いつだったかな
ベッドの中で
嫉妬について話したことがあったよね
ぼくは嫉妬なんてしないよ
って、あなたは言うくせに
ほかの人と飲みに行く話をしたらさ
いつも黙っちゃう
....
一行先になにがある
埋もれたものを
掘り出すために
ペンはノートをすべる
時に動きを止め
時にくるくる回り
なさけなくも
いさましく
次の一行へ
インクが尽きた ....
本を開いては
単語をつまんで
床に落とす
カナリア
使い古された鳥の名前よ
名前を忘れて
休むといい
石鹸
もう何も泡立てることなく
しろい体を
確かめたらいい
....
あなたの登録メールアドレスは生きてますか?
あなたがあなただと 今も証明できますか?
あなたへ わたしの言葉は届きますか?
メールアドレスとパスワード
あなたをあなたたらしめる ....
とおーい 声がするのを、するのを見ている。蛇腹にたたんだ気持のなかで子どもが泣いている。あかるい窓べ、海べ、岸辺。
心に彼岸はないから、いつまでも分かり合えない。猫たち性懲りもなく恋する。
....
降り注ぐ雨が
掴み切れず指をすり抜ける
落として来たもの
空がやけに広い朝焼け
終わりなのか
あるいは始まりなのか
レールを走る列車のようには
うまく進まない生き方を
けれど今を精 ....
完備 第一詩集『abstract』
…………………………
index
you
・footprints
・memo
・units
・difference
i
・ ....
一周まわって今時の
君の着る服が、
私の前髪をきれいに揃えようとする
君のきるシャッター音が
あまりにデジタルなので
私は前髪を揃えようと思うのだ
私の肺の穴あなから
ミツバ ....
しんどいな
そんな夜
聞こえた声に
とんでもなく救われた
うんこの話
ウォンバットの話
中身なんて何もないのに
何故だか頭に残ってる
ワンピースの裾をはためかせてバイバイ
永遠という言葉の中に
私が含まれるのはいつだろう
ひとつだけ伝えるなら
あなたに何を
朝のまぶしさか
夜のしずけさか
日曜のあきらめと
やすらぎか
風のつめたさか
空のはるかさか
言葉のたよりなさと
たのもしさか
大切 ....
窓枠にとまったノコギリクワガタが
居心地のいい私の部屋を守ろうと
ハサミを開いて威嚇する
私もプレイリストから
作業用ロマサガ戦闘曲集を流す
生命線をなぞる
左手のひとさし指でいちど君と
出会った気がした真昼に
やさしく訪れるように降る雨が
こころに刺さる氷柱を一欠片ずつ
溶かしていく夜に冬が泣く
何度も読んだ小説の
一行 ....
街1
好きでもないまち、でもきらいとまでいかないまちに
好きなきみがいるのはたしかなことだった
きみは本が好きで
きみに好かれている本をわたしはちかいうちに読もうと思っている
風とか、ご ....
悲しみがいつまでも消えないのなら、そこから生まれる言葉は共通言語だ。
君の悲しみが透明水彩のように残ればいい。
春になり融けだした色水は渡れない橋のそちらとこちらの間、
せせらぎは音楽を奏で、僕 ....
今日が、微睡んだ瞳の奥で
希釈されていく
感情は、乾いた風に吹かれ、干からびて
身体の襞に折り畳まれる
けれど、記憶はいつかまた蘇る
あなたが必要としているものは
全て ....
中学生の息子が
心が折れたと言った
心という文字を
折り紙で折って見せた
一緒に大笑いしたが
心を折りたくなる
ことがあったんだと
心に折りたたんだ
角を曲がると
恐竜がいた
なんだかとても
しょんぼりしている
どうしたんだい、
と声をかけると
絶滅しちゃった…
と声を詰まらせる
仕方ないじゃないか
詳しい事情は知らな ....
迷いか憂いか
2019.1.17.
とあるニュースの続報と更新のないあなたの抜け殻と
結び付くはずなどないものに 挟まれた僕の心
まるで形のない幽霊船 心もまた形のないものだから
住 ....
いつかわたしが生まれ帰ってきたとき
もういちどこの詩をみつけたい
なまえも知らないひとの詩として
ささやかだけど悩みや哀しみ 楽しみなんかを書きとめて
人肌のあやうさを伝えたい
....
いとしいといわない
愛しさ
さみしいといわない
寂しさ
祖母と行く畦道
ふゆたんぽぽを摘みながら
手は
手とつながれる
枯れ野には
命の気配がして
墓所には
命だ ....
黄色い布張りの表紙のノートは母が買ってくれたもので、すらすら嘘を書くのにつかった。
三週間連続で書きこんだり、7ヶ月間開きもしなかったりしながらで13年経ったのだ。時間と手垢で沈んだ黄色。
ず ....
テディベア、ものさし、あおいゆうぐれ。
汗ばんだひたいのあまいにおい、
いいにおい。
ひあたりのリビングにひろがったあかるい色色、
層になってひろがっていく現実との接地。
浮かびそう ....
夢の痛みが灯る街角を
回遊する銀の魚群をすり抜けながら
君は物語の解体と再構築を繰り返す
君の中で発火する思惟が
気難しくも美しいあるひとつの構造を浮かびあがらせる
時の流れの中にふと訪れる ....
晴れた港の
防波堤を歩いた
コンクリートのひび割れから
小さな花は灯る
テトラポットは
夜ごと
組み替えられている
それらが
いつか砂粒になるまで
続いていくとしても
さかなの ....
またね、とは言わない
また会える前提で手を振った幾人かが
二度と会えなくなったから
立ち去るとき
そういう人は足音をたてない
寸、寸、寸、と離れていく
私もまたそうしてきた
いかにも ....
どっしりしたコート、赤いくちべに、空いてる電車、缶コーヒー。
師走、指をひらいて夜をあるく。ほとんどこわくないよって顔をして(あるいはほとんどなんにも知らないよって顔)。種、草、蔓、実、届く(届 ....
季節はたそがれ、満ちてゆく。
幸福と不幸の狭間に立って漏らすため息。
願い事を信じる力はあるか。
心は風に舞い、静かに溶けてゆく。
古時計のぜんまいを巻いてみるが、過去に戻る ....
もうすぐ
トンネルだね。
息子がつぶやく
車内は空調がきいてあたたかい
帰路を走るフロントガラスに
ちらちらと落ちる雪
しろいね。
冬が深まるたび
吐く息が白くなる
....
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