すべてのおすすめ
じょうずに結えない髪の、かきわけたその奥に、
海が広がっている
黒い底は伸びて、光を吸いこんでいる
あなたがその闇へと、手をのばしては
救おうとする影を
あてずっぽうに踏んで、遊ぶ
....
日々はバウムクーヘンを一層ずつ剥がして食べるのに似ている
同心円の中心に近付くにしたがって、綺麗に層を剥がすのが困難になる
土曜日の朝、市営のトレーニングジムに行くとジャンレノそっくり ....
夢の中に落とし物をした日の朝
猫になっていた
仕方がないので
夫を会社に送り出してから
家事は明日にしようと決め
日向ぼっこをして過ごし
夜になったので眠った
明日はせめて、猿になりたい ....
雪が散り舞う
気の遠くなる場所から
此処まで君らは降りてきた
君らが人間なら
乾杯といきたいところだ
どうやって来たんだ、
重力で来ました、
途中大変だっ ....
この季節は自分の名前が口々に交わされるので
用心しなければならない
迂闊に返事をしないように
ほいほいとついては行かないように
簡単に微笑んでしまわぬように
まんまと
好かれているなどと思 ....
一人でウォークマンを鳴らす。
賑やかな教室から逃げる。ウォークマンを引っ掴んで。
休み時間になると決まって屋上に忍び込み、赤錆びでザラついた柵の
隣に捨てられた小汚いパイプ椅子に座り、ウォークマ ....
人の筋肉や血管、関節の微細なフォルムを抽象化して、服は生まれた。服はほかにも着ている人の性格を抽象化する。気分を抽象化する。家族関係を抽象化する。ついでに着ている人の恋人まで抽象化してしまう。服はとて ....
銀の海を游いだ
波一つない静寂の一時
ボクは魚になった
灰色の曇の波に月が溺れた
ボクは心配でたまらない
深く深く飲み込まれていく
やがて月は闇にとけた
....
小説や漫画、テレビの中で
世界を救う、君。
14歳の君。
どういうわけだか、
いつだって14歳の君。
なんだって出来ると
なんにでもなれると
傲慢なほどの自信と確信をもって
どこま ....
泣きたいのに
年齢が邪魔をして泣けない
大人顔
友人の電話に
声が滲む
人はいつをもって
大人と言うのだろう
まだわからないなんて
子どもみたい
また眠れなく ....
「ねえ、良いだろ?」
何が良いんだかと思いつつ
とりあえず
あなたの左腕にしがみついてみる
押し付けた胸のふくらみに気づいたらしく
慌てふためく様子が可笑しくて
かまととだとか ....
雨の日に
傘を差して
公園まで
行った
ブランコも
滑り台も
みんな
みんな
雨に濡れていた
誰も
いない
公園は
とても
静かです
雨の音だけは
聞こえます
ラジオから録った尻切れトンボの音楽
かじりつくように何度も繰り返しを聴いていた
重低音が鳴らないスピーカーから
シャカシャカとチープな音を奏でるロックンロール
聞き取れないまま書き取 ....
物足りないじぶんでも
そこに懸けてゆくさまに
求心力が生まれるんだ
それが人生のからくりだ
あらゆる預言はただの確率論だ
物足りないじぶんでも
そこに懸けて ....
線路沿いに植えられた 山椒の枝は
突風に 飛ばされて レールの上で 待ちぼうけ
ダッフルコートを どっさり着込んだ
女子高生が 電車と揺れてる
みんな どこかへ行くっ ....
お母さんが種を蒔いた庭の土を
小さな女の子が
一生懸命踏み固めています
そんなに強く踏まなくてもいいのよ
なんて言いながら
お母さんは女の子の様子を
やさしく見守っています
やや離れた場 ....
恋愛下手
どんな過去があろうとも
どんな未来が待っていようとも
静かに受け入れたい
それが
私の選んだ恋だから
だけど
この気持ちの揺れは何?
こんなにも
悲しいのは何故なの ....
中指から菜の花
首に蒲公英を飾り
髪には白詰草の花輪
紋黄蝶が降りてくる
温かい手に引かれ
飾りを崩さないように
ゆっくり着いていく
薄手の白いセーターが
日差しにぼんやりと光る
....
曇天の雲に
仄かに薫る
白梅
眺め
その古木の苔むした幹に軽く触れると
肌寒い風に 早春の息吹
たたえて たたえて 尚たたえつつ
梅花から 溢れている
(花びらが散る ....
脳と心を切り離して考えるのは
実はおかしなことです
心理学の先生は
恋をして胸が痛いというのは
間違いだと云いました
心臓に脳はないのですから
頭を抱えるべきと
あなたがわたしに入る ....
禁忌は真っ白にほどけてゆく
きらきらと
あたりいちめんにひかる黄砂
爛れてゆく頬に
焦げ縮れてゆく髪に
明るくかがやくプルトニウムをかざろう
これで終わりなのだから
やり直すこともな ....
しっかりした冬だったから
色づきは
とびきりのやつを見せてくれるだろう
裏切ることもなく
期待に添うわけでもなく
ひとつきもしないうちに
まいにちさくらになるだろう ....
タバコから出るひと筋のけむり
換気扇に引き寄せられ ゆらゆらと昇っていく
タバコから出るひと筋のけむり
線香の煙りのように ゆらゆらと昇っていく
タバコから出るひと筋のけむり
疲れた ....
まっさらな
まっさらな
愛を 君に
そうしてそっと目を閉じるから
私が目を開くまでに
何処かにいってよ
君との約束を守ろうと
躍起になった私はどんな風に映ったのか
下らないと言 ....
伝わらないもんなんだろう
わかってる
この想いほどは
いつも君には届いていない
共感してみせて
大袈裟をさらして
....
鳥の名前を覚えることから
始めようと思うの
と、その人は言った
たとえば、つばさを一瞬たたんで飛ぶ
あの鳥の名前を覚えたら
あの鳥はもう
見知らぬ鳥ではないでしょう?
さらりと雪 ....
戦に終止符を打って
静寂の中に佇むのが好きだ
それは喜ばしい瞬間だ
恐怖は刈り取られた
燻っていた火種から出た芽も摘み取られた
残っているのはなんだろう
何が残っているのだ ....
あの人がまるきり反対方向に消えてしまう
オレンジと黄緑が交差してベルが鳴り響く
みかさのみやでんか、って思ったより言いやすい
そんなどうでも良いおしゃべりを弄んでいると
....
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乾いた冬空の下で、ぼくたちは白く太い息を吐きながら、
汗にぐっしょりとなってドッチボールに戯れていた。ぼく
はみんなであり、みんなはぼくであった。白 ....
石に花をそえる
草をなでる風がそれを愛でる
遠い記憶
時が冷える
夢はとうに凍えている
窓に朝の光
手の平で顔をおおう
指の隙間から溢れてくる光
生きよう。
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