タクシーに乗って
道を歩く
こんな時間までお仕事ですか?
運転手が尋ねるので
ええ、まあ
と答える
今日は暑かったですね
暑かったですね
本当に暑かったのだろうか
....
朝日影にふくまれた わたくしの陰影が
ありのままの白い骨格で
よるべなく
この家に嫁いで来たのです。
その
わたくしが、
わたくしであるが故に、
わたくしを焼べねばなりません。
そ ....
床屋の風船に
泡が乗っている
これから蟹に
初恋しにいくの
風にふわふわレジ袋
器用に車をよけ
ひとにぎりのおなら
ポテチあい
口笛
イヌは見てない
フリをしている
山のむこう
泡のようにぶくぶくぶくと入道雲
「ぼくは雲を作ること ....
おじいちゃん
炒めるつもりも まるでなく
ただただ あなたが 刻みつくした
玉ねぎ一家から 飛び散った
汁の残霧が わたしの目にも ちょっとだけ しみます
でも、わたしは あなたが ....
暇潰しに入った近所の小さな図書館で 私は自費出版で出したある詩人の詩集を見つけた
この詩人は名も世間に知れ渡っておらず 芽の出ないまま死んでしまったらしい
春の日溜まりの中で読む詩集は 輝い ....
満員電車の中のつり革を
片腕を伸ばしたまま
必死になって握り締め
このつり革は自分ものだと
態度で主張する
そんなわずかな場所が
そんなに欲しいのかい
数分後にはみんな降りてしまうよ
....
傘持ちて吾子を迎えに行くことも
久し振りなり雨もまたよし
さりげなく扇風機の風 吾が方に
向けてくれし子は漫画読み継ぐ
見知らぬ子 通りがかりの吾れに寄り
トンボが居るよと ささやき ....
春が逝ってしまったので
とりあえず泣いてみた
道端で通り過ぎる人々に
誰彼構わず縋りつきながら
警官が現われて
ぼくを羽交い絞めにして
無理矢理パトカーに押し込めた
パトカーの中 ....
ー盲目ー
まだ陽の上らぬ未明の朝
風紋が鮮やかに浮き出る灰色の砂丘を
暁の月へとむかう 黒烏
凄絶な月の海に至る道は
煌々と白い光に照らされて
泥だらけの足で踏みこんで ....
緑色いっそう深まり空曇りスズメさえずる朝の机に
わずかなる胸の痛みと音楽の耳にいりくる今朝の心に
マンネリか歌に心はずまずに昔作りし懐かしき歌
陽は上り妻の植えにしかわゆ ....
それはいつまで経っても明日にならない
俺は始まりからずっと遠くてもっとぶ厚くて
お前の衰弱しきった太陽が忘れられない
明ける夜に挿された首のひやっとした
どの空も拒んで傾いた
それは動く ....
ことしもまた春が来て
暖かくなって
やがては暑くなる
またしても
煩い季節になりつつある
驕れる者 久しからず
正しきも
疚しきも
また同じ
そんな世捨て人のようなことを
つぶやき ....
ゆるすことにつかれてしまった
ひとりのせいめいたいは
とけいのはりをおって
じかんをとめて、しまった
はりとはりのあいだで
だれかをまちわびている
そのまま
うずくまっている
....
2007/06/02
単純な飛行機を飛ばす
ゴム動力でプロペラを
クルクルと回し
ゴムがゆるむまで
どこまでも飛んでゆき
見えなくなって
ステルス機になっ ....
彼女のささやきは
太古の空に置き忘れた 君の本当のイニシャルであったり
気づかれぬまま 君を愛した風の名であったりする
彼女のささやきは
瞼にそっと置かれたぬくもりであったり
愛撫がすく ....
植物園まで
はちの子を送っていく
バスは回ってこないから
自転車でまいあさ運んでやる
自由ぐらい自分で守れと
けさ見た夢の話をしながら
ペダルをこいで坂道を登る
はっぱの裏に書いてあるこ ....
一匹の{ルビ蜻蛉=とんぼ}が
脚の間をすり抜けて
小さくさざ波立つ水田
暮れ翳り始めた空に
フラミンゴの色の雲
エミール=ガレの作品集を
撫でる指で繰っていた
男のこと
苗のき ....
ひどい肩こりと不安から朝の4時とか5時に目を覚ましてしまうことが最近多く、本日も、久々の休みなのにたぶん4時くらいに目が覚め、サロンパスを貼り、布団に入って仕事のことで悩んだり腹が立ったりで眠れず、そ ....
心より一切の欲消え去りて青き紅葉の葉は揺れており
水無月に外郎を求め与えてし母の眼鏡の顔浮かびくる
さえずりの混じりて聞こゆ玄関の机に田山花袋を読む
鳩が来て紅葉の枝に住まいけり
陽が上り妻のチロルの服を干す
初西瓜妻にやるため買いにけり
自分の趣味で申し訳ないのだけれど、女性の書く詩が好きだ。
女性詩、あるいは女性性を持った詩、とも呼ばれるそれらは、
目に見えているのに決して触れられないもののような気がする。
贖 ....
浸りゆく
この黄昏に
街は慈愛の潮 満ちて
海から遠く 離れて
唸る 街に
古代の虫 発光し
アスファルトのタールは
原油のにかわ 舗装する
道をまっすぐに!
密 ....
水温は体を刺していくので、子供たちは明るく冷めて唇の色を変える
心配などないなんて嘘だけれど子供こそこの水温に耐えるのだと
平泳ぎのストロークは長く自由形を越して空をとんでいく
ばた足しかできな ....
唐水車の水ぎわの
苔むす屋敷のはしっこに
住んでおります
ございます
子どもは巣立ちて
夫は他界しまして
天上の人でして
疎開した猫からの便りにありますのは
ときどき天井か ....
バスが燃え
市場が燃え
レストランが
兵士を焼く
まだ若いパトロールを
私たちは奪われた者
正義と
正義が反目する
その西の国はチェスの国
ここでない
遠いオフィス ....
腕時計をすると
その下に洞穴ができて
取っ手のないバケツが
ピチョン ときた時のために
埋め込まれている
なげ槍の中に住み込み
解毒剤の研究をしているスルメ
永遠の若さって 日干しね ....
ミンククジラのパンプスの中で
小さな金魚が揺らめいている
落雷があった駅からは
洪水が始まっていて
横断歩道の境界は灰に変わる
賭けに出る前に
豪雨の隙間ですれ違った少年は
折れ ....
+四杯目から+
店の一番奥に大きな真っ黒なドアがあって
それはちょっとやそっとでは動かせそうにもないタンスで蓋をされてる
さらにはドナセラなんたらとかいう幸せの木の鉢植えでカムフラージ ....
からだのすきまからくうきが
めにみえない
こぼれものがこぼれていく
それはうちゅうのもととなるものかもしれない
どんどんじょうはつしていくの
ひきとめておいてください
そのてをひっぱっ ....
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