ひるまの電車はがらがらで
まるでちがう人生みたいな顔をする
はれていて
あかるくて
がらがらで
まるで
ちがう人生に乗り込んだみたいな
わたしが
わたしだって
だれも ....
とうめい/だった
―.
透明だった、でも紛れなかった
やわらかさを感じて、温度がある事を知った
それぞれが違う形をしていて
それでも丸みを保っていた
誰か、が
誰か ....
パトカーに
うしがおわれている
なにかわるさでも
したのだろうか
いきていることが
つみであると
ついにしったのか
うしも!
君は努力してるよ
それをあたしは知っている
成果がでない努力は無駄じゃない
そんな言葉を呑み込んでいる
丸くなって君は
涙も流さず耐えている
君の努力の足跡が
さらさらと消えてゆくの ....
降りそそぐのを
右から整列させる
ぼくはもう
だんだん
目が暗くなっている
あかるいテレビから
もれる笑いごえが
喧騒が
壁をつくる
あしもとをぬらす
ぼくは
もう
だんだ ....
ネットオークションで
小さな駅を買った
小さな駅には
小さな電車しか停まらなかった
小さな電車には
家族がいっしょに乗ることができない
いつのまにか一人ずつ
だまって家を出ていった
....
空の化石を
定規で測る
本棚に
古い指紋
人がいた
人はいた
肩幅の広さに
干されたままの
下着類
飲み物のない
簡単な食事を
フォークで
唇に運ぶ
言葉への失 ....
いろいろな
乳房を
見てきました
電車の轟きと、乳房
陽炎の記憶と、乳房
世界の呻きと、乳房
愛は乳房に、向けられます
それは、愛が、温もりだからです
乳房、泣きついても善いで ....
プラスチックで出来た心臓はいつだって鏡に映らない
スニーカーの底に穴が開いていて、覗くときみが見ている
怖くて水溜りを踏めなくなった
プラスチックで出来た心臓が唸っている
引っ掻き ....
いしきもなく
からだが
せいちょうしていく
はをしげらせ
みをならせ
はなをさかせる
おかあさん
みあげるわたしは
いつまでも
あなたのこどもでした
....
熱帯植物園の温室に
雪が降り積もる
さっきまで君と話をしていた
多分、話をしていた
メリーゴーランドの馬たちが
干し草を食む
クジラが次のバス停を目指して
暗い海を航行する
....
最近はほとんどの時間を
記憶を食べて過ごす
口に含み
よく噛んで飲み込む
そして、
次の記憶を口に含む
金木犀をトイレの匂いと感じるほどに
ぼくは素直に毒されていた
ちいさなオレンジの花をあまり綺麗だとは思えないほどに
ぼくは自我に満たされていた
撒き散らされる匂いを
....
気球:話は飛んで空には気球
割れるほど冷たい色の地中海
Méditerranée : sous le ciel degagé il grêle sur la mer bleue
わたしが
波になるから
あなたは
なみうち際になって
いろんなものの
死骸が
流木のように
なめらかにうちよせる
そろそろ
語り合うのは
おしまいにして
あた ....
あさ
窓をあけると
庭が砂浜になっていた
知らない赤ん坊の小さな手から
さらさらと
砂がこぼれている
そこには昨日まで
たしかアサガオが咲いていた
そうか
もう秋だったんだ
お ....
飛沫が冷たく飛び回る、橙から深い青に変わっていくグラデーションの下で。
静かに流れ続ける。僕と彼女の存在する痕跡が、透明な潮鳴りによって覆われていく。
海へ行こう、と言ったのは ....
へやに
入りたくない
たとえばの
話をしよう
たとえば
わたしが
あなただったら
とか
空が
海だったら
とか
たとえば
あなたが
あなたじゃなかったら
と ....
わたしの雨は
昨日すべて
降ってしまいました
あんなにたくさん
両腕に抱えていたのに
傘が眠っています
夜明けの寂しい
コンクリートのように
愛しい猫が死んだ
肯定できない
否定したい
剥製にした
でも愛しい猫は帰らない
サイボーグにした
でも愛しい猫は帰らない
心にぽっかり開いた穴は
何をしても戻らない
お嬢さんは入らない
永遠に入らない
けれど僕らは
いつまでも
なわを持った腕を
まわし続ける
四十肩の痛みを堪えて
ひたすらまわし続ける
声を嗄らして叫び続ける
「お嬢さん、お入んな ....
久しぶりに東京に行く
一皮むけた東京に行く
懐かしい気持ちで行く
その懐かしさとは
煩わしさも汚濁もまだない
清浄のことを指す
久しぶりに東京に行く
....
こうあるべきだと
おもっても
からだはおもうように
なってくれない
かりものの
このからだには
いでんしがやどっている
こうあるべきだと
おもっても
いでんしはな ....
花束が枯れてしまって
あたしは沈黙を選びたかった
何もかも
崩れゆく季節が来て
きっと
だめなんだな と
あたしがあたしであるが故
うまくゆかないことが多 ....
鬼ごっこをしているうちに
本物の鬼になっていました
友達は逃げ回っている間に
立派な大人になり
一人また一人と
遊びから抜けていきました
夜は水槽の魚に
言葉を教えて過ごしま ....
朝
つめたい交わり 踏切だけで三十の詩が書けるという人は
亡霊のような突き指をする
昼
エール飛び交うマウンドで少年たちの夢を食べる獏は
消化不良で怒り目になる
夜
お菓子をどう ....
なにも言ってなかったけど
おりたたんだ夜をポッケから出して
さあこれからはひとりで生きていくんだよ
と
目は
そんなふうに
そんなふうに
記憶もだんだん
おりたたまれて
あきのくうきが
からだにしみていく
こきゅうしなくても
かぜがふいている
いなわらのにおいと
ひとつになる
ひとも
ひとではないものも
ふるさとでくらしている
....
からだがかわいて
つかえなくなった
晴れた日があれば
わたしを日なたにつれていって
骨までちゃんと
腐らせてください
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