ああ、またここから、始まる
無意識にながれる所作に
ときどき
生まれる、感覚
蛇口をいきおいよくひねり
じょうろへと水を注ぐ
そんな、とき
朝が、
おとといよりも
昨日よりも ....
さきほどから
ちりん ちりんと
私の耳に響いていたものは──(どしゃどしゃと)
あれは空一面を覆った、暗く──(それはもう)
重く、どこまでも垂れ込める──(地面はぬかるみ)
──低い雲の ....
「純粋とはこの世でひとつの病気です」
(吉原幸子詩集オンディーヌより)
吉原幸子の詩を語ろうとするとき、僕はよく「病的な」という言葉を使う。
その美し ....
あたたかい あさ
濡れた地図の上に書き込んだ名前は
滲むように、消えた
始まれない私は
いまだにまるい船の上です
警笛は
遠い雲のこと
進まずに消えるのは
あの空へ ....
ともすれば不思議な
雨だったけど
顔には暖かい斜陽を感じる
季節はずれの
天気雨がうっとりとして
雨の原石は記憶の中で
わずかにしっとりとしている
吐息よりも小さな音をたてて筒抜 ....
狂うがままに放たれた色
花びらは
その身をくるむことなく背景を抱く
自ら屈してしまいそうな首をしならせて
けれど
滑らかな曲線はこちらに向かって投げ出され
それを支えようと身 ....
手のひらの中に
そっと星を隠していたら
夜になって光りだし
銀河系宇宙であることが
ばれてしまった
それは蝶のように
よぞらをかざって ....
天動説の子どもが増えてるらしいのですが
それはまったく自然なことです
地球が回っているのだとしても朝が来るのは退屈なのですから
僕はお布団で魚になって
箱舟に乗ったかあさんとはなしをします ....
燃えるものがない
燃やすものがない
燃えようとする心だけが
かろうじて生き残ろうとするとき
ぼくの指先はペンを握りしめる
ああ白紙には危険な文字が溢れている
白紙を汚そうとするとき
....
耳元で
指に巻かれた髪が
音もなくほどかれるとき
少しの沈黙が欲しくても
あなたは
何事もなかったように話をつづけて
僕は
一語を味わうゆとりもなくて
また
その髪が
....
ムーミン谷の舞台になっているのは、森と湖の国フィンランドである。首都はヘルシンキ。国土の7割が森で占められ、約18万個の湖がある。国土面積は日本の北海道と本州、四国を合わせたくらいで、遙か北に位置する ....
「トロール」とは北欧の童話に登場する精霊のことらしい。フィンランドでも伝説的な存在で、人間を驚かせたりだましたりする、ちょっとやっかいなやつ的感じの妖精で、ムーミンもこの精霊の一種ということだ。ただ、 ....
最近ムーミンを見ることが朝の楽しみになっている。ムーミンのテレビ放送は1969年度版と1990年度版があり、今見ているムーミンは1990年リメイク版の再放送である。お馴染みのゆかいな仲間達がムーミン谷 ....
「森のゲリラ宮沢賢治」という本の中で、西成彦は、宮沢賢治の創作スタンスとして「注文」を受けると言う在り方が「キーワード」だと述べている。
前回、井上陽水の「ワカンナイ」でも、「雨ニモマケズ」の「心 ....
パチ パチ (拍手の音)
パチ/ オキテヨ
新しい世界はいつだって、制服を着てやってくる
下ろしたての制服に袖を通し
黴の匂いを嗅いだ
ボタンの悲鳴
にゅ、ぷるん にゅ、ぷるん
....
静寂が満ちるのを待つ
あなたは
広げた想像の張力に身をゆだねて
空を映す水面に静かに浮いている
手のひらをつぼみにして
ゆっくりとふくらませるとき
わずかな空間の揺らぎが
水中を ....
張りつめた風の端
やわらかい記憶の糸をほどけば
泣いてしまうかもしれない
あなたは
ほころぶ桜の薄い花びら
その散り際の光景を思い浮かべるとき
過ぎた時を惜しむ眼差しで
未来を見つめ ....
痛みを痛みとして見つめながら
あなたは眼差しを地には与えず
自分だけの痛みだと言って、
誰かに分け与えることさえしなかった
花びらは凛として
項垂れること ....
前回は、日本と韓国 と題したクセに、
韓国の話ばっかりになってしまった。
今の時点で二年半、今年の九月で3年目を迎える海外生活。
しかもずっとボストンの田舎。来年はここを出るぞ、NYだNY。 ....
てのひらに降らせたカラフルなキャンディの雨
気前よく景気よく弾けるクラッカーの紙テープ
そんなふうに
グリンピース
ぐらぐら沸き立つナベの中に
グリンピース
放り込むのは何故この両 ....
ディアー マシュマロ
こんな寒い冬の日には君のこと思い出します
公園で初めて君に出会ったときのことを
その日空は曇っていて今にも雪が降りそうでした
僕はベンチの片隅に座って
買う気も ....
{引用=冬の終わり、
時雨模様
描かれるいくつもの輪のなかで
消えてゆくだけの悲しみがあり
雪にはなれず
かすかな温かさにふれたなら、
降りつもることすらできなくて}
一瞬だ ....
鐘が鳴る
各関節が反応する
生きるのだ
木の芽
下草は
萌える準備を始めている
坂は長い
峠だ
いつも峠の天辺にいる
....
濡れた紙が降ってくる
手で破いたように
様々な容姿で舞い
白く空を遮る
ペタリと壁や信号機に張り付き
人々の頭は皆ライス大盛り
足早に歩く人の足には
待ってくださいとばかりに
大きな ....
その女の人は、ずいぶんと寡黙な人で
その寡黙さが
しきりに語りかけてくるのを
熱心に聞いていた
薄い手のひらでくるまれた
さらに繊細な指先は
紙袋のひもに引き伸ばされて
青く静止して ....
病院の長い待合い廊下に坐って
考えている
私の気はたしかなのかと
時々 呼び出しに応じて
いくつかの個室のどれかへと
人が 入ってゆく
そしてやがてまた出てくる
入ったまま
出てこない ....
埃を振り払う
ような、仕草で
無駄に積もった言葉を落とす
指先でそっと拭き取れるくらいの
そんなくらいでも、涙に変わってしまったりする
流星のようなさよならで
ほんの一瞬で暖かいくらい ....
手のひらで感じるのではなく
舌を出していた
現実は
期待に応えず
無味だった
母親が手を引く
こんなもの舐めるんじゃありません
ママはあまりお菓子を食べさせてくれないんだ
虫歯 ....
道順を、思い出している途中
まだまだ、窓が開かないので
軋むような音が聞こえて
当り障りの無い、そんな
眠れない夜がありました
覚えている
草の葉の匂いと
爪先立ちで空に消え ....
横たわる詩人に砂を投げ入れよテロリストのかなしみ知らぬなら
閃光のあとに残りしひとがたが刻まれており道路の上に
欠落を埋めないこと背を伸ばしカクテルグラスごしの詩の文字
血のにじむ指 ....
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