動かない空気のなかで
宛てもなくひらりと
便箋を翻すと
そこには
まだ言葉にならない溜息やのぞみが湧きだして
いつの間にか黒い模様を描きはじめる
遠くへ帰るひとを
いま見送っ ....
ペッタンコしよう
欲しいものを手に入れるため
ペッタンコしよう しまくろう
毎日ひたすらペッタンコしていこう
事務系の仕事でよくやるあの果てしないペッタンコだ
ハンコに朱肉をしっかりと付けて ....
薄闇に見る、葦の原
風に穂を激しく揺らしては堪えきれず
茎の根ちかく 折れ曲がり、
ついに起きることもない
飛沫の散る 河原の
無常なる日暮れを
化粧の崩れた女と双んで歩く
水辺の冷 ....
いまだ冬の
凍える朝にも
こぼれる陽光の一筋に
穏やかなる日和を思い
目を細める
匂い召しませ
息つく春を
カーテンの裏に潜んだ結露を
指でなぞると
するすると雫は流れ落ちて
行き場のない小さな水溜まりは
冬の外気と人の温みのあいだで戸惑っている
わたしはうっすらと冷えた指先を持て余しながら
....
「無為自然、苦しみて、苦しむこともなく」
見渡すかぎりの畠また畠
単線の列車がこの田園の町にも、日に二回やってくる
沢山のトンネルをくぐって、昔は蒸気機関で
トンネルに近かずくとボーボー ....
バイトに行くより
パリに行きたい
この国で育てた情緒が
すごい武器になったよ
昼は芋ほり
夜はカフェテラス
凱旋門へ凱旋
もっと大きな
責任感を果たすために。
みずたまり蹴 ....
今日はじめてモノレールに乗ったよ
淡いブルーと白のツートーンの車体だよ
眼下に広がる町並みを
地平を徘徊する太陽が
だいだい色に染めていったよ
....
急いで下さい
家のとなりが火事ですから
すぐ来て下さい
奥さん、落ち付いて
落ち付いてなんで居られません
早く来て下さい
切れちゃった
こういうの困るんですよね
望楼か ....
春の空は水色にあかるい
真綿のような白い雲が
浮かんでいるぞ
白い雲はなぜ白い
無彩色透明の問いかけに
毅然として答えてやる
私の宇宙のまんなかに
悠々とお日さま耀いて ....
{引用=
遠い雲と雫が
まわり舞い
霧の匂いの頁に
痩せた流木が
書き留めた
風の足跡が届く
さびしさの果てに
信じるものは何 ?
歪ん ....
『ヨーイドンッ!』
した瞬間に全力でこける。
全力出した結果なので正解。
でも後ろの人に後頭部を踏まれたので不正解。
『グチョッ!』
新品の靴で吐き捨てられたガムを踏む。
他の誰かが踏 ....
あめのなかに
ゆきのまじる
ぶーげんびりあの
かねのねの
音のあまつぶ
しらゆきまじる
むすめはやらない
むすめはやらない
{引用=三つで病に
五つで迷子 ....
今
車のタイヤが雪を
ぎゅう
と踏む音が聞こえて
それはあなたの
今の気持ちの音
なんじゃないかなんて勝手に考えて
いつもは気にしない時計の
針の音が
良く
聞こえました
希 ....
山から駆け下る
細い川沿いに
置き忘れた人形が
初めての記憶
あまりに強い夕暮れが
記憶の中を暗い黄色に
染めて そして
歩いて返す道で
私は誰と一緒に
どうやってここまで
歩いて ....
夢よりも一歩、現実に近かったから
振り返ることはたやすかったはずなのに
もうお風呂にはいった?
という彼の、決して難しくもない問いに
眠りに引き込まれるにまかせて
わたし、答 ....
ぎゃーの一声
なぜだかわからないが
奇々怪々奇人変人唐変木が
根本から折れた
分析的な言辞を読むと
考える過程が分かる
楽しい思考過程を
記憶して
その喜びを
永遠にしたいと願う ....
1
鎖骨のようなライターを着火して、
円熟した蝋燭を灯せば、
仄暗いひかりの闇が、立ち上がり、
うな垂れて、黄ばんでいる静物たちを照らしては、
かつて丸い青空を支える尖塔が ....
哲学的人間
批評子
一日目
共産党的人間という本を読んだことがあって。内容にはあまり賛成できなかったけれど、作者の文章が印象に残った。
だけど彼はいう、サルトルなど読 ....
みなさんどうしてそんな顔してるんですかと
もう猫も言わない
電車はいくつもの死体を引きずって走る
国民みんなにワライダケを月一回配給すればいい
ついでにあんこにくるんで北朝 ....
螺旋階段の
回転の
向きを
途中で
変えてごらん
逆さまになった
コバンザメみたいに
張り付いたまま
落下して
こんどは
地面にへばり付いて
いくら言っても
顔を上げようと ....
今日も
寒いから
炬燵に座り
終日過ごした
春の小鳥が
囀って
出ておいでよと
催促したが
鶯が来ないから
まだだよと返事して
スーパーに昨日の
買い物に行く
仕事が済 ....
空腹にて地下五階で殺された-
通勤の電車で色白でお餅みたいな顔をした女子高生とよく同じになる
彼女は池袋まで眠っている
詰め所にて。
代わる代わる雑工の同僚たちが
....
夏の僕らに
色をつけるなら、たぶん
それは透けてゆく、ライトブルー
てのひらに載せた水を打ち上げると
はじける あなたの 歓喜、にも似た
飛沫が 止められない光を集めて
虹を降 ....
俺はオナニーを中断して詩を書くこともある
俺は野性的だと言われるが きみたちにそんな理性はあるまい
意味のない繰り返しなら 俺はごめん
人類や歴史共と さよならしたらどこに行こうか?
続けるの ....
詩と詩論
〔序〕
27のとき詩人になりたいと思い立った。その頃小説も短歌も翻訳もやっていたが、最もなりたかったのが詩を書く人であつた。詩を熱心に読むことが好きだつたせいでもあろう。
大学へ ....
いつものように
斜にかまえ
じっと待っているきみ。
ころころ降りてくる色を
とらえようとしている
飴玉に射し込む映像は
砂漠を転げながら歩いている
あさってのぼくら
抱き合っていても
....
おはよう
島の朝は早い
東の海は眩しくて
早起きの鴎もやって来て
夏の一日が始まった
いいあんばいに
風向きもいいようだ
今日はどこまで行きなさる
ちょっと沖ノ鳥島まで
....
僕が握っている
ボールペンの
インクの中に
君が詰まっていたらいいのに
朝ごはん食べる
フルーツヨーグルトの
フルーツといっしょに
君が混ざっていたらいいのに
にゃんが時々つか ....
雨の放課後
帰宅途中で
オート三輪に会う
サイドバルブエンジンの
オイルシールが破れたのか
オイルが浸みだして
垂れて
車の下に虹を作っている
オート三輪車の凸凹道の水溜ま ....
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