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僕の部屋からは
プラットホームが見下ろせる
知らない人ばかり詰め込んだ準急を
この窓からいつも見送る
ここは始発駅だ
短い旅程の百度参りを
飽きることなく繰り返す
乗車率427% ....
安全ピンに とめられた
近くで 鼓動が聞こえる
建てられた家の壁の 奥
にぎやかな笑も 枯れて
この 残された クサビだけが
奪われたものに対する こたえ
やがて 消えた鼓動の ....
巨大な多翼の鳥に守られ
坂はひとつの音をたてる
雨雲のような遠さから
草と水をかき分けながら
祝福も祝祭もない羊が近づいてくる
水を閉じた森で育つ
あらゆる ....
薄紫の和紙に 小さなお山のように盛られた氷砂糖を
壊さないように 天辺からそっと摘まんで
可愛らしい唇に つん と付けては
何となく冷たい感触を味わうのよ あの子は。
口溶けは 冷やか ....
偽らない星
とても近くに
まばゆく在る星
光はとどまらない
音は退かない
いくつかの小さな泉を残し
雨の天使の足あとは消える
水と葉は静かに向かい合い
舟 ....
涙がつたっていた
朝のことだ
見ていたのか
夢を
(思い出せない)
遠くから鈴の音
昨晩のことだ
届いたのか
手紙が
(治らない)
涙がつたっていた
朝の風が
....
鋼線伝いの道
丘へと
君をつれ
君は犬をつれ
ふと目をはなす
その隙に
君は増え
君のつれた犬は増え
群れる
群れてゆく
君君
君君の犬犬
が、を
が、を
....
もう、ここも夕暮れて
短い夢のあと
ひとつ、ふたつ、みっつと
呼吸を数えていく
世界はまっすぐで、明日へ向けて良好で
目覚めの後の、定まらない視線で
遠く見えない、海を見ている
....
夏雲がゆっくりと渡ってゆきます
手をかざしても よくは見えないけれど
僕らの記憶は 眩いあのあたりで
いまも青空にまみれて 遊んでいるんです
雷雨の夜に
またお前の魂はくっきりと日に焼けて
幼い胸板をさらしている
いくつになっても
お前の魂は脆弱で
いつまでたっても子供のようだ
そういえばひまわりが咲いていたっけ
あのお前 ....
サービスで付いてきた
しおりの柄が気にいらない
本の中身は上等なのに
どうにもこうにも
これではいけない
気にいったしおりを
自分で作ろうか
それでは本に失礼ではないかな
それでも ....
遠のいていく
夢の終りの予感
連続する瞬間の
寓話的イノセンス
遠のいていくわ
雨
音楽的無添加な透過
指の形良く
挟んだ煙草と
くゆる
正視の冷却
覚めてゆく未知数
....
ひらいた おやまの
むこうの おそらに
ちいさく てをふる
おにのこ つちのこ
とんとん とんのに
とうせん はなおに
とんから とんから
とうそう はなおに
ひらいた ....
八月、
太陽が終わりのない明るさで街を照らす八月、
影のない者は日陰をたどって歩く
わずかなあいだなら
太陽を見据えることもできるが
かれには影がない
影のない者は太陽の下を歩くことはでき ....
窓のむこうに
降るのは
あかるい雨
夏の日差し
真っ白な雪
網膜の向こうで
立ちつくし暗転する
背中の音
いつも風景に
変移を求めていた。
わたしが変わっていく事になど
....
ロクに舗装もされていない田舎道
透明な光線を遮って顔を上げる
グルグルと旋回している天上の鳶
彼らも疲れているのか高度は低かった
ガタガタの足腰を癒すように詠う
みちるやちるや ....
またひとつ午後の行方が指し示され
風は不確かなまばたきをする
草の迷いと疑いのなかから
等しくねじれた枝が現われ
石のまぶたに呼びかける
空の一点から来る声に
地が応え ....
影の、模様が、オレンジ色の光の混ざって、
ひときわ目立つ、クリーム色の壁。
朝には、日差しが、ベランダの、遅起きの昆虫を、
執拗な温度で照らす。
次の日も、町内に響く、下校のチャイムが ....
洗濯物をたたむうちに
不意に可笑しさがこみあげてきた
昨日までの
それまでの
汚れを落した衣服の形
そうだとしても
ひとつひとつ
笑顔や葛藤や
その他{ルビ諸々=もろもろ}の生活を ....
つぐないの花に
光が降る 雨が降る
半透明の蜘蛛が
空を見る
何もかもが破けてしまいそうな
たくさんの鈴の音がする
名前の無いもの
にくしみを
とどまりすぎ ....
あたりじゅうすべてが蜃気楼と化してしまいそうな
夏の午後
裾の長い木綿の部屋着に包まれ
籐の長椅子で微睡む一個の
流線型の生命体
窓からのゆるい風が
肌にときおり触れて過ぎる
ほの甘くあ ....
キャッチボールしよう
あめ色に拡がる陽炎の向こうから
胸に光る勾玉の下げ飾りをつけた少年が叫ぶ
他に人影は無い
揺らぐ時流
熱気流に渦巻く少年の瞳
キャッチボールしよう
....
灰空の下に立つ
くすんだ緑の家
不吉な青空から逃れて
独り 雨を見る
紫の夜の光
顔に映る枝の影
冬の空を埋める十字架
次々と手から落ちる絵図
....
ぼくらはあまりにも醜いから
醜いから誰かに会うことが恐くて
となりの惑星にさえまだ行く勇気がない
そんな醜いぼくらのせめてもの救いは
この星にうたがあるってことだ
どこを捜しても どこを ....
雲になる花
見えない鳥
午後は夜より深く
地は空より暗く
屋根だけが鈍く透きとおる
高く遠いひとつの窓が
誰もいない部屋を明るく照らす
ちぎれずにいる雲から先に
逆 ....
わたしはあなたの声の中に家を建て
夏の風をちょっと吹き入れて
声を聞きながら
寝そべっている
わたしに用事はなかったのですが
あなたの方で用事があるらしく
声色をぴんと伸ばして
いそ ....
陽に焼けた黄土色の文庫本を開くと
なつかしいあなたの横顔が
鉛筆で、薄く描かれてていた
添えられた文字は
照れくさくって読むことは出来なかったが
横顔はまったく記憶の通り
....
ぼくの恋愛感情は
小学6年生だった
授業のチャイムが聞こえたならば
急いで席に着かなくちゃならない
なのに先生である彼女は休みがちで
せまい教室でぼくは自習ばかりしていた
そこ ....
みてみたい
星の誕生する瞬間を
流動する熱い肌
なめらかですべやかな肌
それでも
笑えるしあわせ不仕合せ
今晩のおかずは何?
魚の視界
鳥の羽ばたき
貝の呼吸
ひとりのつぶ ....
亡霊にとりつかれている
幽霊がいるという話ではない
夏の{ルビ最中=さなか}の冬といえばいいのか
忘れることができない過去
どこまでもついてくる
忘れたことまでも
ついてくる
遺 ....
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