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いつくしみを
ぼくに いつくしむこころを
ひとの知の火がなげこまれた
焼け野が原にも
ひとの予期よりうんとはやく
みどりが咲いたことを
アインシュタインはおどけながら呻いている
....
あなたも 卒寿を 越してみる と
わかりますよ
どんなに 心身が
屈曲してしまったか が
青い 年代 は もう
再来しては ....
もっとゆっくり話しを
聴いてほしい
もっと心に耳をかたむけてほしい
押さえ付けて、黙らさないで
抹殺しないで、縛り付けないで
同じような目線で
かすかでもいいから
心の琴 ....
水の悲鳴と
鐘の音が重なり
どこまでも
眠りを遠去けてゆく
骨と木と岩
蒼い火を吹き
砂と浪を照らしながら
海のかたちを描いている
白く広い風景に立ち
....
喀血する連中の
猥雑な足さばきを見なよ
割れた石畳で
ブレイクビーツみたいさ
いつまで経っても周波数が合わないから
指先がバカになるまでチューナーを弄んでる
枯渇の上に怠惰を築 ....
朝、目を開ける。
夢を現実にするために。
今日も、目を開く。
新しい気持ちに出会うために。
目の前のあなたと、目を合わせる。
言葉にできないことを、分かり合うために。
海鳴りとは違う何か
僕の胸の裡で雲のように高まり
やがて激しく満ちてゆくもの――レイン
耳を澄ませば走ってゆく
樹々の隙間から見た青い空に
今しも雲が 鳥が羽ばたき
まるで君の心の ....
忘れられた歌が戸を叩く
風が酒乱の男みたいに木を嬲っていた
(何も知らない子どもがゲルニカを見ている
あなたは映らない鏡
恋している
空白の輪郭の投影よ
純粋すぎて
愛 ....
きみのかあさんになりたい
お洋服を手縫いしたり
陽に透けるきれいなゼリーをつくったり
おひざにだっこして絵本を読んだりする
いつも子育てのことで
はらはらと気をもんでいる
きみのとうさ ....
散乱した無数の接続部品は古い血液のような錆に抱かれて暴動の後の死体のように
コンフューズはすべて同調してしまっているからラジオペンチじゃどうにもならない
アーカイブの欠落を塗り潰して初めからそ ....
待ちに待った 水無月の
風と光を 浴びるとき
独り暮しの 翁はつぶやく
我が前半生は 偶然のすがたで
我が後半生は 必然のかたちで
虚無僧すがたに なっていると
霧と緑と
夜に立つ巨樹
空と地を埋め
ひとり高く
低い曇の下
平原を
草より低い影がくぐり
最初の雨を引き寄せている
夕暮れのかけら
まとわりつく糸
....
灯りが消えた薄化粧の町に
虫の音が凛々と聴こえてくる
寝返りを打つ度にそれは消えて
いつしか枕を床に落とした
朝の気配に喉を枯らしながら
公園の蛇口を回して飲むと
次に誰が使うかも分か ....
違和感を爆破せよ
急げ
そのための根回しだ
急げ
違和感を爆破せよ
蒸し暑い雨の朝
勘と理屈と情などで
風を固めていた
違和感を爆破せよ
....
夢中になれるものがなくなっても
冷蔵庫には食料を絶やさず
ニュースで世界のことを知るなんて
大人のやることは真似できなくて
重たい身体をベッドに沈めて
波が来ないのは孤独なせいだ
それ ....
訪れるもののない中庭に
光が射しては揺れる草
縄で書かれた文字の上
固く転がる鳥たちの声
香りの白さに照らされて
夜が隅々まで見えるのに
それでも窓を閉じてしまう
見えな ....
空と海の色が同じになると
星が綺麗に見えるから好きだ
孤独な人が失くした明日を
ポケットに入れて渡せたらいい
心で感じる自由がなければ
優しくすることはできないよね
虫一匹の命が重 ....
いぃぢゃないですか
想いが 震えてゆく なんて
いぃぢゃないですか
青いゆめが 無くなる なんて
いぃぢゃないですか
とわの眠りに 近ずくなんて
いぃぢゃないですか
我が身の ....
女子社員のこえが二重にきこえた
朝から右耳に低い風の音がしていた
ちょっとした低音がきこえると
右耳がそれをしばらく拾っていた
耳鳴りだ
なんとなくいやな感じがして病院に ....
男がエデンの{ルビ欠片=ピース}をひとつ拾う
女もひとつエデンの欠片を拾う
二人は寄り添い夢を見た
悲しみも争いも飢えもない
身も心も裸のまま
愛し愛される生活を
男がまたひとつ欠片を ....
俺の無機質を食う
お前の無機質を食う
俺の無機質はスイートで
お前の無機質はデリートだ
俺は気に入らないものには手も付けないが
お前はまずいものでも残せない性分だ
ずっとそうだった ....
植えても植えても
分かれるもの
内に 内に
入り込むもの
誰かのためにと始まったのに
そこに自分は居なかったのに
小さく小さく
ひらいたもの
光を見 ....
冷たい水が流れてゆく先は
ここよりもっと暖かいところだろう
冷たい心が流れてゆく先は
ここよりもっと冷たいところだろう
名もない小さな流れに右手を浸して
青い星の温度を知 ....
新舞子の
あやなす 岸辺に
佇んで
消し果て 終えた 青白い
かげを まさぐり
ため息を 吐く
名古屋港に
出入りする 貨物船を
眺めながら
菊の花がゆるく風にゆれて、
黄色いほほえみをうかべ
この部屋にちいさな笑い声がうまれる。
ほろほろほろ、と
ちった花びらは
ベッドのよこにそろえられた
黒色のスリッパのなか ....
このさびしさは私だけのもの
私だけのさびしさに色をつけられはしないさ
人も集まれば塵になるらしい
人も流れて波になるみたいに
満員の電車には乗りたくないけど
乗らなければならない ....
人と人の間の
カキネのカベを、壊す時
遠い空で
合図の笛は鳴るだろう
利根川の{ルビ畔=ほとり}に佇み
川の流れと
人の歩く時間について
思い耽っていた
風が吹き
ふり返る僕の方へ
無数のタンポポの綿毛が秘めた笑いを響かせ
降ってきて――今日の景色は、 ....
空洞の目から
風景を吸い
真横に向く耳から
音を吸い
手も足も無く
がらんどうの体で立つヒト
薄く口を開き
遥かな命の記憶について
旅人の僕に
今にも〝何か〟言いそうだ ....
この古びた階段を登ってゆけば
あの宙空が待つだろう
*
何処までも細く真っすぐな緑色の道
私がどんな哀しみに{ルビ歪=ゆが}んでも
あの空は
この胸に結んだ
ひとすじの糸を ....
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