遠くはならない
それ以上はどこへも
窓辺に並んだ椅子は
白く塗り変えられていた
捕まえ損ねた手は誰のものか
白く塗られる前も
その前も
そこに在るだけで
忘れていくことばかりで
遠く ....
使い方も覚えた
ようやく
夏が乾き
昨日へと遡ってゆける余裕が生まれる
抱えたことのない問題によって
ひとは計られるとするならば
誰も 誰一人として
濃い青空や
水に濡れた感熱紙に
....
あのころ
あなたの優しさに包まれて
ふたりで歩いた一本道
あなたが消えてから
ずっと近づく
勇気がなかった
この通り
寄り添った肩の
あたたかさ
出会ったことを
大切にしよ ....
強くなると言う事は
自分の弱さに
うまく付き合っていけるようになる事。
中野の図書館のプラネタリウムで
部屋が真っ暗になって
お星が一度にたくさんあらわれた時には
吸い込まれて泣けた
銀河は悲しいから
それで知らない隣の人と手をつないだ
洗濯槽 ....
ことばをください
わたしが一生
元気に生きていけるだけの
強い力をもった
あなたに二度とあえなくても
それを支えにずっと
笑顔でがんばれるような
スマートな優しさや
きれい ....
遠くのサイレンがきこえる
しゃららら
舐めるみたいにきずぐち焼いて
いとしいねこのけなみ
なでなで
こめかみにこつんと
空気のあたる音がしました
わたしには
ことば ....
えりちゃんのにおいがして
雨がすこしふった
きれいなえりちゃんはふきげんで
ようふくの襟を
ひんまげて
おとうさんはとかげを撫でて
まどを
すこし開ける
えりちゃんの隣に ....
玄関のドアを引く
駆け込むようにして進入してくる朝は
少しだけ暗い白
今日も天辺まで積み上がった世界で
濡れたままの人たちが歩いていく
傘を忘れたわけでもなく
濡れることに気付かないわ ....
わたしは、ほんとうは楽譜なのです
と 告げたなら
音を鳴らしてくれるでしょうか
指をつまびいて
すこしだけ耳をすましてくれるでしょうか
それとも声で
わたしを世界へと放ってくれるでしょうか ....
家具屋に行った
広いフロアを丹念に見て歩いたが
家具はどれも高くて
困ってしまった
結局小さな置時計をひとつだけ
買って帰ることにした
また時計を買ってきたの?
呆れ顔でそう言う妻に ....
雨に濡れるのを忘れた人が、信号の前で返り血を浴びている。どんよりと、ただどんよりと生きていけ。おまえの夜の病はいまだ進行中だ。魚群探知機に映る影の人びと。探そうとしてもけっして探し当てられない影の呼吸 ....
悲しみが生まれた頃は
見えないものなのです
それは
徐々に姿を現すのです
時間が経つにつれ
小さくなることはありません
同等の質量を維持したまま
心の真ん中に居座り続けます
....
{引用=
向かいの棟の
ベランダに
煙草をふかしている
女がいる
赤ん坊が
蝉のように鳴いている
今日の
空はとても青い
手摺に掛けられた
赤 青
幾色かの ....
からっぽだから
蒼いの
とうめいな翅を
ふるわせて
飛んでいったから
からっぽなの
埋めようとして
あなたが
抱いてくれたとしても
満たされないの
満たされない ....
ワイパーが傷んでいるから
拭いきれない水滴で視界がぼやける
思わず停めたパーキングで
いらだちが募り空をにらみつけた
そう これが私なんだ
些細なことに感情を左右されて
....
ムーニールーがありんこを相手取って
裁判をしているころ
お日様は林檎を
真っ赤に染めて
林檎はムーニールーに食べられるのを待っている
カタツムリが雨の中
小さくくしゃみしたけれど
ム ....
紋切り型の
モンゴリアンと
もんどりうって
モンゴル相撲
問答無用の
もんじゃ焼き
悶々としながら
門を叩くの
問診してよ
モンアムール
文盲の
文部大臣に
問題の
モンター ....
池袋のスクランブル交差点
ど真ん中で俺は
釣り糸をたれる
ジョニー にぼしのジョニー
おまえはどこか
白い皿の上で美しく
干からびている
ジョニー にぼしのジョニー
おまえもかつて ....
腕いっぽんでどこででも食っていけるほど
確かな自信はないのだけれど
右の人差し指の付け根にはホクロがあって
昔、好きだったひとの胸元にもホクロがあって
宮沢りえの右目の下にもホクロがあって
....
ジガバチの奇怪な姿は
奇妙な収入を約束するが
キカイダーの端正な顔は
個性の平均化と罵倒されて
大いなる
リストラを保証される
初夏のよく晴れた日に
フニクリフニクラと
ゆらゆ ....
少女は壊れた人形を抱き、
死んだように海底を歩く
行き先などないのでしょう
目的は?夢は?憧れは?
と、そんなものも当然なく
穢れなき君の容姿
傷だらけの君は
穢れだらけの僕 ....
目覚めると昼
時計はない
窓を開けると海
ただいま部屋ごと漂流中
はぐれたおかげで
今日も日差しが暖かい
雨の心配はないから
とりあえず歌う
たまに我が家が見えるけど
そこは ....
じっとしているかかしさん。
かんがえごとをしていると
だれかがいっていたけれど
それじゃしごとにならないと
ほんにんだっておもっている。
じっとしているかかしさん ....
時空ポケットに落ち込んで
遠い幻に踊るピエロ
忘れられた虚ろな世界に
たった一人 何を追う
たった一人 誰を待つ
情けないのは重々承知
だっだら
そろそろ戻っておいで
いつ ....
夜になると
魚は目を閉じて
消えていく泡の行く末を思う
消えていく
自らの姿に思いを馳せ
静かに
目を閉じている
夜になると
魚は目を閉じて
自らの見ることのなかった風景を見 ....
昨日までは夢だと言う
あなたは夏に向けて静かに融解していく
水をたっぷりと含んだ世界で
それはとても自然なことのように
梅雨の中にいる
紫陽花が咲いた
午後にゆっくりと傾斜 ....
寂しいとか
助けてとか
そんな弱音を
声に出しても
今夜はきっと大丈夫
騒がしい雨たちが
すべてを
掻き消してくれるから
だから
言ってはいけない言葉さえ
そっと
つぶや ....
きみがさかなになる週末さしのべた指さえ背びれの端かすめゆく
「あいしてる」吐き出す泡の数かぞえ「さようなら」にも見まごう深み
すべての色が吸収され青だけが残る孤独に想いを置 ....
誰かの記した言葉を読むとき、自分自身がそっとその言葉の傍らに寄り添っているような気がすることがあります。詩集に頬を寄せるわけではないけれど、言葉のひとつひとつに愛しささえ感じるような想いで、その ....
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