ごつごつとふしくれだっていくものが
望む形に程遠く
お前を育てていくのだとしても
遠く海を越え吹き渡る風に
しなやかな枝を延べたい願いがある
ただ
あどけなさにいた季節
純白と翡翠の子守唄
濡れた温度が優しくて
秘密の杜で
穏やかだった
毒の甘さを知らぬ頃
未通女に柘榴を差し出したのは
楽園の蛇だったのだろうか、未知 ....
むすう 雨のひとみ むすう
ひとみ むすう 雨のひとみ
カラダジュウ盗ミダシ
セカイジュウ目隠シ 死 テイル
そらしろに朱鷺は繋がれ
止めどなく開き未知は流出 {ルビ視=シ} て
縫い付 ....
あなたの息づかい
あなたの体温
ほんとはね、わたし、それだけで生きていけるの
目が口ほどにモノを言う人たちに囲まれて
君の視線のフィラメントが闇のように漂う
人見知りがひとり 見知らぬ人たちと
待合室でチェスの駒みたいに包囲され
遠くから黙々と頭を打つ冷たい秒針は亡霊だ ....
たいせつをさがしている
大袈裟でもなく控えすぎず弾力をもつもの
空は低いが僕の中にそれをおしあげる力があるだろうか
誰も風化しない星々も変化しないのではちょっと困るのだ
粘土のように塑 ....
夜が明けたら
真っ白の世界
魔法使いが杖をひとふり
呪文を唱えた
犬は喜び 庭駆けまわり
猫のあたしも
心躍る
歩道橋ですれ違う子どもはみんな
いつもよりはしゃいで見える
い ....
晩秋の黄昏に
チェロの響きが肩に渦巻いて
痩せた胸を抱き包む
明日の朝は
この曲を聴きながら
ベーコンエッグとトーストにイチゴジャム
そして濃いめの珈琲を啜る
そのバロックは
....
魂の境を越えた交わりだった
わたしたちは一羽の大きな鳥になって
暁に輝く大河の遥か上空を
風を切り 大きく弧を描きながら
深く埋もれたまま錆びて膨れた散弾
思考に敷かれた玩具の電車の閉鎖回路 ....
もう二度と歌は歌わない
そう決めたのは
合唱コンクールの練習の時
隣の子がクスッと笑ったから
以来本当に僕は歌を歌わなかった
音楽の時間は口パクで通したし
歌のテストの日はズル休みをした
....
狡猾であり
幼稚でもある
すべては悲しく美しい
そう
狡猾であり
幼稚なのだ
幾日も
幾年もかけて
日が沈む
その終末の真っ赤な空を
眺めては小さな飴を頬張るように
感慨に ....
秋と冬の境目の
限りなく冬に寄り添う秋だから
ならべてみたくもなる
あったかいものをしこたまに
{ルビ炬燵=こたつ} 湯たんぽ 綿入れ{ルビ袢纏=はんてん}
焼き芋 甘酒 鍋料理
{ルビ熱 ....
精神科で診察を待っていると
世界の涯てまで来ちまったなぁと思う
しゃがんで煙草を吸う少女
無気力な眼で空を見つめるおばさん
この風景の中に私もいる
悲しんでも悲しんでも
時間はもとに戻 ....
「自分に味方しないものは敵だ」
という考え方と
「自分に敵対しないものは味方だ」
という考え方は
同じようでいて ずいぶん違う
生まれつきの敵も味方もいやしない
パレスチナ ....
渇いた落ち葉を踏んで歩いた
湿ったアスファルトに
暗い空から
時折雪がこぼれてきた
かじかんだ手で傘の柄を握り
歩いたことのない道を選んで
なるべく迷子になるように
帰る方角 ....
晩秋の頃
血を吐くように
楓は赫く染まる
握り拳ほどの肉塊
女は躯に楓を孕んだ
命の蘇生
輪廻転生する魂
春になれば
....
生真面目マジマジ子
神経質なマジ マジ子
私はマジ子
少し疲れたマジマジ子
生真面目に合わない世の中を
怒って泣いて消化する
怒って泣いてを繰り返し
今に至るマジ マジ子 ....
新聞の死亡欄に小さく載りたい
葬儀の予定など一切無しで
ほんの数えるほどの文字
ひとつの死 ひとつの終わり
シンプルで飾りのない
わたしの死 わたしの終わり
事実だけが落ちている
....
女優は人生を生きている
大衆の眼に晒されながら
その矛盾を解消することもできずに
私は人生を生きている
この世界の広さに
耐えることもできずに
死を覚悟した者にしか
それは解消で ....
くもりなきまなこで世界を見たい
その美しさに眼はつぶれるだろうか
その醜さに眼はつぶれるだろうか
せめて死ぬ時は
私の心と体が
光に包まれることを
祈る
月は満面の白い笑み ピリッとして
私の耳 桜色でしょう
このままいつまでも夜道を辿って行きたい
ふたりの息が白く 交じり合う
それだって 初めてだから
私は精一杯 お人形のようにいい顔して ....
草影の虫の音 止み
静けさ 日に増す 夜の冷え
夜に落ち葉 風
かさかさと地面を擦り
見上げれば
オリオン座 澄んでいる
澄んでいる 訪れる
今年は特に
季節の周り 時の流れ
早い ....
誰かを磔にしたまま錨は静かに沈む
泥めく夢の奥深く月の眼裏火星の臓腑まで
黒々と千切られた花嫁が吹かぬ風に嬲られる
カモメたちは歓喜と嘆きをただ一節で歌った
私刑による死刑のための詩形おま ....
今日はこのフレームを手に入れたので
このフレームの中で展開を期待しようと思う
秋惜しむ
ホルモンの悪戯に付き合って月が仲裁入ってくる
認知症を恐れて食べたものを思い出す訓練をし ....
銀杏の葉が落ちる
一葉 また一葉
かすかな気配がする(するはずだ)
木との繋がりを絶たれる
そっと地に触れ横たわる
――オト
わたしには聞き分ける耳もなく
世界は喧噪に満ちていた
....
報いを受けたからって
赦されるとは限らない
だけど赦してやる
赦してやるよ
自分も
お前らも
この傷の痛みと共に
赦してやるよ
赦す以外に
一歩もはじめることができないから
赦して ....
祈るようにサイコロを振る
嫌な予感は的中した
すでにホテルの建った銀座 わたしの靴は落ちた
このままでは残りの土地を売却しても破産してしまう
なんとか逃れたくて 頭が高速回転を始める
....
こどものころ
うそをつくときドキドキした
あいての顔をみられなかった
今は簡単に嘘がつける
安心して話しができる
ほんとうのことは
真っ白な綿につつんで
大きな木の根っこにうめる ....
大脳を満たした構造物の流れが
彼の微弱な心音を乗せて
樹々の隙間を貫きながら
空に消えてゆく
硬く焼き締められた鋼のような
銀鱗を纏う龍は
天を突いてゆく
凍り付いた旋律は
涙 ....
軽トラックの
荷台から
あふれんばかりの、かや
山盛りということはこういうことだ
現役で農作業をされている人が
こんなにも近くにいるということが
無性に嬉しい
今朝スーパーで見かけた車の ....
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