昔から奇跡は実在していて
いまも目の前に当たり前のように続いている
だからここにいると
奇跡は懐かしい顔をして在る
私は慌てて感じとる
それを真剣白刃でかき集める
....
酔い覚めの夜は
歩道橋に佇み
優しい風に身を{ルビ晒=さら}す
アスファルトの白い{ルビ梯子=はしご}から
仄明るい駅の入口へ
吸い込まれゆく
人々
アルコールが少々体内を
回 ....
{引用=どうかあなたという揺るぎない現実に対して
絵空事のような恋情を描くわたしを許して下さい
これらの時代錯誤で大げさな言い回しは
詩人気取りの馬鹿な田舎者がそれでも言葉だけ
精一杯めかし込 ....
生まれ持ったもの 遺伝だろうか
あるいは環境 日陰育ちなのか
わたしの扱い方が悪かったのか
つい荒々しく掴み 力任せに――
その瑞々しさとは裏腹 なんという辛口!
泣いているのは わ ....
がらんどう
でなけりゃ鳴らない
灯りはいらない
隙間から射し込む程度
《{ルビ外面=そとづら}はいつだって焼かれているさ
がらんどうで
鳴かねばなるまい
万華鏡を回す要領
青白 ....
弱いのに
強いふりして、生きるから
しんみり…歩く
夜の散歩道
誰もいない公園で
のっぽの電灯に照らされて
ブランコに揺られる
独りの影
大人になった心の中にいる
小さな子供 ....
孤独
さみしさ
なみだに濡れ
生まれる詩がある
試練
つらさ
苦悩の果て
生まれる詩がある
歓喜
よろこび
感謝と共に
生まれる詩がある
喪失
かなしみ
暗闇の ....
透明な何かがかすめた
それで十分
脳は甘く縺れる痛みの追い付けない衝撃に
砕かれ 失われ
死に物狂いで光を掴もうと
欠片たちは
凍結されることを望みながら
永久に解読不能
時間の延滞の ....
発車ベルが鳴る
僕は旅の終わりを迎えようとしている
見たい景色が見えるかも知れない
そう思って始めた旅だけど
見たい景色は見えただろうか
それは誰にもわからない
ただ、今わかってい ....
静けさ
ちょこんと
夜底に
座っていた
剥き出しの界、像なき界
それは決して混沌ではなく
何かを伝え何かを造形している
響き木霊し無限の力の生動する
もう一つの界、 ....
生きるとは
自らに内蔵された
ギアを、入れること
怯える白い犬
まるで私のようだ
ふるえる ふるえる
ふるえる
その瞳は弱弱しく
宙を見つめ
嵐に立ち向かうことはできない
古傷を抱えたままでは
戦うことはできない
ただ息を潜めて眠る ....
淡い知覚の海に
ふと あたたかな弾力
戸惑いながらも知らぬ間に
綻んで往く 原初の蕾
声音と面差しは波のよう
外から内へ 内から外へ
柔らかい殻を脈動させながら
会得して往く ....
ぬっとり湿った夜の膜を
そっとふたつの指で広げれば
胸を裂くような光のしたを
あたたかさ、なさけなさの影が歩いていた
カーブミラーの歪みのなかの
少しだけ正しい領域を
裸足で歩くわたし ....
いくつもの門を通り
いくつもの問を越え
理解と誤解をなだらかに重ねては
綴り合わせる 欲望の道すがら
まるで古い雑誌の切り抜きや色紙を
ぺらぺら捲るような 陽気な悲しみ
目深に被り直して
....
ゆらり
ゆらめき消えてゆく
あれは幻だ
人生も過ぎてしまえば
ゆめまぼろし
ゆらり
ゆらりと揺らめいて
消えてゆく
朝生まれ
夜は死んで逝く
カゲロウ
一日一生
....
冷蔵庫をいつもの如く勝手に開け
これおいしー?とコンソメキューブを持って聞く
これはそのまま食べられないよと言っても
好奇心の悪質は止まるはずがない
ダメダメダメダメ!
カンシャク
....
あなたを中心に地球なんか回させない!
親の意地である
子が中心に宇宙さえ回る
振り回されてたまるか!
あなたを中心に地球なんか回させない!
よく乾いた洗濯物をたた ....
石楠花を右に折れ
道なりに進むと
大きな手で盛ったように花の咲く庭がある
かつて愛した日々が
遠くなるごとに輝きを増して
いまではもうかたちを捉えることもできない
それから ....
ところどころ染みがあったり
生活のほつれを永遠に修復の終わらない遺跡のように身体に
こびりつけたまま時に非日常の夢を見る
晴れときどき詩人みたいな気がする日には
あえて蛙の被り物を棄てて芋 ....
「覚めない夢もいつかは覚める
闇の深みにスポットライト
行き来するたび変身する
――あなた
咬み合うヒュドラのよう
分裂と統合の具象化
象徴としての女神よ
純・錯覚 恋は
中空の象 ....
生きていくことの
ぬかるみにはまったの?
それで そこから
君の繊細な驚きに充ちた
生き生きとした漆黒の瞳は
何処まで持ち堪たえられるかな?
欺瞞に充ちたこの社会で
只忙しく生命が消 ....
夜明けにだけ
列車の着く駅があるという
そこでは誰も降りないが
そこから誰か乗りこむという
言葉は置いてゆくという
言葉にはできないものを
探しにでかけるところだという
あたらしいものは ....
優しく 優しく 優しくしたいのに ごめんね
電話の相手は不具合で私の灯火の余裕が吹き消されそう
テーブルの横でつかまり立ちを口を尖がらせて練習する弟
そしてやがて3歳になるお兄ちゃん ....
貴女は秋のあの日、
夜明け前の碧い天蓋に
独り揺らめき身を投げた
硬く冷たい肉体を現に残し
何処までも独り遠く逃れ去り
貴女という魂は私の中で生き
私という魂は貴女の中で生き
何度と ....
朝よ
朝露よ
異国の万華鏡よ
熟しきった永遠よ
露は葉を忘れ気化せよ
昼は夜は六月に無窮
を土中で悟れ
なみだは泉川を遡り
辿り着いた源泉
に致死量のヒ素を
さて枯れたふるさと
....
コンパスのように立て
最初から最後まで
近寄ることも遠ざかることもない
己の中心に
想いは帆のように憧れを孕み
どこまでも出歩くだろう
コンパスのように立て
滾る情熱は千切れるほ ....
夕方ふと足を止めた
流れ去る風は何処へと向かうのか
気付いたらここまで来ていた
借り物の身体 何処まで行けるかな
明くる朝ふと息を止めた
細胞は許してはくれなかった
何だか胸が苦しく ....
貴方が他の誰かを求めたりしないように
その腕を切り落としてしまいましょう
もう二度と何処かへ逃げてしまわないよう
その足を切り落としてしまいましょう
私のことを考えるだけなら
首から ....
滝壺の
ひんやりとした雰囲気が好きだ
那智の滝
赤目の滝
一人でも家族でも
友人とも
訪ねた
雪が降るような冬に
滝をみた記憶はないが
秋の紅葉の中
赤に包まれて水の
はじけてゆ ....
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