すべてのおすすめ
亡き母に買ったワインをひとりで飲んで寝る
生の私を丸飲みにしてはいけません
春の潮の中でふやけて
米酢の中で骨も軟化し
渦巻く流れに皮膚もすり減って
卵のように丸く滑らかになっていても
どこかに人を呪う棘を隠しているのです
胃に刺 ....
向かい風は願ったり叶ったり
よく上がるぞ
追い風なんて当てにするな
向かい風を受け止め
駈け上がれ
多少の雨なんか放っておけ
雨雲は低いんだ
すぐに突き抜けるさ
雨粒を弾き飛ば ....
星を食べた少女は
嘘ばかりついていたから
みんなから仲間はずれにされていた
私の涙はどんな花も空色に変える、とか
私のくしゃみは太陽をほんのすこし
地球から遠ざけることができる、とか
....
団地の狭い庭に桃を植えて
安くて新鮮な桃を食べようなどと
欲を張ったのだが
日当たりは良くないので
おいしい実がなったかどうか
それも分からないまま…
たっぷりの肥料と
水やりをし ....
飴を取るときはひとつ
飴を頂くと手のひらにふたつある
言葉の意味を調べてひとつ知る
誰かと話をしていると
いつの間にか言葉の意味をふたつ知る
買い物帰りに今川焼きを買うときは
ひと ....
まだ見ぬ不安に
コントロールされる
動悸
圧迫
冷静
死ぬのがこわい
死ぬときはひとりだ
外灯にみどりが鮮やかだ
バスとすれ違う
夏の夜がにじ ....
ああ神よ どうか
四十五パーセントくらいの誤解をお与えください
少なくても三十五 三十は行き過ぎです
勝手な想像と思い込みで
悩んだり喜んだり
怒ったり主張したり
素敵な誤解を捧げあって
....
おお、おお
やってくれるとは思っていたが
ここまでとは思わなかったぜ、安倍ちゃん
いかすぜ
鳥肌ものだぜ
憲法の解釈変更で集団的自衛権を行使しようとする
噴飯のお坊ちゃま
だって、僕 ....
慈愛の糸でできた繭のような部屋は、安心だ。
管制塔のように 耳の中の音を分析する。
母の補聴器の購入のために 街にでた
街は祭り日。
耳の不自由な母と 私の世界は どれだけちがうのか
....
あの信号が変わる前に渡れたら
きっと うまくいく
ありふれた願を懸けた
決して走ってはならない
ありふれたルールを課した
早歩きがどんどん早くなる
早歩 ....
父の手をさする
硬く曲がったままの指を
一本ずつひろげ
滞ったものが
少しずつ流れていくように
強張ったものが
僅かにほぐれていくように
節くれだった
頑丈な父の手
鍬を ....
何も隠せない快晴の或る日
昼でも夜でもない街の中を
わたしは 俯いて歩く
恐れられる吠えない犬のように そして
世界の綻びを拾い上げ 何もない空を見上げる
機械仕掛の戦略を支持 ....
仕事でヘマをして、凹んで帰った。
さっさと布団を被って、寝た。
早朝にぱっちり目が覚めた。
おもむろに立ち上がった僕は、外に出た。
西に沈むでっかい満月に
思わず、足を止めた。
....
私は知っていました
あの林檎に毒が入っていたことを。
隣国の王子様が
私を見つめていたことを。
私は知りながら食べました。
毒の入った赤い林檎を。
倒れた私に王子様が
キスをくれ ....
再び
二つに裂かれた心を癒すのは
まぼろしでないよ
嘆くでないさ
僕たちが置かれたこの場所は
再び再生するに適している
遠い宇宙は頭の上
叫び声は腹の中
足の下には冷えた墓
....
異臭のする道に耳の長いネズミ
齧歯類は常に齧る。はを減らさなければ、死ぬまで、歯が伸びて行く。
猫は爪を研ぐ。爪の鞘を引き離す。死ぬまで、爪が伸びて行く。
人間は自惚れる。いろいろ挫 ....
おしるしが来てから二日後
夜、下っ腹に引きつる痛みがあった
陣痛 前駆陣痛か はたまた胎盤が剥がれてしまったのか
ネットで調べる仰向けの オロオロ妊婦
これは我慢できる痛みだから 陣痛 ....
なんとなくせかされる気持を
落ち着かせようと
傘を開くように
立ち上がる
肩から力を抜き
仙骨を立て
腹から息を出し
前を視ると
スクリーンが
ワイドになる
混雑する電車を ....
蹴破る足はないが
閉された扉の前で待つ気もない
おれ自身が監獄
だから言葉は旅人だ
去り行く背中に
翼など無く
タダノモジノラレツ蟲は
預言の首飾りの哀歌 ....
海の匂いがする風が
過ぎていく時に
光と
圧と
匂いと
音で
描く
飛ぶ
鳥は
海風に向かい
まるで静止しているように飛ぶ
鳥は
生きる ....
青い時を濡らすように
赤い空を泣かすように
白い風を脅かすように
黒い光をなだめるように
(梅雨の雫が一滴また一滴)
ベランダの樋からの滴りを
老いたおひとりさまは ....
何も失うことなく
すべてを放棄するには
消えるだけでいい
だけど、すべてをこの胸に
留めおくことは
どうしてだか、こんなにも難しい
過ぎ去っていくこの春を
刻みこむようにイメージする ....
金属製の留め金は
時折きしむ
わたしを
ここに
留めておくもの
家族とか
四季咲きの薔薇だとか
増えていくばかりの本棚とか
愛すべきものたちばかりなのに
長雨のあと
造成地 ....
存在の寂しさに耐えきれなくなった時、人の温もりを求めるのか。
存在の優しさに泣きたくなった時、人の許しを求めるのか。
たとえば
A集落のaが
B集落のbを殺したとする
bの子b'が大人になって
aの責任を問うた時
aがこう言ったとしたら
どうだろう
当時は力のある集落の者が
力のない集落の者を殺す ....
足跡を捨てながら
帰り途を急ぐ
その歩数と
掛け算するように
夜の密度が
濃くなっていく
粘度を増して
重く絡みつきはじめた
暗闇の
後ろ姿だけしか
もう見えない
姿の見 ....
〈雨天から降ってくる雨という憂鬱〉
世界が世界一つ分狭まると雨が人々の庭に侵入してくる。
人は歩けない以上に歌が歌えない。
声は口に達する前に雨によって沈められてしまう。
電車が遠くを走ってい ....
僕は散歩でよく会う
その人の名前を知らない
顔見知りなので
すれ違えば挨拶ぐらいはする
でもその人の名前は知らないのだ
僕は15歳の初夏に
初めて見た絵に描かれている
その物 ....
まだ眠っていたいのに起きる朝
飲みたくもないコーヒーを飲む朝食
やりたくもないことをこなす昼
たいして美味しくもない昼食
クタクタになりながら作る夕飯
早く眠りた ....
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