―炎天
いつからか父母の面影もなくなった顔の輪郭を撫で
枯れた景色を見すぎたせいかむず痒い目を二、三度こする
何処にも行きとうなくなった
もう何処にも行きとうないんです
陽射 ....
君にむけて
風のなかで
話したいことは
いつのまにか
感じすぎて
日々のなかで
忘れたいことも
いつのまにか
今、
....
こころが気持ちだと思っていた
こころで気持ちも変わるものだと思っていた
でも真実は違うようだ
脳で気持ちって変わるんだ
さっきのメールを読みながら
いや、削除したときそれを確信した
またひ ....
案山子になりたい
畑の真ん中に
片足で立ってみる
結構いい感じで
鳥たちと仲良くなる
農家の人は優しく
話を聞いてくれて
夜は立ったまま眠り
五年は帰らない
ひと息で
その
わずかな角度で
意味とか
理由は
なくなる
ねえ
あたしは
生き残るから
あなたも
生き抜いて
どうせ
あたしたちが会う場所に
善悪などないのだし
....
愛ゆえに
別れませんか
あなたは西
わたしは東へ踏み出し
ぐるりと旅に出ませんか
愛ゆえに
別れませんか
あなたはチベットで詩を書き
....
{引用=スパゲティー讃仰フェスティバル参加謹呈}
1
長いスパゲティーを食べた
まっすぐ、まっつぐ、どこまでも
スパゲティーというより、
スパゲティ―――――――――――――――――― ....
西の夕空に地震雲
タツノオトシゴみたいな地震雲
あたまのとこに虹かかる
きみの住む町とは反対の
西の夕空に地震雲
それだけでやすらかな胸
西の夕空に地震雲
タツノオトシゴみたいな地震雲
....
世界はざわざわとしていて悲しかった
おうちに帰ると
部屋には悲しみがたんたんと続いていた
悲しいということが
生きているということだった
悲しいということが
生きているということだった
....
たったいま
この詩をよんでいる
あなたがきらいです
と
わたしに言われて
どきっとした
あなた
名前はなんと
およびすればいいでしょうか
あなたの名前は
あなた
ではないはずなの ....
夏
あぢ
なんか、快晴ではない
曇っていて
空気がじめっていて
あぢ
あぢい
君と別れるとさ
俺はもう
切なくて
切なくて
なんか、夏祭りらしいんだけども
俺、見学も参 ....
悩んだときは
ブラッドオレンジに染まる
マンションの給水塔の上に立ち
三百六十度 この街の大パノラマを この眼で捉え
瞳を閉じて シャッター音を鳴らす
沢山のネガが出たら
その上 ....
{引用=ああ、ここは遊泳禁止だったのか
足が着かなくなって気付いたよ
ヘラの母乳は少し苦いね
俺もここでおしまいなのかも
日本語の「さよなら」は
おかしな響きだね}
ラブホのネ ....
夏のむこう、
あの入道雲のあたりに
ひとつくらい、
ふたつくらい、
みっつくらい、
言いそびれてしまったことが
あの入道雲のあたりに
....
ぼくらのいのちのかたまりが
こころとなって かたちとなって
やってくる
あしたにはちがうかたち
になっているかもしれないし
そのままのかたちをしているかもしれな ....
何かの工場でも移転したのか
住宅街の真ん中にあられた大きな空き地
その空き地を取り囲むようにはためく斎場反対の白抜き文字
いつまで運動は繰りひろげられていくのだろう
はちまちをした町会 ....
ゆうぐれのいろを
おしえてあげたいけれど
かすかなひびきでさえ
てのひらにつつんで
あなたにあげたいけれど
ふれることから
....
君に
言いたいことがあったけれど
誰かが言ってしまったから
もう何もない
日が翳る
電車が騒ぐ
来なければよかった
ぼくのぜんぶをさらけだせたひと
ぼくがいちばんやすらかになれたひと
いっしょにおさんぽできなくなったって
仲良しでいるから
いっしょにおさんぽできなくなったって
ぼくがいちばんやすらかになれ ....
人工湖に仕立てられた
用水池から漏れだしている
名前だけは一人前の川がある
堤防にそよぎはあるものの
せせらぎはない
はぜのかげもない
それでも むかしのおらのよう ....
{画像=110806230826.jpg}
ホームに止まった電車の窓越しに見える
同じく所在なく立つ隣人を想う
二本の平行した線路上に交わる事なく
二人は未来永劫交差することは無い ....
目の前の人は
下ばかり向いている
私は
伸びすぎた爪をいじったり
髪を触ったり
挙句のはてに
することがなくなって
ほろっと涙をこぼしたり
していたけど
目の前の人は
下を ....
逃げ場をなくした熱気が
重く澱んでいる夜の底で
線香花火に火をつけると
涼やかな光の飛沫が
覚めやらぬ地面にほとばしる
しつこく素肌に絡みつく
湿り気を含んだ風の端に
弾き出され ....
夏のお空は賑やか
雲の鯨が群なして
北さしゆっくり泳いでく
夕べ摘まれた胡瓜はポリエチレンの中
萎れた黄色の花を畳んで重い体をしんなりと
むらさきの影踊る無人販売所
朝の優しい静け ....
「18歳未満立入禁止」
のボタンを押して、そっと扉に入る
大人は誰一人いない
大人が若返っているのか
大人などはじめから入ってこないのか
大人などはじめから"いなかった" ....
荒野にときどき吹く風がある
代わりを求めても仕方がないのに
荒野にありもしない花を探している
荒野にときどき吹く風がある
お花屋さんの冷蔵庫の匂いがする
さわやかな湿った ....
空がたかい
空がふかい
空がたかい
空がふかい
ぽつんと宇宙基地に立つ
空がたかい
空がふかい
ぽつんと一人立っていた
空がたかい
空がふかい
空がたかい
空がふかい
「どこにいる?」
誰のしわざだろう
(どこにいる?)
有限のたましい
絶対音感の人の指先が
たくさんのたましいの呻りで
にごってゆく
そのとわの中で
その
と ....
一輪のすみれを
花のところだけ切り落とす
いとしい{ルビ女=ひと}よ
きみの優しさが
どこまでも悔しかったからです
誰かに手紙を差し出したい
秘めた恋心を
白い便箋の罫線の間にそっと忍ばせて
誰かに手紙を差し出したい
今朝咲いた朝顔の欠伸が
黒いインクの文字から聴こえてくるように
誰かに手紙を差 ....
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