ふわり、風
ふわり、髪
いつかの夏の真昼の丘で
風にそよいでいたきみのこと
ふわり、風
ふわり、髪
いつかの夏の真昼の丘で
きみの光が思い出に捕らわれそうで
....
焚き火の火を見つめながら
煙草を吸っているから
涙もくしゃみも煙のせいにできる
焚き付けの新聞紙にはテロのニュース
世の中のもめごとみんな燃やしてすっきり
なんてわけにはいかないけど
....
生まれた日のことを覚えている
ちらちらと雪が降って
がやがやと人の声が聞こえた
そして何度か暗くなった
明かりは穏やかに灯った
鳥の声が聞こえた
硬貨の匂いがした
笑っていた
抱きしめ ....
七月の窓辺
夏色の羽をはばたかせて
揚羽蝶がひとり
庭に迷い込んできました
羽を持って生まれてきた生き物は
そんなふうに飛ぶのが
当然なのだというように
ゆらりと抱いた風をふ ....
茫々と流されながら寿司食いねえと無茶を言う小舟
夏は暑いとキタキツネ川獺潜る裏の川恋が太る柳影
こありくいおおありくい近所の庭にも骨が出る
冬が来たらお終い一晩中祈ってる侍の子孫 ....
荒くれた土壌の上に生え
強すぎる太陽の光を浴び
支えとする棒すらも倒れ
葉さえ虫に食い破られた
生きているのが不思議な状態で
自分の生命力だけを頼りに
生きていこうとしている
けど
....
貴方は確かめるように
探るように
ゆっくりと私をなぞる
私はささくれた棘が
貴方を傷つけないかと
息を潜め身構える
何かあったの?と
問うような瞳で見つめる貴方は
髪に触れ ....
とても寂しそうに立っていたから
声をかけられなかった
檻の中
100センチの
ペンギン
タイミングが全て合ったら
結婚しましょう
氷の上で
夕方の風は冷たくはないの
ぬるいの ....
おっきなカエルが枕元に立って
コートの襟を直しながら
鼻の穴をヒクヒク ゲコゲコ
寒い季節になりました
子供たちを運ぶのを
手伝っていただけませんか?
あたしは目をパチ ....
なきうさぎの夢を見る
ある朝
目覚めると
あたりは真っ白な
雪の草原で
私も真っ白な
雪の装いで
私は嬉しくて
ぐるんぐるんと
でんぐりがえり
雪をまとって
走る ....
摩天楼に乱反射する西日
お堀のみなもを揺らす
ビイドロの巨大なレゴの間に見える空
暮れなずむその時
夕焼け雲が小さな感傷のベルを押す
あの子の泣きべそ顔のほっぺは茜雲
見送り駅 ....
十二番目で
いつも言葉を間違えてしまう君は
その次の交差点では
左折ばかりを繰り返している
東京
狭い夕暮れで
夢から覚めたばかりの抜け落ちた体を
ついでのような角度でドアの隙間に潜り込 ....
チョコレート
チョコレートの包みを
あけたのは
退屈なカエルが
土の中から這い出て
鳴いたから
スカーフ
ほめたら{ルビ白髪=しらが}まじりの
老婆がくれた
....
何を忘れたかったのだろう
街に一つしかない小さな駅で
男は窓の外に向かって手を振った
無人のホームでは鉢植えに植えられた
カモミールの花がゆれるばかり
やがて男を乗せた列車が発車すると
駅 ....
想い出は
いいものばかりで
ときどき
あなたの名を呼んでしまうけれど
聞こえたら
ごめん
答えないで
想い出が
更新してしまうから
東京、きみは振り向いて
見過ごすことと忘れることに慣れず
クラップ、手を、たたいて
(光のように)
歩道橋、線になって逃げていく車の
ひとつひとつにああ、ぼくと同じひとが乗っていると ....
まるでどっちでもいいみたいに
二人して机に頭を乗せてる
カフェにてお目覚めですか、かなしみ
頻繁にノックした傷跡を
軽いボールペンで埋めて
きっちり一言分の誤差で
あたしときみは噛み合 ....
空から落ちてくる
やさしいものたちへ
こうしていると
鮮やかに蘇るのは、きっと
傘を忘れ
唇を噛んで
トボトボ歩いた幼い日
胸を弾ませ
両手をかざして
友と駆けた青春の日 ....
ボク
ボクは、僕といわない。
それは、シモベとよむから。
一羽の蝶が飛んでるよ
あなたとわたし
わたしは、あなたから生れた。
そして、母も父も
わたしにはいない ....
男は簡単だった
周りの人はみな
おまえは簡単だ、と言い
いたって普通だった男の両親は
なぜ普通の自分たちから簡単な子供が生まれたのか
死ぬまで不思議がった
時間があると男は海を見に ....
あなたが あのこと キス する あいだ
とおい むかしに たびをして いた
おとが すこし
きこえにくかった あのころ
まいくに きょうみが でたのは
そのこ ....
どれだけ美味しいカレーが作れるか
それは
抱えている苦しみの重さで決まる
インドのある村では
古くからそう信じられているそうだ
その村では
美味しいカレーを作るために
大切に育て ....
夢を見なくなった今の世界
資格資格資格資格資格資格資格資格・・・・
学歴学歴学歴学歴学歴学歴・・・・・
就職就職就職就職就職就職就職・・・
それで何が楽しいと?
自分の人生に満足 ....
しらない をおいかけたら
からかうように空をすべった
梅雨のあいまの明るい風に
しらない しらないと
はしって逃げた
いつだって
しらない は遠く
つかめそうな距離でも
生卵のよう ....
道の途中
その曲り角の 節目ごとに
石を埋める
浅く
また深く
土を掘って
掘り出されることを予期せずに
宝石のように
ただの石を地に埋める
その上に霜が降りる
あるいは雨が降 ....
幸せのかけらはミルク色の花びらになって
満天の星空から零れ落ちてきたようで
みどり色の山から沸き上がる雲の花
いずれ ミルキィウェイに還るのか
真っ白なふかふかの絨毯が
空一面を覆い尽く ....
よちよちとあどけなき手に握られた小菊の束はあさつゆに濡れ
街かどに伽羅のかほりの漂ひて白き日傘に蝉時雨のふる
いま何処におはしますやら彼の人の辿るゆくへは菩薩か修羅か
....
詳しいことは受付でお聞きください
そう言われて男はあたりを見回すが
どこにも受付などない
大切な用件なのだ
思い余って
受付はどこにあるのですか
と再び聞いてみた
あなたが受付です
胸 ....
どのくらいの広さで降っている雨なのか
心は探りに行く
夜に出てゆく
けれど心は気持ちでしかないので
体の外のことは何も感じられない
雨の立てる匂いの遠さと近さ
水の滞空時間
....
夏の情熱の裏側に
すらっと伸びた少年少女の
腕がつかみそこねた{ルビ目差=まなざし}を
冷たく崩れてゆく陽炎
囚われた脈動は
透けていく意識となって
{ルビ中性花=ちゅうせいか}の宙吊 ....
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