嘘を吐く時に髪を触る癖は相変わらず治らないのね
私が気付いていないとでも思っているのかしら
誰にでも優しく接する貴方だから好きになったけど
今ではその優しさが私を傷付けているってこと

言い ....
曇り空を見ていた
コンビニのベンチで
缶コーヒーを飲みながら

部屋に篭っていると
自らの身体の痛みに
意識が集中してしまうから

近所のコンビニのベンチで
ずっと空を見て座っていた ....
      裏庭に面した
   ガラス戸をあけると
冬のあいだ 我慢していた
   レィスのカァテンが
    待ちわびたように
 それは見事な波を創って
        (そして
   ....
静謐なエクトプラズム

吐き出してみる?

花散らしてみる?

色で描いてみる?

週末の朝のルーティン


首をかしげて笑みを浮かべる人

黒い世界からあと少しで脱出だ
 ....
なにもない
わたしのなかには
わたしがいるだけ
気だるげな猫のように
死後硬直は始まっている
小さな火種が迷い込むと
すぐに燻り 発火し 燃え上って
肉の焼ける匂い
骨が爆ぜる――生枝 ....
*エロス

熱い唇が夜に溶ける
重ねた皮膚は
殻のないぬめやかな二枚貝

弄ばれた魂が
半周遅れの月影に
しろい波濤を刻んでいる

脱ぎ捨てられた衣に
まだ残る体温が
生温い喘 ....
当たり前すぎることだから
素直に応じた
お椀に浮かべた麩のように
あなたはあなたに浸されている


――まるで 無い 
     ない みたい


家では
タツノオトシゴの溺愛
 ....
闇夜に燈る不知火

篝を模り人を誘う

新月が封印を解き

古の亡者達が甦る


骸は躯を軋ませながら

悲痛な叫び声を上げる

轟きは山を越え響き渡り

悠久の世の終わ ....
心配していることなんてきっと
うんざりするほど感じているだろうから
心配してますアピールなんてしない 
幸せを願っていることなんて
どうせ痛いほど感じているだろうから
言わないでおく
心配 ....
いつもこころに青空を

宇宙の一部を

魚眼レンズで

俯瞰してやれ

いつもこころに青空を

曇り空よりも

ずうっといい

君もそうだろ

いつもこころに青空を
 ....
――黄金が憎いのだ
魅入られ 争い奪い合う 不動の価値が
金の卵を生む鶏は腹を裂かれて殺された
その輝きが飼い主を愚かにした
鳥でも蛇でもおよそ卵には天性の美のフォルムがある
それは新たな命 ....
【人間になれなかった】
人間になれなかった
野原をひたすらつんのめり
海原を懸命に切り裂いた
だが
人間になれなかった
人間はずっと向こうにある
どこを走ったのか
どこを泳いだのか
 ....
すでに起きたのか 
これから起きることか
おまえの吐息 ひとつの形のない果実は
始まりと終わりを霧に包み
不意に揺れ 乱れても 損なわれることのない
水面の月の冷たさへ
わたしの内耳を し ....
貴方を想う 花弁の心
桃色 水色 橙色
とりどり 目一杯ふれる振り子のよう
貴方がいれば私は何にだってなれるの
願うのは 永久に続く祈り
けれども 花の命は月より短く
人知れず 散りゆく切 ....
樹木の恥じらいが小鳥の逢瀬を覆う頃
光を浴びてあなた
光を断って歩き
文字から浮き立つイメージのように
境界を越えて往く
今朝の雫にふるえながら幼さを脱いだ
蝶のように 華やぎながら
― ....
台所の窓辺に
葱だけが青々と伸びている
ほかの葉っぱたちは項垂れて
もう死にますと言わんばかり
葱だけが青く真っすぐ伸びて
葱好きではないけれど
すこし 
刻んでみたくなり 
ぱらりと ....
それはひとつの水だった
ある日流れるようにわたしに注ぎ込んだ
それはひとつの風だった
吹き過ぎてなお心を揺さぶるのは


少女は春の花を摘む
長い髪を肩に垂らし何にも乱されることもなく
 ....
温泉たまご並みだ

チュンしか言わない雀の喧嘩だ

スノードームだ

死の灰の乱反射だ

おしりが視線を放してくれないのは

即興画家のせいだ

占いみたいに水膨れて

ゆ ....
雨の幕間に耳目を伏して
乾いた水脈を手繰るように


生命の中核へ
堅い樹皮を穿つように
かつて滾り迸ったもの
跡形もなく
洞に ただ
ぬるく饐えた匂い


記憶――暗愚な夜
 ....
つぼみふくらみ
匂わずに匂うよう
結びの前にほころんで

 笑いも 
   泣きも
     つかの間の

結びの前に散りはてる
燃えてあふれるその様を
いまは小さくしまったまま
 ....
行き先のないお前の虚像
とどまることを知らない水
不器用に溢れるのを忘れて
拒絶された命の河に埋もれる

沈んだ肌を撫で
冷たい手を取り出す
無数のお前が揺らめき
苦しみと愛しさを唱う ....
桜のように咲いて桜のように散った
そう言いたいのか


生きてさえいれば何度でも桜は咲くのに
敗けても焼けても国は残り桜は咲くのに


桜花よ
秘匿のために付けられたというその名
 ....
詩よりも素敵な端正な言葉を
音律にのせて

たとえばジャニスは疎外をブルースにして
もうひとりのジャニスはこころの陰影をうたにする

ジムはロックの神になり
もうひとりのジムは瓶のなかの ....
コーヒーをかき混ぜるとスプーンが何かに触れた
すくい上げると 懐かしい腕時計
そっと指でつまんで 見る――当然死んでいると思ったが


――蘇生するような
        秒針の震え!
 ....
なだらかな丘を曲がり下る路のむこうは見えない


 {引用=突き当たり 川沿いのT字路を左折する
右手には野菜や果物を売る民家が二つ三つ軒を連ね
白壁が所々すこし剥げたカフェらしき店が一軒あ ....
三月の終わり静かに雪原を食むもの
山々はうたた寝
雲の枕に青い敷布
芽吹く前の樹木が苔のように覆っていた
――チャコールグレイに粉砂糖
それもあっという間に銀のしずく
いくつもの涙が一つの ....
 残雪に
     鴉

   なにかを咥えて木の間に消え た

 黒々と濡れた道の上
枯れ枝のような足を引きずる音がする
淡く暈した{ルビ空=から}の{ルビ天=そら}

惜しまず捨 ....
こみ上げる想いに潤むひとみのように
雪はこらえにこらえて雪のまま
朝いっぱいに流れ着いた三月のある日


外に置かれた灰皿の傍 四人の男が並び
みな壁を背にして煙草を吸っている
見知らぬ ....
ゴミ捨て場に群がるカラス
性質の悪い笑みを浮かべる人間よりは 美しい

羽根が 七色に染まる度 描く曲線は
一度 空へと舞いあがり
再び 地上に 降り注ぐ
天使の梯子のよう

細や ....
春の、ほどけた日溜まりのなかで
そよそよと吹く風の流れを、産毛に感じ
周りから、朝露で蒸れた草木の香りが漂う

ゆらゆらと、揺れる、かげろう

その、見えないところ
沢山の透けて、輪郭の ....
ヒヤシンスさんのおすすめリスト(2301)
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