夕日が奏でるのは
次の世界へと わたり響く調べ
もろびとの想いは 影にひかれ
終わりの彩りへと 去ってゆく
しかし まだ
呼ぶ声がある
呼ぶ声がある
愁いと憧れに染まる ....
人工の丘を埋める鳥
どこか似ていて異なる羽音が
溝と水面に響いている
瞳から現われ 発ちつづけるもの
どこまでもどこまでも向かうもの
手のひらに生まれる光の群れ
丘の上の鳥 ....
広い、窓のあった部屋
私の一部分がそこで途切れていて
確かな
薄い胸で必死に空気を集めていたこと
息切れと
ほんの少し気持ち良いと思える
ぴりぴりとした痺れとで
滑り込んできた電車は目眩 ....
こんな雨の日に泣きたいのは気のせいだと思った
この間、久しぶりに友人と飲んだとき
ずいぶんとしあわせそうな顔になったじゃないかと言われた
そのセリフの半分が
励ましだということを
僕は知 ....
曲がれそうで曲がれるカーブは
いつかどこかで落ちていくもので
今日
と言っても嘘はどこにも転がっていない
今も削られるままの
海沿いのあの煙突のようなこと
僕らも、ひょいと飛び出して
落 ....
封筒のいのちが燃やされた朝
高い樹木は舌のかたちに風に揺れ
戦争に行ったままおとうさんは
還ってきませんでした
硬いあおぞらで何かが倒れます
夢の森はいまでも神聖なままですが
月だけが ....
僕は転がる
傷を負い
痛みに耐え
自分を抜け出せば
それで終わりにできるけど
まだ転がることができる
昼下がり
陽射しを避けて歩く公園の道
眩しさを縫うように進むとき
....
ノームの目には ほかに何も映ってはいなかった
青い空
白い雲
風にざわめく木々の枝
その目に写し取られた風景は まだ世界としての意味を与えられ
てはいなかった いまだどこにもい ....
少女は少女のままで腐り、
そのまま氷のように頑なになって、
誰にも見向きもされなくなった。
りんごの端っこを噛んで、
少女はなけなしの塊だった。
どうにも止まらず、
「やめてくださ ....
駅の喧騒の中で、君を待っている
君ではない人たちが通り過ぎていく
時計の針は動いて行く
壁に寄りかかって、僕はゆらゆらと揺れている
君ではない人たちはどこにいくんだろう
....
それは
ありふれた日常に
巧妙に
隠されている
たとえば
ほら
君が今朝飲み残した
コーヒーカップの底に
向かいのアパートの
窓ガラスの黒に
蝋燭の炎を眺めている
....
飛べるはずもない身体を
立ち入り禁止のフェンスにあずけて
みるみる遠ざかる飛行機を見送る
だんだんと小さくなってゆくのは
きっと僕の方だ
手の届かないものたちが
近くに感じられてい ....
どうしょうもなく渇いてしまえば
身軽になるものだというように
からから笑いながら
波打ち際の空き缶の口元を叩く
浜辺の砂
昨日までわたくしは海の中におりました
かつては地殻の内側で赤々 ....
山の上にも
春が来て
キタキツネも
やって来る
遊ぶふりして
野蒜が伸びる
南の斜面で
欠伸する
北の国では
雪が残って
だんだら模様
裏の斜面で
ひっそりと
冬の孤児
....
私、カンガルーの赤ちゃん
ポケットから顔出して
冒険して 想像して
怖くなって引っ込む
ぬくぬくで安心で
うれしくて一回転
ドッタンバッタンしてから
上向いて
イタズラな顔をひ ....
リンゴ、僕、すごく苦しい
白い霧吹きのような
お化けにさらわれちゃうんだ
きっと
僕の悲鳴は衣を裂くようで
その瞬間に
世界が終わる
世界が終わった後は
狂おしいほど単純な光景
だか ....
風の始まりは
そんな熱の高まりからだと知っている
草笛を吹きながら
その始まりに立っている
(草原は静かに燃える)
気流に運ばれてゆく草の音は
枯れ色の野を赤く染めながら
や ....
うるま
うるま
はじまりのなまえ
うるま
うるま
ぼくんちどこいったん
ひんぷんのよこの
ゆーなんぎーのそよと
ゆーなんぎーはーめーの
いとのつつつと
はじまりのとおく
とお ....
死んだ君が極限にまで死に近づく事を語った春の夕暮れ
死を口にするのはこれで最後にしよう波打ち際のような憂愁
+
桜がこわい。きみはそう言った。春の夕暮れ。
汽 ....
澄ました水を眺めるくらいのここは小さな部屋です。
灰色の砂が時折、いたずらに跳ねる水で濃いグレイになったり・・薄いグレイになったりします。
太陽が出たりすることも月が沈んだりするこ ....
私はもう
とうに疲れてしまいました
できるなら
もう
笑うことも泣くことも
話すことも歩くことも
みんなみんな
やめてしまいたいのです
私はもう疲れてしまった
感情の動き ....
虚無をまとって闇を隠せば
それは限りなく深い透明のように見える
あなたは
自分を見せることなく
優しさを浮かべた瞳で見つめる
僕は
その優しさの結晶に自分を映す
一つの優しさ ....
石鹸 ストロー 含ませて
空 へ。
虹の円 数秒の悦楽
風の強い 晴れた 薄青へ
飛んで 行け。
儚い 宙と 思慕
「そのうち」
....
春のぬるい風をどうしても愛せない。
凍てついた枯れ枝の尖った輪郭を
冴えた静寂の中を立つ潔癖な冬木立を
ただ耐える以外には何もしないですむ季節を
ぼくは心底愛していたので
ふくらみはじめたつ ....
はずむように近づいてくる
あなたの息は白くない
コートは着てこなかったよ
と言って肩をすくめる姿は
想像よりも少し小さく見える
はじめましてとはじめましてがぶつかって
どういたしま ....
時計が
ストロボみたいな一瞬の瞬きで
一回転したりするものだから
慌てて飛び起きる
格好だけして
頭では遠くの花の群れるイメージを
深さで
あくびと一緒に出た言葉が
つららの丸さで凍り ....
かのん、は
「入院」がだいきらい
だから高熱で白目をむいて
こんなにも
「あつくてさむいよお」ってふるえているのに
「いきたくないの」って
ベッドから起き上がっておかあさんにしがみつく ....
突入へ
その俊足を踏み込む
一歩という瞬刻に
黒靴で走る音の重さと
同じだけのナルシズムの
警笛が鳴る
敵 それは城としての呪縛として
血液の慟哭へ
つまり我の血脈へ
警笛は鳴 ....
散乱が止まらない新宿で
途切れない音量につぶった目の裏の
堆積を泳がせるかなしげな夜に
それは冷えきった街灯の指先だった
視覚のぽつりとした後
肌触りがしびれて遠くをめぐり
ぼくは静かで硬 ....
握っていた手のひらを開くと零れていくものがあったので
僕はどうやら何かを、どこかに忘れてしまっているらしい
記憶をひも状にして木の枝に引っ掛けて、登る
どうしてもたどり着けない
アゲハ ....
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