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彼女はいつも小さなベランダから
校舎裏の駐車場で
憂鬱に潰されてかかっている俺を見つけては
静かに螺旋階段を下り
情熱も慰めも含まれていないキスをくれた
唇が触れた跡には淡い火傷のような感触 ....
疲れた身体を脱いで
立ち上がれたら
なんて楽だろうと思う
始まったばかりの朝は
あっという間に夜になる
何をしたのか数えていると
堕ちて行くように目が閉じる
明るい朝が来ます ....
高架線の流れに押し戻されつつもドア際へ体を寄せれば
やがて天井桟敷の建物が左手に顕れる
夜勤明けの尻ポケットには馬券の束
そして耳に挟んだ赤鉛筆
「穴場に手を突っ込んだ勝負馬券は当然に ....
チョコレートを頬張って
寝る前の歯磨きをさぼったら
真夜中に
頭がうなり始めた
甘い甘いチョコレートの逆襲だ
虐げられたカカオ豆農奴の
怨念だ
うなる頭を抱えながら
積み重ねた ....
ほね ほね ほね ほね
ほね ほね ボーン と跳びはねる。
骨はどこ?
探してみても骨折り損
おまえは骨のある奴だ
と思っていたが大間違い
見当違いの 骨抜き野郎
ほね ほね ....
所長とお客様のところですれ違うことが多くなってきた
常務のイケダは、それは社長と片山先生のまいた種だから上田くんは悪くないよ、と言ってくれた
さいきんやっぱりシバタさんが印鑑ついた発注書がない ....
学習机の上で勉強されているのは
パラジクロロベンゼン
パラジはパラダイス
クロロは苦労人
ベンゼンはベンゼン大使
みな、一様に春を待ってる
勉強しているのは
ナオミキ ....
子供の心を忘れない大人になるんだ
いつもそう 思っていた
マックで子供あつかいされるの
嫌だった
....
細い線が幾重にも重なり
光の角度で表情が変わる / カオ
カップボードの上では
....
とれたての干し柿とは何か
とりたてのめざしのようだ
とれたてのお新香とは何か
とりたてのふりかけのようだ
聖なる書改訂版には干し柿も
めざしもお新香もふりかけも
あの人が光りあ ....
{引用=
君はどこから
何を引っ張ってきたのか
そんな
顔をして
僕には
読み取れない
君の
やせた歯茎が
うれしいのか悲しいのかどうか
ま、
と ....
ふくれる。頭をかきむしる。悪くない。これは悪くない。何をしてもどこまでも許される。母さんはそう言っていた。空腹。水ばかり飲んで、血の通っていない胃袋。越えてしまう。越境。満たしたい。頂点を迎える午前 ....
ユキオは高速を高松ではなくてヨシミに向かって飛ばした
酒造メーカーの博物館で事務をしているヨシミに3時くらいに着くから早退しろと言ってみた
わかったよ、と即答で応えてくれたことにユキオは感謝した
....
少年は向かい風に負けず
自転車を漕ぐ
徒労とは思わず
ひたすら前に進む
そんな彼も吐くことを覚えた
空腹に身をよじりながら耐え
むさぼった
それでも痩せほそる身体を
重く感じながら ....
TVのニュースは
今日も残酷なものばかり
電源オフにして空を見ても
私の一日は安い物語
神様はどこにいますか
最近はお忙しいのですか
お年寄りの幸せはありますか
私もずっとず ....
春を待つ誰もの浮かれた気温の中
鉛のような重さを持って鎮座していた
深い霧の奥から一点だけを見詰める眼差し
臆病な羊たちのそれとは違う
狼の口元に漂う吐息を纏った鋭利な眼光
まるでそこだ ....
軟らかな自転車に乗って階段を下りる
ハンドルが人の手みたいに生温かく汗ばんでいる
階段の下には民家と民家に挟まるような形で
小さくて細い劇場がある
切符売場で数枚の硬貨を出すと係の ....
23時。
さてと、と男は義手を宇宙に伸ばす
するすると、それは暗黒へと伸びて行く無限梯子
スコッチのグラスを置いて、バケツをかぶると
穴だらけのおんぼろアポロで出発だ
ずっと宇宙とコンタクト ....
ちゃぷ ちゃぷ ちゃっぷん
水まくら
昭和ロマンの{ルビ色形=いろかたち}
今に伝える
水まくら
ベンガラ色の胴体に
銀色ネクタイ首に締め
お腹の水を堰き止めて
口をへの ....
二声鳥が 埋め尽くす
公園
幻は幻でなく
現実は現実でない あいまいとした 抱擁
潮曇りのような ぼんやりとした {ルビ核=コア} ― 中心
しえや、あらん
と発し ....
つい今しがたTVニュースを観始めるまえまで
いくぶん柔らかめなカールのブリーチトブロンドの女は
薄切りのハニートーストと生ハムと桃を食べていた
その唇は鮮やかに紅く、甘い蜜に濡れている
花 ....
となりのカプセルのアラームに起こされたユキオは浴場にゆき湯につかり頭を洗い全身を洗い歯を磨いて髭を剃りトイレを済ませてカプセルホテルを出た
8時まえにはメーカーに着き通勤ラッシュの正門まえに立った
....
くらやみのひかれた丘の上で
私は黙想している
近くに大きな河がある
冷たい風の向こうがわ
乳のように深くて豊かな河が
夜に寄り添うように
よこたわっている
河は今、水かさを増している ....
夕陽の傾きかけた街の一角に
何人もの成人した人間の列が歩く
皆一様に下を向き黙ったまま歩き続ける。
歩いている間は生きていられる。
立ち尽くした人間は片っ端から
列最後尾をのろのろ走って ....
{引用=
夜と昼と海が三分割された世界で
神経や筋肉や骨格のことばかり考えていた
何を考えてるのって聞かれて
沈黙するたびに擦り減っていった何かに
ぽつんと謝る、
(ごめんね い ....
黄砂か花粉かフィルター越しに太陽が鏡のように光っていた
高速を飛ばしているとなんとなく蛇のお腹のなかをゆくような感じがした
それがシバタさんと今のじぶんの関係を思いおこさせるのだった
引き継ぎの ....
僕は僕を見ている
正気ではいられない
本当に宇宙は振動する紐か?
僕は目の前にある神秘に問う
狂気に触れたくない
触れたくないのに
それはやってくる 近付いてくる
じぃっとこちらを見てい ....
書く
泳ぐ
消す
打つ
飛ぶ
読む
走る
思う
有る
死ぬ
蹴る
射る
居る
着る
似る
干る
見る
強いる
悔いる
起きる
過ぎる
恥じる
落ちる
帯び ....
頼りにならないなあ、うちは所長さんだったから任せてた部分もあるんだよ、もうこの製品の購入はきみのところではなくてほかのルートに替える、
調達のシバタさんが再度ユキオにそう告げた
メーカーからの ....
鉄道都市にある高層ビルディングのてっぺんにて
皇帝ペンギンが一羽
光ったり消えたりしている。
(蛍みたいだ)
西方から見るといくぶん寂しげな東の巨人のなかで
光る皇帝ペンギンは真夜中の迷える ....
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