いや牛だ ....
発せられた愛が受容されるまでに変質するってことだろうか
降る雪がしだいに霙になるように
ふつうの家に住みたかった
屋根があって壁があって少しあたたかくて
窓があって扉があって好きなときに出 ....
ぼんやりと立っている
つり革に掴まって
結露した窓に
街明かりが滲む
あの灯火の向こうに
届かない温もりがある
ぼんやりと揺れている
つり革に掴まって
この手を滑らせる
誰かの ....
なかなか雨はやまない
僕は夢想する
星空模様の傘をさして
君のところを訪ねたい
ジャム一瓶ほどの幸福をたずさえて
なかなか雨はやまないから
君のもとへ辿り着くまでに
傘も溶けてしまう ....
声をかけずに
放っておいたら
影も形もなくなっていた
扉が開く音はしなかったので
窓から吹いていったのだろう
これでようやく
名前がつくかな
はじめまして
お気に入りのコンバース
とうとう底が抜けちゃったな
くるぶしがぬるりとつめたくて
出来たての靴擦れを二月の風が撫でて過ぎる
お気に入りのスニーカー
ぼろぼろになっても一緒に歩いて行きたかった ....
また体の向こうがわで文字が跳ねている。戻っておいで、戻っておいでって思いながら見つめていると溶けて行ってしまう。さきに起きた娘が炭酸水をのみながら、まだ眠ってていーんだよ、と言う。やさしい。朝から ....
どうして
こんなに平穏なのか
冥土へと導く と信じられたホトトギスも
いまは五月の鳥
森を抜け
砂の砦みたいな監的哨跡にのぼって
海のまえに出ると
もう詩に出会った気がした
壁 ....
長い信号に引っ掛かった
本当に長くて
五十メートルくらいはあった
長いものには巻かれろ
という言葉があるけれど
何かを巻くほどの
柔軟性はなさそうだし
それならばいっそのこと
....
光の中で見えるものを見て
闇の中だけで見えるものを見て
いまそのどちらでもない
薄暗がりだからこそ見えるものを
見ている君の瞳が
葡萄のように熟れてゆく
すっかり変わってしまった
十年前とも
二十年前とも
百年前とは
何も変わっていないかも
どうやらひとつの
物語を生きるらしい
月、日、星
月、日、星
二度と会えないこ ....
ところで
説明のつく恋などないのだと
言ったところで理解しない
あなたのかわいい肌から放たれる熱をまにうけながら
生まれ変わったら 工場になろう
と思う
頑健な 灰色の
工場にな ....
鞄の中には
ひと握りの青空と
昨日捕まえた飛行機
微かなその羽音
生きていく毎日の走り書きは
遺言のように積み上がって
夏、という言葉だけが
いつまでも
うまく書けなかった
....
名前を削除したから
夏が終わったんだね
君に借りていた記憶も返せないまま
静かな夜中の改札口
後悔を嘔吐する
虫たちだけに聞かせた
僕の呪詛は
たぶん『好き』って感情から生まれた
....
どうして先生なんかに
進路相談しなきゃいけないの?
自分の好きに生きていくのに
だれかの許可がいるみたい
つまらないから
夕焼けの空ばかり ....
明日は単元テストがあるから
警報でないかなって
雨乞いしてる
夜
ぼんやり頬杖つきながら
化学のノートに詩を書いて
一行空けたり
....
きょうび 灰に花に 煙に霞に
忙しくて
あなたの影ができない
光さんざ降る 窓の外にも
薄暗いお家にも
心の 海原にも 大地にも
忘れないで 忘れて 忘れないで
あなたの声が
不快 ....
冬を編む音が聴こえてくると
祈りが近い
夕暮れが愛おしい
(行かないで)
熊ノ森のはずれにあった
馴染みの毛糸屋は
廃業してしまったらしい
けれど
絶望するにはまだ早い
めぐりめ ....
忘れたものだけ
見ることができた
床に張った
埃 夕日の格子型
蛇口に残る 唇のような水
言うことができた
言い尽くしたことだけを
....
あなたは静かに家をつくりはじめる
静かに 何年もかけて
あまりにも美しくそれは成されたので
家ではなく 森や 額縁や ひとかたまりの風に見えた
静かに何年も何年も
何年も何年 ....
さようなら
さようなら
みんな簡単に手を振るけど
この夏は
一度きりの夏
君も
甘夏色の帽子を振って
家路につくんだね
インスタント闇屋さん
カップのなかで
泣き虫が笑っている
探し続けなきゃいけないものを
かんたんに手に入れようとしたことは
はっきりと罪だったと思うよ
カードは言う、
失う、だが ....
秒針が力なく明日を告げる、残骸だらけの街を抜けていくと海があるはずだ
けれどもあなたは空気の抜けた風船、口づけても口づけてもすうすうと抜けていく
今日のために買った靴を捨て 鞄を捨て 指輪を捨 ....
この日は
水の中
何もないことを
愛していると
言いたくても
息は吐けず
氷のように笑った
骨だけになるまで胸中を支えた
輝きを放つ
わたしの目玉
川縁で白く
太陽を受け ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50