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年末のおだやかな影が
笛を吹く六人の蛇つかいのようだった
蛇つかいたちが笛を吹くと
蛇たちはつぼから頭をあらわし
舌をちょろちょろさせていた
笛の音がなかったら
蛇 ....
ここに今
セミのヌケガラがあるからといって
私だと思わないでください
私はそれがないところにいます
陽ざしの中で
水の粉しぶきをあびた
綿毛の舞う先に
私はいます
私は
いま死ん ....
時間をかけて
バトンリレーのように
ぼくらは世界を開いていった
バトンふくらんでいった
ぼくらが開いた世界を
ふさいでしまうくらいに
ぼくらが開いた世界は
あれは、幻だったのか
....
眩暈がする
粒のそろった
音の洪水
言葉の洪水
音像/位相/破綻/逸脱
シームレスで繋がる
流れ/溢れつづけるメロディ
美しい旋律
降りしきるノイズ
全てを呑み込もうとするコーラス
....
あたしな ずっと言いたいことがあったんよ
だけどな おかあちゃんは背中やった
顔を見つけるまでに 後ろむいてたから
声 かけれんかった
あたしな ずっと先に言いたかったんよ
だけどな お ....
大きな夕日の線状に放射される
赤い光線の先に
黒いシルエットに変わるまばらな家並みが
山並みにより既に陰っている
表面のうねっている畑の中にあった。
その中を疾走する人影一つ
帰るので ....
{引用=
*降りしきるきみの海のまなざしが わたしの中へ流れ込めよと*
右手の小指いっぽんから
左手の人差し指いっぽんへ
さざんかのかきねを散らしていく君の振動が伝わる
....
雨が通った街路樹の
匂いを胸に吸い込んで
自分の命に響かせる
同じ命に響かせる
冬がなぞった川沿いの
倒れた花に指添えて
季節という名を染めてゆく
冬の肌に染めてゆく
生きてい ....
エシャレットを植えたのだが
ワケギと見分けがつかなくなった
どうでも
日本の食卓にあがるエシャレットは
ラッキョウに土寄せをして
軟白栽培し若採りしたものらしい
タマネギもペコロス ....
夜はもう星を睨まない
素晴らしい調和が
海のようにやってきて
空と地上とが
反転する
ここで重力が
反対になり
私たちは
みんな振り落とされるだろう
黒い宇宙が
波打つ ....
冬の風ふく日だまりは
とおい微熱の少年時代
汚れの意を知りもせず
光は淋しい洞窟だった
ああ、12年年3万人の自殺者が
記憶のように消えていったのです
それを恥じずにいられましょうか
....
父と母が男と女だった頃の年齢になった私は
父とは他人になり
母とは どんな関係になったのかな
私の中の父を見て
私に挑んでいた母だけど
天使のような姉のことを
障害者の姉の方って呼んで ....
音のしなくなった駅
外灯だけの商店街
遠くてまばらな明かり
心たちだけが他人事している
俺はいくつかの影をまとわされて
町にレントゲン写真を撮られている
彷徨のカルテ
車のなかにでも ....
始めは静々と歩み始めた恥掻きっ子は、
獣道を中腰で歩き続けて、
水のある川岸まで
キョロキョロしながらたどり着いた。
川岸の潅木は少し腐りかけていたが、
得意の木登りで川岸に張り ....
映画館の観客席で
私はサイレント映画の最終上映を観ている
スクリーンの中では
どこか大きな河の岸辺に
冬の渡り鳥が集まり
その鳥を1羽
少女が肩に乗せている
枯草と砂 ....
それは何かの予言のようで
空の七割は雲に覆われていて
甘く温かいホットミルクに
頑なな心まで溶けて
買い置きしておいたバナナは
黒い斑点だらけになり
みずみずしさを失い
しおれていた ....
人知れず錆びていく駅の鉄の柱達
開線当初の嬉々とした輝きは
今や夕暮れに溶け込んであまりにも静か
僕らを囲むすべてが知られることのない歴史を持ち寄って
今日を構築してる
遡ればほとんどの ....
こんな日もあるのだろう
まるで予定項のような
あるいは脱穀されたあとの麦のような
果てしなく無力な一日
刻み込まれたものを嫌うようにして食卓の
海老の殻をむいているとひとりでに
涙が溢 ....
母は強い人だ
私は母から生まれたのに
なぜ強くないんだろう
なぜ母がすきになれないんだろう
母は私がすきなのかな
母は私を愛してるのだろう
いつか帰った部屋に母がいたことはなかった
....
防砂林ごしに轟音がしていた
飛行機の離発着のような音だった
愛人と犯罪を完遂したあと
手をつないで夜の海岸に出た
防砂林をぬけると
轟音の正体はやはり海だった
死ぬ ....
「おじいさん こんにちは
また会いましたね」
おや あんたかい
また会ったね
「こんな坂道で
今度は何を拾ってるんですか」
おったまげたねぇ
分かるかい
....
ひとを信じるということは
コミュニケーションにおいて
もっとも大切なことのひとつだ
じぶんを信じてくれているひとを
信じないなんてもってのほかだ
願いごとを口に出して ....
1
僕はあなたに
亡霊であり
生ものであり
影であり
車であり
スプーンであり
無垢の造型であることを
求める
あなたにここにいてほしい
日々
僕は
あなたになっ ....
冷たいミルクを温めた
私はちょっと苦手だけど
こんな日にはいつもそう
あなたが暖めてくれるから
喉にゴクン、と流し込む
あなたのことを考えながら
枷のひとつやふたつ
あったっていい
どうしようもないと
歯噛みして
ひっかいて
爪たてて
ひきちぎろうと
躯を震わせ
全身で
もがいてもがいて
逃れようとして
そ ....
新月の深い闇夜はいつも
晩夏の有明海を思い出す
まだ19歳のひとり旅だった
熊本長洲港から最終間際の有明フェリーに乗船し
対岸の長崎国見の多比良港に渡った
フェリーに親しげに ....
ここだけの話
寂しそうな家の前を通ると
文字のない手紙をポストに入れる
いつも笑顔の少年が
この町にいるという
行く先々で配る手紙で
肩からかけている袋は
いつも重い
どれくら ....
ヲウスの心は壊れてゆく
白鳥になんてなりもせず
国から父から捨てられて
峠の大きな大きな木の下で
故郷を想い死んで逝く
ヲウスよヲウス
父の嫉妬に兄殺し、
それを父に疎まれて ....
「満月に吠える」
夜中眠りに就いて初めて裸を曝す
歪んだ時系列を跳ね跳び
活きた清涼水を次から次へと浴びる
そして吠える
自分の闇に悲しく浮かぶ
黄色い満月に
「手紙」
....
俺は愛人にロープを買ってこいと頼んだ
じぶんで買うのが恥ずかしかったからだ
いや、正確にいえば
恥ずかしさに耐えるストレスを回避しただけの話だ
愛人はコンドームとロープを買って
俺の部屋 ....
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