よろこび かなしみ
おりなしながら
なにかを信じ
生きて行こう
つまずいては倒れ
よろめき
嘆いても
あしたを見つめ
いのち果てるまで
生きて行こう
淋しくても
....
曼珠沙華っていう東西南北に開けた世界を
今年は真っ直ぐに見つめていた春夏秋冬の
第三惑星に彼岸の舞台から地面に刺さって
来る
200歳の少女にしか見えないだとか
マングローブのよ ....
音楽が辺りを小刻みに震わせる時
からだが先に踊り出す人
静かなうねり 心地よい慣性
グラスの中のブランデーのように
心は 甘く揺らめいて
音楽が辺りを小刻みに震わせる時
暗い片隅に ....
笑い声は好きじゃない
怒鳴り声も号泣も
演説も告発も
講壇やテーブルをガンガン叩くのも
古い写真の笑った顔が好きだ
どこかの いつかの 誰かさん
笑い声は好きじゃない
だけど幼子 ....
窓ガラスの向こう側
ことばにもならない
届かない 届けられない想い
潤んで たえきれず 幾筋も
雨は伝う
窓ガラスの向こう側
すぐそこに 見えながら
越えられず 力尽きて
くずお ....
静寂は ひとしずくの海
見つけたときに失くした
永い 一瞬への気づき
目覚めの夢の面立ちのよう
雨と風のかすみ網
囚われていつまでも
九月はつめたい考えごと
ひとつの確固 ....
ある日
詩人の詩を読んで
自分は詩人であると知る
ある日
詩人の詩を読んで
自分は詩人ではないと知る
ある日
同じひとりの人が
そんなふり幅で
弦も響いて
からっぽだから余計に ....
尊い場所にはふつうのひとびとが沢山いた
そこは緑と和が充実していて
巨大な茶室のようであり
森林もある平べったい庭園のようでもあった
ぼくらは散歩していた
池を模しただだ ....
骨から 時は 流れ
燃えるように 影もなく
匂いはないが 音はして
もの皆しめし合わせたように
口をつぐむ
秒針だけが雄弁な代行人を装った
あの 内耳に包まれる かつて
なにかの一部だっ ....
月までは案外近い
いつか行き来できる日もくるかも、と
あなたはいうけれど
それが明日ではないことくらい
知っている
人は間に合わない時間が在ることを知っていて
間に合う時間だけを生きてゆく ....
猫といつしよにすはつて
落ち葉がものすごいいきおひで
木にもどつていくのをみてゐました
世界がどんどんまき戻されて
文明がはじまるまえの
澄みわたつたあをぞらにもどりまし ....
木々が襟を立てて拒む間
風は歌わない
先を案じてざわざわと
意味のないお喋りを始めるのは木
いつしか言葉も枯れ果てて
幻のように消えてしまう
すっかり裸になると
しなやかに 風は切られて ....
落日 悲しみ
盲目 真っ暗闇
充血した満月 不穏に包まれる
白い頬 浮かび上がる
それは獣の呟き
孤独
嫌われ者が背中を丸め眠る
閃光
現実から覚め ....
隙間だらけのノイズに
剥き出されていく
骨も皮も肉も内蔵も
全て剥き出され
神経だけになる
鏡の神経だ
隙間だらけのノイズに
内も外も映し出し
シェイクさせる
鏡の神経だ
魂の ....
いつの間にか空気が軽くなり
空も星もそれもまた然り
季節の変わり目は人の心もうつろいやすいけど
あぜ道に咲いた彼岸花の赤がやたらと
まぶしくて
君が残したものはとても多くて
私一人では ....
白い羽根のような雲がゆっくりとほどけ
ひとつの比喩が影を失う
意味からやっと自由になった娘らを
解釈は再び鍵をかけ閉じ込めようとする
ああ自己愛
鏡の中にしか咲かない薔薇よ
瑞々し ....
うちの猫はもうすぐ十二歳になる
この二、三年 もう駄目だと思う時が
何度もあったので
いつ死んでも不思議ではないだろう
祖母は施設にいるが、もう九十五歳で
いつ知らせが来てもおかしくない
....
影かすめ
ふり返り だれも
――夏よ
荒ぶる生の飽食に晒された{ルビ石女=うまずめ}よ
あの高く流れる河を渡る前に
刺せ わたしを
最後に残った一片の閃光をいま
仰向けに ....
空の城址、たてがらの
緑照り映え、草いきれ
この八月の末に吸い込めば
穢土の悪臭、一度ならず二度、三度
襲い来るのは必定にしても
透明な緑の叡智の詩想の許に
たてがらの空の城を現にせんと
....
わたし、今、白い海に
翼が羽が白いそれが敷き詰められたそこに
裸足の足をのせて
乾いた柔らかな足先の敏感なそれ指の間に
柔らかな羽がやわやわとまとう 柔らかく沈む わたしの足の指の重みで
わ ....
光りが照らされる白い葉に
運命の蒼い一筋の水が滴る
鼓動は動きを忘却し
風が南に向かって吹き始める
私は沈む
私は沈みゆく
底に溜まった感情は
肉を膠着させ
出口を求めて彷徨う
....
充血した虚無
断層に突き刺さった骨
陽は傾き
死者達の視線が
白壁に乱舞する
茜の色を
遠い目で見ている
俺の傷みは血を噴き
今宵
こころゆれる
月を鏡にうつし
ひとみをとじる
なみだ
ひとしずく零れる
ながれる
ながれてゆく
星のうずにとける
ささげる祈り
ゆらゆらと天に
しらとり ....
まだ強い日差しを俯く花のように
白い帽子で受けながら
歩道の向こう
小柄な婦人が歩いている
ゆれるバッグの中で
小さな鈴が歌っている
{引用=――しゃらん しゃららん}
たったひとりの{ ....
夜は窓を踏み
窓は夜に座す
がたがたと
風のふりをする亡者
記憶は波の上に居る
はばたきとくちづけをまちがえる
羽のような蜘蛛の巣があり
風を抄い 揺れつづけ ....
私は手紙を綴っている
今日の日が
二度と無いことを知らずに
あなたの顔の面影を浮かべ
手にしたペンを、余白に落とす
おもいの…高ぶりに
自ずとペンは動き出し
無我の歩調は便箋を往 ....
{ルビ蛇=わたし}は脱皮した
相変わらず{ルビ蛇=わたし}のままだったが
少しだけ清々しい
肌感覚で世界を捉えている
かつて外界と接し敏感に反応した
主観的感覚と一体だったものが
....
シスターが列をなしている
荘厳なる響き
主張低音のなかに響きわたる
苦しみもだえのなかの祈り
ロザリオのゆれ
光をはなち
ぼくは家に帰って聖書を開いた
内臓がふるえた
性的快楽がのって ....
幻を見ている私
あの花も
空も 鳥も
実体のないもの
一期一会の風景の中
佇んでいる私も幻
夢のまた夢
一瞬の輝きを見せる
季節たち
移ろい行きて
消えてゆく
まるで ....
最初とりとめもなく
かわいた歩道にうずくまる影を
そっと押さえただけ
絵本の中の魚を捉えた
子猫の白い前足のように
半眼で
光の粒の粗い朝だった
明けきらぬ森の外れ
木漏れる光にふ ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77