ある日
自動ドアの前に立ったら
開かなかった
押しても引いても
やっぱり開かなかったので
慌てて君を呼んだ
ちっとも開いてくれないんだよと言いながら
二人並んで立ってみた ....
埠頭に
群れなす
カモメはすべて
哀しい心のなれの果て
船は今日も出てゆくのだ
海は広いというのに
のぞきこめない
瞳の深さをもって
船は今日も出てゆくのだ
....
星空の下では今日も
作業灯が明るい
掘り起こされる大地
積み上げられゆくコンクリート
道行く人は
まだか、と未来を吐き捨てる
けれども作業灯は
必ずの未来へと向かって
....
なぜか怖いもの気色悪いものが見たくなり、グロ画像を探してまわった。でもあまり怖くない・・・気持ち悪くさえない・・・これはいけない。と思って楳図かずおの『漂流教室』を読みかえしたらやっぱりいつものように ....
シーズン真ん中のトマトは甘い
冷たくしたそれを齧りながらわたしは日めくりカレンダーをめくる
すべての準備ができた後時間が経つのはとても遅い
やっと夕方の風が吹き始めお寺で貰ってきた風鈴が良い ....
飛行機の降下
街外れの丘の上で
シャボン玉を生産する子供の頭上
地面すれすれの疾走
弾けていく無数の音は
つかみ損ねるよりも速く
私たちの隙間に落下していく
間に合わないというこ ....
すべてのおんなのこは
みんな桃の実のようで
ピンクに染められた指先を
風が撫でてゆくたびに
わけもなく泣きたくなる
揚子江の上流に見慣れない生き物がいて
現地の人は成人の儀式にそれを食べる
雨の降る夜はいつも
腹の中で卵が孵って
鼻の穴から糸が
するすると
巻き付いて
柔らかな
殻になる
....
今にも泣き出しそうな空
鬱屈する憶いまで塗り込めていく
しらちゃけた大地に空が投げキスのダイブ
待ち詫びた花弁にもジャンプ
透明な繭になって落ちてくる
ぽたぽたと追憶を綴る
忍び込む甘 ....
あの日から
わたしのからだは
透明なゼリーに
くるまれていて
それはずっと
あなたの温度を保っている
その感触は
やさしくて あたたかで ぷるるん
いつまでも
その中にいては ....
時を刻むより他に
自分にはすべきことがあるんじゃないか
時計は思った
けれど何をしようにも
手も足も出るわけがない
ただ柱にぶらさがって
そこはそれ時計の悲しい性なのだろう
正確 ....
「杭 1」
杭を打つ
鍵の形の
杭を打つ
今、一万本打ち終わった
コーン コーン コーン コーン
からっぽのあちらこちらに響いている
杭を打つ音
吹く風
さざ波
....
夕景風が鳴る
ふひゅーんあおあお
さざめくざさささ
ふひゅーんあおあおは彼方からの信号で
信号を窓の中から感じている僕は
木のように揺れている頭のなかを巻いて
片頬をうちぬかれたお ....
雨粒を数えては
いけない
それは
川のように
流れるだけ
人間を数えては
いけない
それは
地球のために
流れるだけ
たった
一つの
ボクらを
引 ....
いずれ姿を消す
だろう月光
光を失った者の記憶には残ら、ず
されどその引力は
植物の{ルビ枝葉=しよう}に
昆虫の触角に
魚の尾びれに
爬虫類の肺に
鳥の翼に
哺乳類の脳に
空の風 ....
だとしたら、方法は一つしかない。笑い転げてのたうちまわるのだ。「最高最高いいわーっ」と叫んで痙攣するのだ。理解しなくてもできなくても、そもそも理解とか知性とかからほど遠い場所に棲息するどうしようもない ....
わたしは雑誌を読む
そこにはこう書いてある
「180度のオーブンで焼いたラザニアを人肌の温度まで下げ、
髪に満遍なく擦り付けて洗います。そして、ラザニアをよく洗い流した後、
ホワイトソースを塗 ....
そうぞうしいみちのうえで
林檎が鳴った
歯をみせて おとは失せる
あなたのつちいろの肌
ゆうぐれと 宵のすきま
てれびをぼんやり ぼんやり
ながめてすごす
ふとしたとき
とばさ ....
土砂降りの雨の中を
黄色い車に乗って走る
そんな夢を見た
助手席には
見知らぬ女がぐっすり眠っていて
いや
もしかすると
眠っているのではなく
死んでいるのかもしれない
....
ねぇ、アリス
貴女が居なくなっても
この世界は続くと思っているでしょう
ここは
たまたま落ちた夢の国
だから
たまたまなんて
二度と起きたりしないのよ
ねぇ、アリ ....
冷蔵庫のスイッチを切るとき
すこしくすぐったくて
おにいちゃんの足音を 耳に返していた
今日はきのうよりすずしくて
風が すけてゆくので
きのうは
カクテルで酔った
ママの ....
かけおりた坂道のおわりには
ボーダー柄の、夏が
波のような顔をして
手をふっていた
それから、 と言ったあとの
あのひとの声が
ノイズにのまれて、ちらちらと
散ってしまったので
....
入院してる友達のために折ってるのと
その子はちょっと淋しそうに
鶴を折っていました
それを手伝おうと
わたしも折ったのですが
できあがった鶴の
羽を広げようとしたとき
その子 ....
いま泣いたら
なぜかもう二度と
笑えなくなるような
そんな気がしたから
空に向かって入道雲を
ググっと睨んでやった
まひるに嘘をついたりしてはいけません
善良なあたしは
....
私の獏は夢を食べない
捨て獏だったからかしら
母乳で育たなかったからかしら
理由はわからないのだけど
とにかく夢をさし出しても
ふんっと顔を背けてしまうから
長い長い格闘の結果
....
世 警
界 か た 告 の ラブレター
に ら 私 へ と し
存 ....
ゆれるこころに
アンギラス
鋸鮫の夾竹桃
吹っ飛んだ冠に
ことばを入れて
かわずの寝床に
ヒナゲシを
ふりむけ
そこのけ
キリギリス
二人の隙間は
狭すぎる
....
−祈りは役に立たない
いつか言われた
その言葉ずっと胸にひっかかっていたけど
やっぱり認められない
何かできることあるかなぁと探しても
何だかひとつも見つからなくて
結局いつも ....
むかし
一年に一度しか逢えない
ひこぼしとおりひめは
可哀想だとおもった
いま
一年に一度必ず逢える
ひこぼしとおりひめを
うらやましいとおもう
あたし達は多分
できかけのべっこうあめみたいに
ぐにゃ、ぐにゃ、してる
べっこう色、
きれいな固い肌も
もってないし
白い上白糖の、
さらさらした柔らかさも
なくしちゃったし
....
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