サクランボの余韻
朝はちぎって立ち上がっていった
急かされたガラスの小鉢は微かな花模様だけを残して
ごとん、
洗い桶の水の底へ消えた


いただきますもごちそうさまも
さよ ....
 同じ筋に住んでいた同級生のM.Y.ちゃんの家が燃えたのは数年前、私たちが大人になってからのことで、Yちゃんの父親が亡くなって半年も経たないうちのことだった。幸い家は留守中でYちゃんの家族は皆 ....  ある夜のお仕事帰りに駅から自宅までの道を原付きで走行中、前を走るタクシーの後ろのバンパーに貼られたイエローのステッカーの『夏の交通安全運動実施中』という文字をなんとなく眺めていて、そのステッカーが『 .... 車窓の光速が
わたしたちに注いでは剥離して
ガタンゴトン
一枚残らず後方へと失踪する
朝はいつも同じ方向への目眩だ


通過駅をことごとく踏み外す その
転落音 ....
遠いらしい鳥の符を数えようとしたら
鳥は止み
近くで鳴った羽虫の曲線をなぞろうとしたら
羽虫も消え
でも 静かな夕刻のどこか どこかにいるのだと思う


消える


い ....
ずっと知っている
甘酸っぱい腐葉土に降り立てば
ほら、夏に焼け焦げた体の
もうすぐそこへ含まれてゆく予感


夏はひとつの心臓として脈打っていた
どくどく、樹液の行き渡ってゆく空気へ ....
夜のうちにアスファルトで開き切った蛾は
気が付けば西へと影をこぼし始めている
そのことに気付かない蛾は
何事も無かったかのように目を置きやって
何事も無かったことになってゆく


今 ....
一学期の終わりに盗まれた一本の鉛筆の
HBの日々の夕刻にサラサラと落下した
「ばいばい」の落書きみたいなひとり言には
いつだって行間が無かった


下校時刻だった、タ、タ、タ
無 ....


 10個目のピアスは、9個目のすぐ下に空けた。恋人となるのが4度目となったTに空けて欲しくて用意したピアッサーを用いて、結局は自分で。相手が望まなければ意味が無い、単なる押し付けがましい願 ....
 『悲鳴をあげる身体』(鷲田清一著・PHP新書)の中に、ここ1ヶ月ほどピアッシング、体、痛みについて考えていた私をはっとさせた記述がある。


   「そのような錯綜した身体状況の背後にあるの ....
 ただ、私がいた。
 ただ、痛い心があった。ただ、体があった。それしかなかった。
 そして、何故かしら、どうしても、体に、痛みが必要だった。



 4番目から6番目のピアスは、 ....
あなたが始めたわたしを
あなたが終わらせてくれる。と
どこかわかっているわたしの夜は
静かだ


夏よ、あなたが
夜に満ちているよ
夜にこそ誰にも触れられずに
(ひそ ....
 つまり、救済。

  ピアッシングは自分を救う為の行為だ。この点では、リストカットと似ているような気もする。(リストカットは、そのときその人にとってはそうしなければ自分を実感できない・維持 ....
 耳に、左右あわせて10個のピアスホールがある。

 ピアッシング、とは、自分の体に穴を空けてピアスを通す行為である。

 ピアス=アクセサリー=ファッション? 


 ....
 <ときにわたしはそんな身体の海の中を漂って、…>



 鷲田清一著『悲鳴をあげる身体』を、数週間前に読み終えた。その中の言葉に、引きつけられる。

 著者である ....
雨の夜のアスファルトでは
光も熱帯魚みたいに濡れている
迫り来てよぎり過ぎ去り遠退く
赤い、黄色い、無数の鱗が目に入って
濡れるしかなかった視線が水性インクとなって
雨の夜に、明るい ....

目を開けなくとも蝉が鳴いている
目を開けなくともあなたの部屋にわたしがいる
けれど、目を開けて
眠るこの部屋のあなたを確かめる


蝉が蝉が鳴いている、ああ、夏なのだ
翅の ....
夜の電車の窓の中の無数の顔色から、ぶらり、色がくだり
腸まで青ざめたわたしたちはひとりでに、ぶらり、垂れるけれど
さびしくないよ。
うまれたままのやわらかさを患い続ける腕と胴体の林の中
夏 ....
始まったばかりの夏
の土の中、まだ摩擦の悦びを知らぬ柔かなお体の、蝉の
けれど夏の終わりにはカサリ摩擦死するお体のそのお顔の
死んで乾いた真っ黒い眼球をもう浮かべてしま ....
 あの夜、何故窓を開けたのかわからない。
 雨が降っているかを知る為かしら。蛙が鳴いているかを知る為かしら。
 それとも、可愛い可愛い風鈴たちを確かめる為?

 酔っていた。
* ....
明るい金属製の音階を
来る、行く
夜の回送電車の
黄色い、黄色い、硝子、硝子の
細切れのがらんどうを映写され
まばらに浮かぶ顔面は
いたずらにスクリーンと化している。

 ....
白、白、白
白い雨に縫われ
この女の、この
表面が微かに夢見るぬるい穢れへの夢は
さらさら、さらさら
消毒されてゆきます


あ、
あの夜、あの、
うっ ....
みずから
無数の眠りと共に飲み込まれ
問われないおんなの言葉は
眼を閉じながら
日没よりも静かに
日没よりも永く
海底の無色へ沈みます


ああ、もう間に合わない、
皮 ....
視線と光線が結んだら
さらさら
妖精が発生してゆく
セロファン製のダンスを舞う
朝をひたひた含んだ妖精のペン先が
愛されなかった夜の輪郭を
透明線で描き直してくださる
 ....
ふと、 指と指
知らず知らず遭遇したら
あ、デコレーション
あなたの根拠を知りたいわたしの炎症
(ラズベリーのつぶらさ、紅さ、の)
を、ホイップクリームでくるみ、わたしは
しん ....
音楽と光が止み
(ひそ、ひそ、)
雪など降らぬ、ましてや星など降らぬ
最初から諦めて、無数の
ただ、咳が
ただ、冬が
最初から諦めて崩れ落ちた白い灰の気配で
見知らぬマフラー ....
あ、
雨の夕刻は
アスファルト状の黒いノートにおいて
ひとつぶ、ひとつぶ、別々の
無数の濁点だ、





雨滴、
雨滴、
黒く
滲んで
広いひとつの痣として ....
仰向けのまま諦めた体に単なる皮膚が降るとき
左斜め上で俯くランプシェイドから、おまえに
音も無く、水も無く、光が泣いて下さる
ひとりの皮膚がひとつのリズムで
気体以上に形のないものを再確認しよ ....
その夏最後の一文を終えても
どうしても飲み込めぬ読点を眼に
含んだまま発音できず
ただ濡らし続けていたら
、あ、
同じ花の種がまた
何度でも生まれてしまい
まろやかなミルク色 ....
遠い管楽器の呼吸が
校庭にゆき渡る
共鳴して震える放課後の
まぶたが橙色にうつ伏せて
伸びてゆく睫の影が、滲む


正しく失われたチャイムの
赤い、低い、余韻
その、金属の香 ....
A道化(290)
タイトル カテゴリ Point 日付
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