穏やかな風が吹く
冬の晴れた日の午後
寒い日のはずなのに
その冷たさはどこにもない
鳥たちはのびやかに飛び回り
土は生きている
めったにないこの日を
人も皆
外に出て心で祝う
....
ブラインドの隙間を
汗を滲ませて
這いのぼる月
窓辺の寝台の上
....
砂が舞う
晴れた日ほど景色が白む
風のせいでもなく
冬のせいでもなく
グラウンドから逃げ出したい
砂のせい
砂が舞う
口に入る違和感
砂のせいだ
景色が、白い
剥がれ落ちた
爪を
見ていたの。
まるで
複雑すぎた人生を
真後ろから
眺めてるみたいでさ。
光りもしない
石を
ただ磨いていたの。
....
高い塔がある
空を突き抜け街を{ルビ睥睨=へいげい}するように
その塔はそそり立っている
塔には一人の姫が住んでいた
囚われているのではない
自ら閉じこもっているのだ
目も耳も口も絹糸で縫 ....
覚えたての言葉で
精一杯表現していた頃
小さな町の小さな囲いで
小さな喜びを模倣していた
道端に咲いている花は
意識して歩かなくても
簡単に見つけられた
そっと顔を近づければ
鮮明 ....
雨の糸の隙間に
夜は満ちて
ストーブの熱が
そこだけ幸福とでも言いたげに
ほんのり春を創っている
きみと並んで傘をたためば
二人の水滴は
余分な約束事のように散らばって
冷えた ....
暗いことが悪いことだなんて誰が言ったの
友だちのいない子をいじめたのはだあれ
引きつった笑顔を作ろうともしない君
暗い瞳で虚空を見つめる君の横顔
....
甦るのは思い出だけです
断片という名の時の死体です
「昨日は、昨日は、昨日は」と繰り返す事がARTだと囁く幽霊が日常です。
あなた今22歳で ボクは25歳
驚きの年代はもう過ぎた話です ....
心が壊れた夜には
甘い砂糖菓子をたべて
満ちてくる潮におぼれる
飽和した呵責を中和するために
街の背骨の上に
赤い月が浮か ....
冬が秋に流れ込むとき
夜に長い雨が降って
切れ味の鈍い刃物みたいなつめたさの水が
体と体の間に滔々と流れた
僕はとある地方都市の道の真ん中で生まれて
都市計画がめずらしく ....
石と罵声が飛び交うなか
彼女はそっとギロチン台へと足をかける
嵐のような時代を駆け抜け
今は不思議と心は静かだ
ふと
あるメロディが聞こえた気がした
幼い頃の
小さなモーツァルト ....
「ここじゃあ 夢は釣れないか」
神様はそう呟いて
雲の上をのそのそと移動した
人間界に落とした釣り糸には
申し訳ない程度の『希望』が
ぶらさがっている
神様は眠そうな目をこすり ....
例えば核の脅威におびえない
六カ国協議とか何かよくわかんない青空
コンセプトモンゴル
どこまでもどこまでもつづく広がるあお空のしたで
本当に全員が全員ほっぺを真っ赤にして
てをつなごう
亜熱帯
別世界
スコール
気狂いじみてるホンコンヤン
偽物の時計
黒土色の手のひらの中で時間を流し続けてる
屋根の壊れた二階建てバス
頭のてっぺんをかすめるネオンサインネオンサインネオン ....
一粒の雨が傘に弾いて
百匹の蛙になった
百粒弾いて
一万匹の蛙になった
一万匹は
すぐさま姿をくらまして
それっきり雨は止んでしまったから
微かに地面の濡れたところが
....
彼が遺した
『さようなら』は
ひとすじの詩に思えた
わたしはそれを
くりかえし
何度も口に出したあと
『愛してる』
、とつぶやいた
だけどそれは
彼 ....
ロシータっていうおばあちゃんは
サンホアンで一番年取ってて
猫にやさしくて
工房の隣の彼女の家には
いつも猫がたくさんいて
使い物にならないボートが
とまっている
....
気の向くままに屋根を突き破って、
固い床の上で、くるくると回り続ける隕石から
拡がる光が部屋の中を照らしている。
キキュロプスの瞳は、世紀末を迎えた
ミラーボールのようで、口から泡を吹 ....
誰もわかってくれないと
思っているのは
誰にでもわかっていることで
誰もがわかっていると
思っていることは
誰もがわかっていない
それでもどこかが
つながっているようで
そのつなが ....
おまえが
おまえの母の指を握りながら
泣いていたので
どうしたのか聞くと
おまえは
母の左手の薬指の
銀色の指環を
指ごと握りながら
これが欲しいと
言って
....
ビオラとフィドル
天体になって雨上がりの夜に浮かべ
おれは酩酊状態馬の夢鹿を数えて眠ります
背の高い茂み
オーキードーキーとマンマミア
クロスロードブルースとシュガーマグノリア
息を凝らし ....
ごめん
火のために
戦おうとおもう
ぼくらの
にがい
不安の記憶が
地音のうすいろに
滲んでいっても
青い投函の
しずかな
絶叫が
行き場所を失い
紅い花の底に
ころ ....
兄のように
慕ってもいいですか
あなたの気高さに
ひれ伏したいのです
青年のように目尻を光らせるあなたに
すべての世界を見せてほしくて
あなたの淋しさを癒す水になり
あなたに抱きしめられ ....
ここは田舎町だから
電車の中はいつもの様子
ポツンポツンと
どこに座れば良いのか
迷ってしまう
どうせ辿り着いてしまう
ガタンゴトン
揺れる
窓の外には
見慣れているという
さ ....
古く狭いアパートメントの2階に
インディアンの砦がある
そこは彼らの最後の砦で
敏腕の保安官に制圧され
ほとんど壊滅の状態に陥っていた
四畳半のあちこちに生えたサボテンの陰や
....
{引用=───それは全宇宙での
些細な惑星衝突なのだ
おまえとわたし
という星の}
角を曲がったとたんに
猫と目があった
どこにでもいるような
ありふれた灰色猫 ....
毎日いろんなかたちのバベルの塔の建設に関わる
或いは色々な種類の背伸びの仕方をおぼえていく
こつこつとレベルを上げ努力をし積み重ねるもの
それらに意味はあるだろうか
歴史のどの部分が繰りかえさ ....
知らない町にやって来て
四畳半のアパートで暮らす
目に映るモノは
何もかもが新鮮で
同時に僕は
どうしようもなく
一人であることを
実感する
部屋
かつて人が住んでいた部屋
そ ....
声を漏らさぬよう
唇を噛み締めたら 甘かった
なにせあたしの血は 苺シロップでできているし
あなたなんかに 舐めさせてあげない
ほっておけばすぐ すっぱくなる ....
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