バターがにおうきみの指
料理だってしないのに
その指で小さい蝶蝶を
なんどもつかまえてた
日々がおわるのがわかってた
だしっぱなしにしたビールが
温くなってくのとおなじだ
そ ....
びしょびしょの翅をふるわせて、せみたちが木々の間を抜けていく。街は恋を消費して育つ、夏のせいで深い森になってしまった。
あなたの頬はかたく、髪はつめたく、息はせつない。わたしたちの時間は狭く、言 ....
底抜けの淋しさにあてるために
壊してもよいおもちゃを探してました
そこへ来てあなたが、
きちんとあたたかいものをお食べよ。などと言えば
てきめんに恋をおぼえます
見覚えのある言葉が
....
体は丈夫なはずなのに、
なぜか動くのが嫌になるときがある。
僕のメイン電源が切れて、
予備電源だけがちらちら光っているような状態。
授業中、急に言葉が理解できなくなって、
ただ湧きあがる感情 ....
亡くなった母子の墓石に
死者が手を合わせてる
縁者ではなく旅の途中の
襤褸をまとった枯れ木の姿
ねえ、聞こえない?
空を見るとき空には全てがあるんだ
空白と、無を抱えて
あなたは、命を手掴みにして、
日陰に入れば、あなたは眠るだけ
それが、あなたの一生の、全て
空と、風と、眠り。
....
もうすぐ夢が終わるってときに
あなたは顔を洗おうとしている
集めた虹が泡になって消えていくときに
世界は痙攣して
わたしは吐き出される
あなたは顏を洗っている
洗面台に残った泡たち ....
生身のひとが
都市に残っている噂とは逆に
鉄路を踏んでゆくと
霊とすれ違った
稀にたたずむ
かつてのひとの家宅は
いま わたしの背丈を遥かに超える蔓草が
幾世紀の愛憎を晴らすように
....
まだ何も知らない頃から詩を書いていた。日記と詩と。いまでもときどき読み返す。あちこちから出てくるからだ。何も知らなかったけど、本当のことが書いてある。知っているよりも多くのことが書いてある。これは ....
涙のような夜があけていく
かたく結んだ祈りが破られていく
君のまぶたに塗られた祈りだ
本当に愛するつもりなんてなかったのに
ただ風が強く吹いただけなの
詩か
これは詩か
なら{ルビ良=よ}い
詩離滅裂で{ルビ良=よ}い
業務文章なら屑籠に送られる代物だが
詩ならこれで{ルビ良=よ}い
自由だ
誰からも縛られた ....
物心ついたころは、半分くらい本の中に住んでた。だって外はあついしさむいしうるさいし、はやく走れないし。それから少し成長して少女のころになると、本の中にはいられなくなって、窓をのぞくみたいに本の世界 ....
最初から廃墟だった場所で
最初から破片だった言葉を
拾い集め交わし合う
それは破片だから
時に自らを 誰かを
傷つけてしまう
しなやかで
すきとおる思惟で
編み上げられてゆ ....
くだんないことに一生を費やすのが人生でしょう?
ぶつかり合ったとしてあなたと私は何も失う事なんて無いわ
ほらみてごらん?星の軌跡を
私たちは違う星の谷間に落ちた子供
私たちは成り立ちは違えど同 ....
高をくくった夏の日に
足を踏み入れたせいなのか
明日を見切った冬の日に
足を踏みはずしたせいなのか
頭の中だけが そしらぬまま
音はかえってゆきます
時の栞はありませんでした
指 ....
光から溢れ散ばる蜜の束 あの子の耳を少しゆらした
手をとめて見てほら部屋の隅にある 打ち明け話のなれのはて
はな散って爪塗りなおす薄暑かな
からだに良い毒と
わるい本当をひと匙ずつ
掬って舐めたら昏倒だ
他人の言葉で計る幸福
焼き切れない過去
最後の合図の前に
甘い
嘘をついてくれよ
あなたが手紙をくれたから
日々が春へと向かっていることに
気がつきました
いつの間にか
硬く
冷たく
難しくなっていたわたしを
あなたはどこで笑ってくれますか
わたしの返信を
....
えぐい話が続く
えぐみとか、誰が求めているのですか
需要があるんですよ
凌辱ものとかあるでしょう
そんなものは求めとらんよぉ
熱闘消毒してみましょう
煮てみましょう、焼いてみま ....
あなたは遠い場所へ行ったまま
帰ることはなかった
あなたを探しに私は遠い端まで行ったけれど
そこには誰も何もなかった
あなたは遠い果てにいて
私はまだそこへは行けない
もう二度とあえない ....
初めからやり直せたら戻したい一つ一つ一つの過去の間違い
やめていた酒をふたたび飲んでいる妻の写真が俺を見ている
雪の結晶が開いたり閉じたりする夜に
瞼の中のもう一つの瞼を眠らせるように
内側から鍵のかかった黒猫の中で
一体どのような犯罪が行われていたのか
雪の結晶が開いたり閉じたりする夜に
鳥籠の中に ....
ある日、あなたの背中に
窓があるのを見つけた
開けてみると
普通に外の景色があった
眩しければ鳥になるといいよ
とあなたが言うので
わたしは鳥になって
空へと飛びたつしかなかった ....
ガラスの壁に、手が触れて、彼は見る、音もなく、蠢く、群衆を。一人一人に、足音はつかない。そうして、忙しなく、いつまでも、蠢いている。真昼の、静かな都会。鳥が、空を、飛んでいる、ような気がする。駅のホー ....
友達が海辺だった。ぼんやりと暗い真昼の部屋で、どこから迷い込んできたのだろう、蟹が蠢いていた。冷たく静かなベッドの上で、蟹の群れが、友達の中へ滑り落ちていく。少しだけ話をすると、友達は用事を思い出して ....
ながいこと逢えずにいたら君の死が逢えない事のつづきに想えて
欠けたようなよろこびが
胸におちるたび
あなたのかたちになってへこみました
愛だと言い切ればよかったね
宙にうかべたまま
少しずつすりへって
もう見えないのにここにある気持でい ....
春が来た、カーテンを閉めよう
落ち着きのなさを気付かれぬように
行く人、とどまる人、帰る人
私の行く場所はどこかと、心が騒ぐ
花をつけ始めた桜は堪える
激しい雨風に打たれても
花の散っ ....
所詮物語は自分の中にしかない
物語をどう書き換え
幸せな終わりにするかは
自分次第
所詮物語は自分の中にしかない
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