「線路の上を歩いて海を渡る
 それ自体はけして珍しい行為じゃない
 だが
 心してきいてほしい
 次の駅にたどり着くことのできる者は
 きわめて稀である

「大洋をどこまでも縦断する ....
風の強い午後だった
僕は屋上の金網にもたれて
空っぽの青い世界を眺めていた
広大な草原を思わせる
羊雲
羊雲
心の翼をそっと広げ
空の青みに溶け込んでいった光の子供ら

遠い異国の丘 ....
俺は時計を持たない営業部員でつまり仕事ができない
もらい物の手帳に不明瞭な単語だけ書きつらねて
昼間を秋葉原で過ごし歌舞伎町に立ち寄ってとにかく帰ってくる
今日は何本のエロビデオを店に突っ込んだ ....
海岸草原のみどり
はまなすの赤
萌たつ草の焔の中に
風露草のうすもも色

原生花園をぬけると
落ちていくように
空がりょううでを広げて
濃紺の海がひろがっている

道東の海は冷たく ....
あなたの笑顔に
キュッとなる
それは痛みを抑えた笑みだから


悲しみがまるで
今日の雨のように
あなたに降り注ぐ


私はあなたに傘を差し伸べるけど
あなたはその笑顔のままで首を振るね


だから私 ....
火曜日には
お気に入りのアクアバイクに跨がって
積めるだけ積んだジャスミンの花束を届けに
海上に浮かぶ列車整備駅まで出かけていく

海に囲まれたプラットホームで陽に灼かれて
彼は私を待 ....
あわくふくよかな海洋特急列車
が ぼくらを南へはこぶ
間断なく規則正しいマリンバのエンジン音
海に敷かれたレールをゆっくりと
エルスール エルスール エルスール

仲間は海に喰われた
 ....
くっきりとあなた
顔 も良く分かり
なめらかで豊かな曲線 も
温かくやわらかな感触 も
鮮やか
昂り も
息遣い も
鮮明に
ただ 熱心に セックス
透明な セックスをすると
夢精 ....
その日の雨が
今でも時々僕の肩を濡らす

廃園の木下闇に
置き忘れられたブリキのバケツ
松葉を伝い落ちる雫が
想いおこさせる
もうひとつの心臓

眠れぬ夜毎
消え残る雫がほのかに光 ....
ねこじゃらしを持って夜空を散歩していたら
土星の奴が現われてクネ〜(´ー`)〜クネするので
おいこら輪っかんぼう叩くぞと脅してやると
土星の奴め お月様の後ろに隠れ
こそこそ輪っかを取り替えて ....
巨大な石版にきざまれた
柘榴石の星座がきしむ
西の方に5分ほど
かちりと音を立てて静止していた時が進む

一億光年の夜が流れ
廃棄物処理場に水たまりのような鏡
割れた月が赤々と燃えている ....
「もしもし、もしもし、神様ですか?」
 祖父から譲り受けたアンティークの電話機で、佳子は今夜も何者かと会話している。その電話機は飾り物でコード゙は何処にも挿してない。まあ、神様の声を聞くのに電話線を ....
一.永劫回帰

今日の星空はとってもきれい
おまえのところも晴れていたら見上げてみろよ
カシオペアやプレアデスが頭上でふるふる震えている
白鳥座の十字架は西の空に沈んで行こうとしている
も ....
どこか遠くの知らない国で
雪がしんしん降っている

大きな街の片隅で
人と人が出会う

どこか遠くの知らない街で
風がヒューヒュー吹いている

大きな街の片隅で
男がひとり
生き ....
とある夏の夜
遠い遠い荒れ野の果て
深い枯れ井戸の底におりました
光が射し
闇が訪れ
幾日たったのかわからなくなったころ
星が ふるふる震えながら語りかけてきました

私は寂しい こち ....
鳥は自由に飛ぶ
一本の線によってへだてられた空間を
風つかいのグライダーのように滑空し
大気をはらんだ凧のように静止し
熊蜂のように羽ばたいて流れの外に飛跡を残したりして
そして時には それ ....
さえずるのか
さえぎるのか
逆らうのか
さかるのか

騒ぐのか
避けるのか
さげすむのか
叫ぶのか

探すのか
さすらうのか
さまようのか
指し示すのか


高くへ
 ....
それがほしいのだという
網の籠を背負って
捕まえて入れるのだという

静かな息に
舞い上がり漂ったのち
重さを感じて落ちてくる頃に
掴むのだという

小走りに途切れて
靴音の後ろか ....
あくまで単調なリズムだ。
              バニー、バニー、バニー、
黒いタイツのバニー。
酔っ払いを左右に{ルビ侍=はべ}らせて、
見るは{ルビ開聞岳=さつまふじ}のてっぺんのくす ....
黙って。
言葉はどうしても、
誰かのに似てしまうから、
黙って。


蛇になりたい。
進化の袋小路で、
誰よりもまずおのれに忠実な。

蛇になりたい。
自分の巣穴を
役立た ....
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