海の中で生まれた気がする
始まりは遠い手のひらの中
重ね着をして、重ね着をして
風邪を引かないように眠っていた頃
どこへでも、の世界は
指先まで暖かくて
つまずかないように歩けば
いつま ....
まもなく一番線に東京行きの快速電車が到着します
あぶないですから黄色い線の内側でお待ち下さい
まもなく二番線を特急電車が通過します
あぶないですから黄色い線の内側にお下がりください
....
そっとかわいてゆくならば
あと すこしだけ
(でんわのおとで目をさまして)
(それからゆっくりと足の裏をつめたい床へ)
(ひた ひたと)
おきてがみの温度は なまぬるく
....
おまえねェ
おれからみると まだあおいんだよ
わかいときこそ まようんだって
えーっと
だれだっけ そんなこといってたのは
うちはわかいうさぎたち おおぜいいるから
そのき ....
ほがらかに歌う
春
ではないけれど
やわらかい
そのような、
声
やさしい人
やさしい
易しい笑顔 と
きらめく
すこやかな、
絶望
人を花にた ....
今しがた
煎れたばかりの紅茶は
口をつけないまま
冷たくなって
湯気をたてることも
香りが揺れることも
なくなっていたので
カップの上から覗いてみた
ふたつの瞳が私を見ている
ティーポットに
熱い ....
彼女という人は
詩人とかそういう類の人みたいで
ときどき僕を近所のファミレスに呼び出しては
伏目勝ちにちょっと小難しいことをしゃべり
左手に持ったフォークでグリーンサラダにやつあたりし ....
最終バスは一番後ろの席に座るのです
何となくそれが習性になっているのは
そこからは町の様子がよく見渡せるからです
蒼い街灯の下でたたずんでいる
停車場の表示を運転手は調子よく
鼻歌まじり ....
季節は一冊の本にまとめられ
秋の頁をめくりながら
月明かりの下
あなたの言葉を
思い返すのです
秋の頁はとても長く
多くの言葉で
埋め尽くされているはずなのに
めくってもめくっても ....
死ぬも生きるも別れるも
みんな時刻が釘を打つ
閉じた電車のドア開けて
彼女を内緒で乗せてやる
冷たい男の腹に乗り
電車の車輪は空回り
モーターギヤ付きブレーキ掛けて
プラットフォームに降 ....
空港の滑走路でイルミネーションがともると
もうすぐ漁り火の時刻
海の滑走路が開くと
夢のチャーター便がやってくる
他人を批判して
自己を正当化することは
とても容易い
ところが
詩を描き始め
自分を少し管理できるようになると
正当化どころか憂鬱になる
他人を批判することは
とても難解だ
....
いつからか 告白することも出来なくなった
僕は
かたい貝になったのだ
息をする時だけ 口を少し開ける
その一瞬だけ
世界に触れ 地球の一部を感じる
僕は 貝
君に触れるど ....
ねぇ見て 不思議よね
こんなにちっちゃいのに
ちゃんと爪もあるのよ と
満ち足りた母親の顔で彼女は
小さなこぶしをを開いて見せる
アキアカネが飛び交う夕暮れに
生まれたから 茜
はい ....
さあカゴに何を入れましょうか。
歩き慣れた買い物道は私を安心させる
色鮮やかなフルーツと人なつこい売り子さんの笑顔
古くて腕あたりが柔らかなカゴ 私が育ってきた家庭
新しくて刺がまだ痛 ....
泣きながら
見上げた雲は果てしなく
二人の影を映してる
空の青さが辛い日は
君のために歌を歌おう
さよならと
微笑む君の細い肩
翼が生えているようで
....
こうず まさみ
梅雨が明けると
辺りは緑一色
眼に優しいその色は
穢れを知らない少年のように
きらきら 輝いていた
ぼくは
緑の ....
パーティーは散々だった
おやすみ、のあいさつの方角へと
だいだい色のシロップが
ゆっくりと流れて
しだいに
粘性を増してゆく、
夜の
水の底で ゆうべ、まき散らされて
わたし ....
びろうどの摩天楼のイルミネーションは
そら一面の宝の地図を
まねっこしているお猿のジョージで
洪水のように瞬く人々の営み
その埋まらない孤独のうたを
窓から溢れる光は囁いている
....
腐った葡萄を投げ捨てろ
国道あたりに投げ捨てろ
トラックの車輪ではじけて
アスファルトに染みこんで
どす黒くかたまってやがる
(ああ、デラウエア・巨峰・ピオーネ!)
....
こんこんこん。
と、
扉がいったので。
とんとんとん。
と、
返しました。
外に出る。
と、
誰もいませんでした。
....
幼い頃に覚えた童謡を口ずさんでみれば
なぜか悲しい気持ちがわいてきて
もしかしたら
うたの歌詞が悲しいのかもしれないと
確かめるように繰り返してしまう
夏と秋のさかいめは
きっ ....
今朝の空は成層圏のもっと上
宇宙との境界あたりが
こんなにも蒼い
(空の蒼さがスペクトルの分散だというのは、科学者のいいわけ)
見上げすぎたせいか
眩暈でよろめいて
道に ....
おびえるなよ
という声が
おびえていた
私の体の 外で
外では
仕方がないから
精液の白さに免じて
ゆるした
どこからかまた盗賊が来て
盗んでいった
かまぼこ板だけなら良かった
かまぼこまで盗まれたら
僕ら家族はかまぼこを食べられない
子供たちは泥棒さんが来た、と大はしゃぎし
とりわけ下の子は ....
ひらがなで笑って
カタカナで怒る
漢字で宥めた
雨の中
それでは歌謡曲ではありませんかと
ミズスマシ
北から来たのが
季節風
南風ではありません
いつまでも
バカ言ってじゃない ....
たぷたぷ揺れて
君は遊ぶ
シャンプーは手の届くところで
夢と現実を隔てる
掌で掬う仕草に夢はゆらゆら
バスタブの愛は緩やかに萌えて
外は季節外れの木枯らし
....
今日こそはと待っていても
やっぱり届かない
あなたからのメール
けっして
がっかりしたりはしない
楽しみが明日に延びただけ
こうやって
日々を重ねてゆけば
いつのまにか
心痛 ....
「夕日が落ちる前に、帰ってきなさい。」と母が言う
私は、海が見たかった。
秋の夕暮れる速度と思い出と川沿いを歩き
橋の向こうまで。
スタートは、浅い川底の尾ひれで跳ね上げる小 ....
秋の匂いのする風は
夏毛にふわり優しくて
愛なんてものを
かたちにして
誰かに見せたい気分になる
さっき
薔薇の棘みたいに
剥がれ落ちた爪は
カナシミってやつと戦ったから
ゆらゆら尻尾が休憩 ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43