長編小説
A道化




その夏最後の一文を終えても
どうしても飲み込めぬ読点を眼に
含んだまま発音できず
ただ濡らし続けていたら
、あ、
同じ花の種がまた
何度でも生まれてしまい
まろやかなミルク色のページを
無数に内包してまったのです
そっと
無数の手のひら、まるく
重ねるようにして


あとは土に下りて
埋まってゆきます
深く、深く、深く、


いつか捲られて
いつか目くるめく
春を、いつか
何百枚も何千枚もしたためようと
今は瞑り、祈りを秘めているここ
柔らかい、ぬくい、痛い眼底
どうぞ、土深く、ここへ
いらして下さい
埋まってゆきます
その夏最後の一文を終え
どうぞ、と、あとはまるく
待つ為に秋、冬、


埋まってゆきます、埋まってゆきます
どうか、土深く、ここへ
いらして下さい


2008.10.5


自由詩 長編小説 Copyright A道化 2008-10-05 23:12:58
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