あなたの匂いをもう憶えていません
この部屋で暮らしてよかったと思ったことなどいちどもない
曇り空 ぬるい暖房 春の光はこんなもの
伸びた爪で嵐をとめて
伏せたまま口づけてじゃれあっていた朝 ....
鏡を上に向けすぎた昼
映らない
何も
映らない
雪が径をすぎる
さかな ふるえ
背びれ 夕刻
自ら 光の個のほうへ
応えをしまい
さらに しまう
....
カタチ
セイチ
イノチ
血
あの日地面がおおきく揺れだしたから
工場の高い建物さえしなりだしたんだ
工場内に積み上げられた製品がまたたく間に崩れだして
あっちこっちで悲鳴があがる
逃げなければ
俺は持ち場の非常 ....
きっとやっと咲いた
薔薇でもあっただろう
でも眼には棘のまず薔薇
まずの井戸をおりていくと
また別な薔薇を踏む
柔らかな感触に慌てて
傷口とそれから棘とを
裸足の空に付与している
君は傍観者
ただ見ているだけ
それだけ
どうしようもないからと
その口はよく回るけれど
そんなことなら
せめて黙っていられれば良かったね
君は傍観者
その、つもりだっただろうけれど ....
月夜のメダルは天に貼り付き
煌々と照らされた道筋を
飲んだくれ共が泳いで行く
忘却の淵に全てを沈め
麻痺した脳髄
カンカン鳴らし
平手を打って泳いで行く
泥団湿地の現の原に
拘泥す ....
誰も帰らない家が在った
十年ぶりに男が一人帰った
その家を壊す支度に
雑草に覆われ
壁は罅割れ色褪せ
繁栄の代償に
突然選ばれた家族
怒りは擦れ違う
日々が過ぎても
これで癒 ....
海底99メーターの孤独
エヴェレスト単独登攀の孤独
子供が離れた孤独と
爺ちゃん婆ちゃんのいない孤独
不安に怯えても孤独と融和しようぜ
もう子供じゃないんだから
もし好きなことがあ ....
そこにあったことなどないことを忘れそうに満ちる野花
水底にねをはる陽の匂いをそこねることなく永遠の死を生き続ける置物に
なによりもそこに似合う置き場のない静けさとして
....
一億年後
人がいなくなって
空が青く澄んでいます
ロボットだけの地上になって
考古学者もいないので
地下のことは
また秘密になってしまった
ようです
静かで ....
口元から読経がながれる
もの言わず燃えたぎる焼き場にて
圧倒的なあの世が降りてくる
惜別をぶち抜く感情のほとばしり
わなわなと肩が共鳴する後ろ姿
人目を払いのけ崩れ落ちる黒影
命に ....
冬の終わりに桜が咲くように、ぼくの終わりにもきっと何かがはじまる。
それを見れないことは少し寂しいけれど、未来を見れないから持てた希望や、綺麗と思った世界や、笑えた日があった。
冬が終わって春 ....
かちゃり。
ネジを回す。
ドビュッシーの月の光。
オルゴールを買った時
隣には母が居て
父が運転する車に乗って
鳴らしながら帰っていった
みんな笑っていた
あれから何年も経った ....
語られないのは
はじめての恋
いつかの歌姫
めくるめく夜
ルビーが腫れてく
くちづけだから
ランプも恥じらい
いつしか消える
ルシアン・ベアってお酒をひとくち
痴情のもつれもた ....
することがないので
なにかをした
なにかをしたら
なにか変わるとおもったけど
なにも
変わらなかった
だから
することがないのを
そのままにした
そのままにしたら
なにか起きる ....
2011年の詩から
フェルメールの少女
振り向いた君は
何を見たの
輝く真珠
珍しい果物
かわいい子猫
振り向いた君は
何を聴いたの
彼の ....
大好きな女と離島で暮らす
大嫌いな奴と仕事をする
愛情たっぷりの野菜を食べる
つまらないことでも悩むのだけれどもね
まあ確かにいいかなって
とても酷薄な人生のやり口だ
計画経済 ....
{引用=じっと殻に背を丸め
春を待つ{ルビ蛹=さなぎ}のように森は
いまだ
あわい{ルビ揺曳=ようえい}の入江
冬木立のはざま
小橋のそでに
ゆたかな寝がえりをうつ
にがい{ルビ蕗= ....
君は絹ごし豆腐のファンだったね
僕は木綿のほうが好きだよ
と
話しかけると
どうして
木綿のほうが好きなの
と
君はふり向いた
コロナの時代は
何が起きる ....
青い夜の風の匂い
君に包まれていたあの時代
虚無の底に引き摺り込まれ
虚脱しながら僕は嗅ぐ
そこに浮かび上がるものを
掴み取ろうとして
今、独り寝の床のなか
自らの熱を感じながら
....
「大地」
大地がぼくを落とさないでおくのは
それはやはり
大地がやさしいからだ
そうかんがえないと
「今」にいられない
「ゆきがふる」
あの子
ゆきにさわりたいから
....
僕のグレたガラホは相変わらず寡黙なのだ
やっと取り引きして得た隙間に僕は住んでいる
今日と明日が条約を結んで握手しても僕は拍手しないだろう
だってやつらの隙間の全人代という茶番を許すのだもの ....
花咲く頃に天使は旅立ち
氷の大地に降り立った
寒い寒い北の果て
天使は何を見つけるだろう
残された人々は
嘆き悲しみ
咲き始めた花さえ枯れてしまう
止める声も聞かずに
天使は氷の大 ....
人命は尊いと言うよりも
他人の生命についてはさておくと言うのが皆さんのホンネなんだよね
俺も正直そうなんだよね
命については自分第一主義
そして家族親族友人知人
だよね
見も知らな ....
耳から咲いたうつくしい花の声たち
眠っているときだけ、咲く花がある
あなたはそれを観る事はないだろう
生きた証し、誰かの
言葉に耳を傾けた証し
母さんの声は咲いているか
愛しいあの娘の ....
青空のように真っ青だった空
すごろくをすごくつくってすごす図工
どこかの地層に残っていた涙
ただひとつだけ言えることずっと言う
生まれつき
泥じゃなく砂をかためたふたりのからだは穏やかな波にさらわれ
いつしか跡形もなく
消えて
しまって
から
さらさらふたりきりで 小さな
肌のかけら
となり
青い ....
古代はひがないちにち風を吹かせて
日捲りはやがて春を忘れてしまうだろう
肩甲骨のあたりの憂いは上等な娯楽あるいは
ながれついた憎しみをも拭い去ってしまうのかもしれない
あの娘はときどき ....
思い出は遠のくのでもなく
色褪せるのでもなく
失われるのでもなく
ただ軽やかになっていくのだ
綿毛のようにフワフワと
この世界を風に乗って飛び回り
ふとした拍子に舞 ....
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