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昼下がりの雨の中で
ザクロが割れる
唇に指を立てて
ぼくは泥を踏んで歩く
それから 傘を振る
とても暑かった(その部屋は)
死にゆくものも
生き行くものも
ひどく暑い
後ろの席で ....
わたしの味方は誰だろうか、と
指折り数えて
早々に
ぴたりと
指は止まる
味方と信じて疑わない
あいつや
あいつが
まさか
本当のところは
敵意を抱いていまいか、と
....
それは
決して重い訳では無いが
無視できる軽さではないくらい
時計の針みたいに
三片の金属は回る
手のひらに乗るこれが、僕の心だ
「どうしようもなく君が好き」
と ....
彼らは
魔法使いとして
法王から除外されて
いたのだが
領主たちは
彼らの可能性に期待を馳せた
彼らの功績は
黄金にまごう真鍮となって
いまでも生きている
パセリ・セージ・ロ ....
底の
底から
噴き上げて来る意思は
あなたが鳴らす律動旋律と溶け合い躍動し出す
ターコイズブルーの湖を泳ぎ切り
独り立ち上がって来るあなた
叫んで叫んで叫んで
私たちは岸辺で交わり沈 ....
お金をたくさん持っていたら
幸せになれるらしい
欲しい物は何でも手に入り
苦労や不幸にはならないと言う
私はお金はないけれど
欲しい物は何でも手に入らないし
苦労はしてるけど不幸じゃない
....
むすう 雨のひとみ むすう
ひとみ むすう 雨のひとみ
カラダジュウ盗ミダシ
セカイジュウ目隠シ 死 テイル
そらしろに朱鷺は繋がれ
止めどなく開き未知は流出 {ルビ視=シ} て
縫い付 ....
手入れが欠けた裏庭には
跋扈したぺんぺん草が 王者となって
むなしいかげを ふるわせている
神楽月というのに
優雅な舞楽は 聴き取れず
沈滞した深閑だけが 満ちみちて
丘のひだにも ....
化石の森に彷徨いながら
ぼくはなにを思ったのだろう
いい加減な雑物を背負いながら
純粋は消されていった
出血の止まらない左腕は
包帯で巻かれ
医者をさがしていた
何処まで歩いてみるけ ....
気が付くと孤独が
助手席に腰掛け
こちらを見て微笑んでいた
やぁ
孤独は言った
僕は
どうも
と会釈した
それから
孤独は良く快活に喋るし
時に ....
神が六日間でこの世を創り
母が十月十日で僕を創った
僕はこの世に産まれ
きっと謳歌する
感情
感覚
色
味
匂い
世界
この世の総て
やがて絶対母が死に
多分きっと ....
真白になった
彼女の肌の小川に流れる純粋
くるくるまわった
私には得ることのない美しさ
美しさって
死を内包しているような
気がする
可愛さに絶望
美しさに絶望
比較的後者の方が ....
ひょい、と
おまえを肩に乗せると
よりいっそう
にぎやかな
居間になる
わたしには
さほど高くない
いつも通りの目線だが
おまえにとっては
宇宙ほどの
高みであるのかも ....
ミシッ と鳴って
雪、軋む
ギクッ として
飛び起きる
「まずい、雪崩だ!」
誰もいない
〇
4Fのベランダに出れば、
碧天に一筋の白雲
冷気が僕をヒンヤリ包 ....
目が口ほどにモノを言う人たちに囲まれて
君の視線のフィラメントが闇のように漂う
人見知りがひとり 見知らぬ人たちと
待合室でチェスの駒みたいに包囲され
遠くから黙々と頭を打つ冷たい秒針は亡霊だ ....
生まれた哀しみを与えてくれた
おかあさん
ぼくはいずれ死の苦しみを味わなければならない
なぜ、生まれたことを祝うのだろう
生まれたことは死に繋がるのだから
できることなら
意識のな ....
なぜ猫は愛されるのか?
それは何度も何度も進化したから
なぜ人は憎みあうのか?
それは何度も何度も進化したから
人間は猫と違い
憎みあう程度には
進化しているが
愛さ ....
よちよち歩きで
私がいなきゃ
すぐ泣きじゃくってた
心が
ときどき
足の裏へ逃げこむ
歩くたび
きしり きしりと
痛む
つま先まで
しびれさせてよ
私の心を
呼んで ....
ぼくは錬金術師のように
黄金を創ろうと必死になっていた
銅に銀と錫に亜鉛を混ぜて
ローズマリー・パセリ・タイム・セージを加え
そして 少量の胡椒とカルダモン
青い炎で炙れば
黄金色の合 ....
晩秋の黄昏に
チェロの響きが肩に渦巻いて
痩せた胸を抱き包む
明日の朝は
この曲を聴きながら
ベーコンエッグとトーストにイチゴジャム
そして濃いめの珈琲を啜る
そのバロックは
....
道々拾うそれらはどれも
純度の高い結晶だから
とても効き、沁みる
わたしは決定的にまだ、
持っている 家路 を{ルビ長靴=ちょうか}で踏みしめる
たどり着いて(そして孕む、卵のかたち)
ど ....
躊躇なく雨が降って やがて くすんだ時間がゆっくりと流れさって
衝動的に目を覚ました朝と 夢 見つけることもむつかしかった歌声の
流れ (流転 (流転 (流転
わたしたちの多く ....
宇宙にある
一つの場所、一つの時間
流星は覚えている
巨視の瞳孔を開き
微視に解体される運動と感情を
私はあなたの記憶
機能化された一つの個体
朝、目覚め
夜、眠るまで
....
白い手先が折り畳んだ黒い風呂敷
角をピチリと揃えてたいそう丁寧に
ポタリと落ちた涙に星辰と名付ける
添い遂げようと恋情を抱いたおとこの
亡骸がひどく軽く腕に抱かれた
丑三つ時にただ月 ....
魂の境を越えた交わりだった
わたしたちは一羽の大きな鳥になって
暁に輝く大河の遥か上空を
風を切り 大きく弧を描きながら
深く埋もれたまま錆びて膨れた散弾
思考に敷かれた玩具の電車の閉鎖回路 ....
もう二度と歌は歌わない
そう決めたのは
合唱コンクールの練習の時
隣の子がクスッと笑ったから
以来本当に僕は歌を歌わなかった
音楽の時間は口パクで通したし
歌のテストの日はズル休みをした
....
肉体だけが失われた
魂だけになった人々のすむ世界は
遠くて
案外近い、のではないか
たとえば
風の吹いてくる方角に向かい立ち
乾いてゆく眼球の映す景色が
そのまばたきのたびに
一枚 ....
邪悪な自分が
恐ろしい
闇に埋もれた暮らしがイヤで
太陽の下に
憧れたのに
普通がいいって
普通を選び
普通だなって がっかりしてる
行きたい場所がある
フェンスの多分向こう
標識は黄色か赤
越えてはいけない場所だった
死んだトモダチが
みんなそこにいて
おまえもか
って笑ってる
警告はみんな受けた
でもみんな境界 ....
一等星か
人工衛星か
わからないから
嫌なんだ
この時代は
虚像が眩しすぎて
たどり着きたい未来を間違える
俺達は
まるで
月に向かって飛ぶ
命知らずの虫みたい
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