ガス燈の灯る、
光の街は
地図にない
ヴィヨンの橋影が
夜の流れに
揺らめいている
街行く人も
名を伏せた仮面のまま、
濡れた石畳の道を
忙しく
通り過ぎた
裏通りの女も ....
目を伏せて話しても
心のまなざしを感じる
そんな関係でいたいね
見るものすべてに傷つくから
いつしか伏目がちになって
あなたの視線は地を這って
たくさんの蓑をまとっているよう
....
真夏のさなか
もう風は
一足先の
秋の空気を
連れて来ている
赤トンボが
悠々と飛び
稲穂は実りに
お辞儀して
浅い夜に
涼やかな虫の
声を聴く
鈴虫の独唱
リイィィ ....
夏風の朝にチューニング
渦巻く想いを宙に散らし
サマーキャンプファイアー
波打ち際で燃やし尽くして
愛という名の灰に燻る滑床の夢
鮮烈な手触り残し宿るプネウマ 、
自らを諦める ....
真の孤独が
完全なる感覚と記憶の遮断状態に於いて、
自我だけが
デリートされずに機能するという状況に於いてのみ、
成し得るように
真の自由も
自我の抹消無くして
あり ....
信号機の青 と、
群青色の空が重なって
眩暈に吊られてしまいそうになる
一日の仕事が終われば
世界の一日が始まる あさぎりの夏
また朝刊二軒分ほど残ってしまった
むろんわたしの ....
運転中
不意に現れ 目の端で捉える
蔦の絡まる建物
もう、その時期か
あの夏から
幾度 高校野球が開催されたか
懲りずに毎年
十七歳の夏に引き戻され ....
扉から漏れる光
次の扉を開けるのは怖い
本当に変化を望んでいるのだろうか
その変化は嬉しいものとは限らない
光はいいものだと思い込んでいる
生まれてからの日々しか知らない
....
人、一人
死んでも生きていても
響き続け在り続ける
終わることなき
宙の想い 只
この世でのその展開を
それぞれの個性に依って
普き光の大洋から
掴み取り追創造する
唯一の媒介項、僕 ....
黒ずんだのこぎり屋根の原野を
仲間からはぐれたネズミが
逃げ走る
ところどころ噴き上がる蒸気を
蹴散らす西風
ちぎれ雲がコーラルに染まって
解体されないままの太い煙 ....
約束の指環に手を伸ばそうとして
「ああ、そうか。もうこの指環をつける必要なないんだ」
と、気がついた。
エターナル・ブルー
の呼び名を持つその指環が大好きだった。
苛々と髪をか ....
零は零れる
存在と存在のすきまから
消滅と生成のすきまから
音も立てず零れる
零という名で囲われた
自らの内の虚無へと
絶え間なく零れる
0 0 0
0 0 ....
発車ギリギリの電車に飛び込んだ
座れたけれどだるい
夏期講習サボってどこか遊びに行きたい
そう思いながらYOASOBIを聴いている
サラリーマンのおじさんおばさんたちも
疲れた顔してスマホを ....
アボカド
ブロッコリー
椎の木
言葉
滑り落ちていく坂道
ブランコの途中
ところにより雨
ソファーで聞いてる
包丁の音
いつもの思い出話
壊れた玩具と
無くした部品
外 ....
遠くサイレンの聞こえる朝
会社の広い敷地内にある
コンビニエンスストアのごみ箱へ
がらん! 落とし込まれる
リポビタンD の空き瓶
心地よい冷気を後にして
配属先の建屋ま ....
テレビを見ながら
僕は皿洗い
君は洗濯物をたたむ
よくあるひととき
ありふれているのに
ありふれているけど
永遠に続かないことを
まだ何も起きないのに
憂いてしまう
いなくな ....
長く 長く尾を引いて
冬の光が伸びてきて
そのわずかな明るさに僕らは癒されて
あなたに会いたい
乾いた静電気のような刺激を
暖かさとともに与えてくれるあなたに
長く 長く尾を引 ....
昔、地球が372日だったころ
1日は21時間で
首長竜がのどかに樹を食んでいた
そのころ私は三葉虫で
上手に化石になる方法を考えていた
バレリーナはグラン・フェッテで地球を廻す
あ ....
あの日 僕等は
雨宿りをしていたね
突然降って来た雨から逃れて
適当な軒下に落ち着いて
肩を並べて 雨宿りをしていたね
周りでは 同じように雨宿りをしている人たちが溜息をついて
濡れた ....
晴れている
蝉も鳴かない
正午
巨きな空白 が
其処に置かれたような
静寂
その静寂には
不思議な重さがある
その無が
世界ひとつ分と
釣り合うかのような
あるいは
....
迷っていたので
さらに迷うことにした
あえて迷って
そのままずんずん歩いていった
すると 妹をあやめ
父をあやめ 母をあやめた過去が
この生き延びてきた道の上に覆いかぶさってきた
その過 ....
酸っぱいだけのレモンに
灼熱にカーヴを纏いつかせる陽の火と
溶け出したとろりと粘る濃いアカシアの蜂蜜垂らし
舌に滴り落とし
規則正しさや均一 ....
心の内しんと平静なり 、
沈み込む時間の底
あちこちで言葉投げ合う
何ものか達の声 木霊して
過去に置いて来た断絶の涯てに
支え合う宙の奥行きの只々広がり
既定の時の流れと ....
気がつけば一面の緑のなかで
途方にくれていた
どこから来て
どこへ行こうとしているのか
すでに熱を失って
剥製のように軽くなった
小鳥のむくろを
両の手に捧げている
はばたいて ....
トゲトゲが無くなるまで
話しかけよう
生きているから
いつか通じると信じて
サボテン
そばにいると癒される
トゲトゲだらけなのに
少しも嫌じゃない
サボテン
少しくらいサボろ ....
透けていくからだの
根っこのどこかで
何かが心を穿つ
目の前はかすむのです
小さな水槽の水草をちぎって
置き石の陰で横たわり
フロートガラスの壁に立ち上る
気泡をゆっ ....
「旅」にはたった一つしかない。
自分自身の中へ行くこと。
── ライナー・マリア・リルケ
宇宙人地球で蟬になってます 👽
手のひらの生命線 ....
直視できない太陽
あなたのことを思い出してる
もうこの街にも
慣れたけれど
ふいに会いたくて
気づけば手をかざし
空を見上げる
暖かくて
涙が出る
夜が来るたび
思いを指に ....
湖は光を洗い
まろい音をはじきながら
たち渡る風が青じろいまぼろしをつくる
魔法瓶の麦茶が喉を通る冷たさ
図書館の帰り、
昼どき近くの公園で
セミの鳴きに耳を傾け ....
小さな部屋の静かな関係
思い出はいろ爆ぜたまま片田舎
今ではどこもリトルトウキョウ
金太郎飴はもう要らないと
きみはふてくさり
あたらしい何かに
熱中し始めたので
古いノート ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143