すべてのおすすめ
バターがにおうきみの指
料理だってしないのに
その指で小さい蝶蝶を
なんどもつかまえてた
日々がおわるのがわかってた
だしっぱなしにしたビールが
温くなってくのとおなじだ
そ ....
びしょびしょの翅をふるわせて、せみたちが木々の間を抜けていく。街は恋を消費して育つ、夏のせいで深い森になってしまった。
あなたの頬はかたく、髪はつめたく、息はせつない。わたしたちの時間は狭く、言 ....
底抜けの淋しさにあてるために
壊してもよいおもちゃを探してました
そこへ来てあなたが、
きちんとあたたかいものをお食べよ。などと言えば
てきめんに恋をおぼえます
見覚えのある言葉が
....
もうすぐ夢が終わるってときに
あなたは顔を洗おうとしている
集めた虹が泡になって消えていくときに
世界は痙攣して
わたしは吐き出される
あなたは顏を洗っている
洗面台に残った泡たち ....
まだ何も知らない頃から詩を書いていた。日記と詩と。いまでもときどき読み返す。あちこちから出てくるからだ。何も知らなかったけど、本当のことが書いてある。知っているよりも多くのことが書いてある。これは ....
涙のような夜があけていく
かたく結んだ祈りが破られていく
君のまぶたに塗られた祈りだ
本当に愛するつもりなんてなかったのに
ただ風が強く吹いただけなの
物心ついたころは、半分くらい本の中に住んでた。だって外はあついしさむいしうるさいし、はやく走れないし。それから少し成長して少女のころになると、本の中にはいられなくなって、窓をのぞくみたいに本の世界 ....
光から溢れ散ばる蜜の束 あの子の耳を少しゆらした
手をとめて見てほら部屋の隅にある 打ち明け話のなれのはて
からだに良い毒と
わるい本当をひと匙ずつ
掬って舐めたら昏倒だ
他人の言葉で計る幸福
焼き切れない過去
最後の合図の前に
甘い
嘘をついてくれよ
欠けたようなよろこびが
胸におちるたび
あなたのかたちになってへこみました
愛だと言い切ればよかったね
宙にうかべたまま
少しずつすりへって
もう見えないのにここにある気持でい ....
たしかな春の日差しを得ました。土曜日、風は必要以上につめたく、でもそれよりも空気のなかに溶けている季節がしきりに春を叫びます。わたしたちは指先をひんやりに染めながら、ねえねえ来たよね、これだよね、と笑 ....
発せられた愛が受容されるまでに変質するってことだろうか
降る雪がしだいに霙になるように
ふつうの家に住みたかった
屋根があって壁があって少しあたたかくて
窓があって扉があって好きなときに出 ....
また体の向こうがわで文字が跳ねている。戻っておいで、戻っておいでって思いながら見つめていると溶けて行ってしまう。さきに起きた娘が炭酸水をのみながら、まだ眠ってていーんだよ、と言う。やさしい。朝から ....
ところで
説明のつく恋などないのだと
言ったところで理解しない
あなたのかわいい肌から放たれる熱をまにうけながら
生まれ変わったら 工場になろう
と思う
頑健な 灰色の
工場にな ....
あなたは静かに家をつくりはじめる
静かに 何年もかけて
あまりにも美しくそれは成されたので
家ではなく 森や 額縁や ひとかたまりの風に見えた
静かに何年も何年も
何年も何年 ....
インスタント闇屋さん
カップのなかで
泣き虫が笑っている
探し続けなきゃいけないものを
かんたんに手に入れようとしたことは
はっきりと罪だったと思うよ
カードは言う、
失う、だが ....
秒針が力なく明日を告げる、残骸だらけの街を抜けていくと海があるはずだ
けれどもあなたは空気の抜けた風船、口づけても口づけてもすうすうと抜けていく
今日のために買った靴を捨て 鞄を捨て 指輪を捨 ....
みじかい夜が始まったとき
どうすればいいかはわかっていた
どんな夢を見て
どこへ行けばいいかも
その先でかならず
あなたを失うことも
始まれば終わるしかない額の花
箱庭や不在ばかりが生って夕
切り落とす音朝顔の青に似て
行き先のないまま咲くの月下美人
ダチュラダチュラダチュラダチュラ寂しい日
浅すぎて溺れられないソーダ水
溶けてゆく足元に夢 匂う飴
別れぎわ 裸足になって踏む花火
卵がない
と言うのとまったく同じ重たさで
愛してない
と言う
君は
軽やかに靴を脱いで
眠りはじめる
鳥たちは
詩の滅亡、と言う
巣の作りかたを忘れてしまって
帰る場所がないの ....
つつじが咲きはじめた、早い木はもう満開。
ことばが出てこない。
むすめはきちんと学校へ通っている。(新学期初日は、自分で選んだあたらしい靴下を履いていった)
冬には乾いて音がするようだった頭 ....
そしたら
遠まわりをして、
ゆっくりと忘れていこう
したことのすべて、
思ったことのすべて、
何度でもおなじふうにするしかない
春のすべてを
すみれ、れんぎょう、えにしだ、は ....
あしたから春です
という宣言がされ
そこかしこで煙があがった
すべてを語ろうとする僕たちは
不足を抱えることになり
かろうじて嘘ではない かもしれない
くらいの言葉で
このほそい ....
肥満だ肥満だ
着ていく言葉がない
終わろうとする冬を
あらゆる手で引き止めながら
誰かを信じたわけじゃない
思想を委ねたわけでもない
すべては嘘なのだから、
いちばん機嫌の良い嘘 ....
熊たちは夜をかみ砕き
蜂蜜の朝を得た
意味の羅列を踏みこえて
あたらしい夢をみるんだ
配管 像 通勤ラッシュ
茜色 ポリタンク 出されない葉書
僕の隣は空き続ける
なされなか ....
風がいよいよつめたくなってきた
頁をめくるときがきた、と君が言う
ぼくは12頁めの一行めを読む
愛してくれるなら誰でも良かった
乱丁だろうか
次の行は暗く潰れて
愛して良いならだれ ....
うすい殻は
かなしみを透過して
だれかのために
破れようとしている
壊れながら
守ろうとする
消えることで
在ろうとする
正しくないと 知りながら
知ることで 許されよう ....
どんなに濃い風が吹いてももう思い出みたいなものしか書けなくなって、
名前はもちろんその表情、片側に多いほくろや厚い手のひら、
柔軟剤の匂い、街の音も乗り換えかたもぜんぶ変わって
そりゃあ ....
雨降りの間際で
それは恋だった
降り出してしまえば楽になる
頭の痛みに似て
激しいほど
わたしたちは
正気を取り戻していく
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