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件は、ビル街の谷間を人に知られずにさまよう。件を見た者はない。人には見えないのだ。ある者は、件は影だと言い、ある者は、件は光だと言う。かすかに足音が聞こえるだけだ、そう言う者も。誰にも見ることはでき ....
椅子に坐っている。
その椅子は一脚の椅子で、
遠く空を眺められる。
それでもその椅子には二本しか足がなく、
片側にふれれば、わたしが揺れる、
片側にふれれば、世界が揺れる。
あの空 ....
センスで、感覚する。
あたしのラジオ波のソナー。
リッチ、リッチ。
タツノオトシゴの、
落とし前。
「おまえ、あたしを食べたかったんだろ?」
海の、
開き。
十分 ....
妻の手が怪獣になっている。
怪獣になって伸びてくる。
伸びてきて ぼくをかじる。
妻は向こうでぐうぐう眠っている。
昨日のことも明日のことも忘れて
一生懸命眠っている。
ぼくは怪獣 ....
白雲が去っていき
青い青い空が広がった
異国は遠いけれど
宇宙は此処だ
僕はそう思った
キスのスタンプ。
君のお腹に試し押し。
海に住む少女に会いにゆこう
大西洋の沖合いはるか
めったに船もとおらない
まぼろしの町へゆこう
アイルランド訛りがとびかうはずのタバーンには
看板娘のひとりもひつようだし
だれ ....
落ち葉で明るくなった赤い道
カラスがクルミを咥えていく
どうぞと笑顔の妖精は
余った実を抱いて家に運ぶ
流星を彫って作った鍋に
ハチミツとクルミが入る
特別に月の白身が用意され ....
誰にだって
少年か少女の時代はあった
筈さ
すっかり忘れてしまった
かもしれないけれど
もしかして
卒業アルバムの集合写真の中に
埃をかぶって埋もれてしまったかな
少年も少 ....
毎日が続く
色んな出来事が起きても
笑顔で過ごそう
みんなそれぞれにある笑顔
良い流れを引き寄せる笑顔
気がついた時
もう夕暮れになっていて
早いと感じている
笑顔で過ごせ ....
空。今日がどんな空を
していたのかなんて、
雲の上なんて見えやしないから
僕は知らない。
だから、君も知らないはずだ。
いつの日からか、
大気汚染だとか酸性雨だとか
そういった言 ....
金曜日の夜の街はざわついている。
お洒落した、色情を掻き立てるような身なりの女が居たりして、誰かを待っている。
私は待つべき人など誰もいない。
約束なんてない。
ただここに座って帰りたくないだ ....
{引用=
いかで我この世のほかの思ひいでに風をいとはで花をながめむ
──西行
}
風を嫌う……
出会いは雨のようなもので、
無常な気持ちのうえに、
さらにはそれを遮る傘の上に、
....
あの日誓った言葉も、
新しく宿った生命さえも、
失ってしまった僕らには
何が残るって言うんだろう。
君の傍にいるってことは
毎日のはずだったのに、
そんなことも非日常になるなんて
誰 ....
イスラエルのまだ宗教さえない
果てしない小麦畑
妖精だけの青空がそこにある
旅人は星を羅針盤に歩く
妖精のパン屋が
月と一緒に開店する
小麦の穂は平和の国旗
そんな想い出を語 ....
目障りのよいことばを
こどもの前にさしだす
それでなんだか幸せを
与えた気持ちになれる
口当たりのよい菓子を
思い人に食べてもらう
それでなんだか醜さが
自慢の形に変わってく
....
めがみえない人は世界をどうやって感じているの
それは、めがみえない人それぞれによって全然ちがうのよ
わたしが誰かのママだったなら、誰かにそう言うことができたし
心がない人は世界をどうやって見てい ....
お刺身の正式な食べ方は
刺身の上にお好みの量のわさびを乗せて
醤油につけて食べる
らしい
それは
とても美しい作法かもしれないけれど
田舎生まれ田舎育ちの俺には
それを受け入れられな ....
昼ご飯を済ませて
横たわって
眠りに落ちて
目が覚めたら
もうすでに夕方で
ふと鏡を見たら
頬に線ができていて
それが畳の跡だと
やっと気づいて
消す術もなく
消す必要もなく
と ....
わ、たし、のここ、ろにそっ、とふれるあ、なたの手はま、るでおおきな木、のこずえにやさし、くかたりかけるそよ、かぜのようでありそし、てあたたかくやがてすべ、てをつつみこむようになに、ごとかをささやきは ....
高齢者の運転は危険だよって
母から車のキーを取り上げた
買い物に行けなくなっても
母は文句ひとつ言わない
ただ
バッテリーが弱るから
エンジンだけはかけてやってと
小さな声で頼まれた
....
西日で
黄色くはじける街は
水彩絵の具で描かれた空を
背負っている
窓から見える線路を
新幹線が走るたび
部屋の中がキラっと光る
反射する光で
列車が光のように速いのだと
....
海に潜り
息を全部吐き切って
胚を空にすると
体は砂底まで沈む
水が冷たくなって
辺りが暗くなって
とても怖いんだけど
そこで仰向けになって
見上げる海面の
美しさと言ったら ....
人のいっしょうは
苦の集積
だって本で読んでしまった
たしかにそうかもしんないな
だけど
誰も好きこのんで
苦しみをかき集めたりは
しない訳で
それならそれで
苦しみを楽しみ ....
おじいさんのシャツは、淡い色のワインレッド。青空の下で、しかめっ面。もしかしたら、そのシャツが似合わないと言われたのかも。気に入って買ったのに、嬉しくて持ち帰ったのに、「似合わないよ」って、言われた ....
小さな手で耳朶を摘まんで
鼻の先で羽ばたき
じっと目を合わせる
少しだけ泣いてたんだ
心配させたね
身体がとてもね
大きく広い葉だった松が
あんな細く針のような
葉になってしまうほ ....
夕焼けの君は泣いていた
何が悲しくて?何に心打たれて?
夕焼けの君は震えていた
何が恐くて?何が悔しくて?
夕焼けの君は涙を浮かべてこう言った
「もう大丈夫」
夕焼けの君を見て ....
(ああ、秋の空は露草を集めて染めるのですよ)
(あれこそまことの青ですわねえ)
天からつゆくさが降る、
つゆくさ、つゆくさ、
地が青に染まる、
つゆくさ、つゆくさ、
どこかで鈴がちりり ....
真夜中に音がする
引き出しからだ
起きてそっと確かめる
羅紗バサミの刃が開いている
力を持て余していたのか
鈍く光り出番を待っている
シャキリシャキリと
衰えていない音
亡き父は
....
あの雲に名まえをつければ、
消えてゆくまえに、あの雲の名をおぼえていられる?
ちょうど街の影にかくれてゆく前の、
消えてゆくまえのあの雲に。
赤い、いいえ、朱色、いいえ、オレンジ、 ....
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