魚類の夜
A道化



雨の夜のアスファルトでは
光も熱帯魚みたいに濡れている
迫り来てよぎり過ぎ去り遠退く
赤い、黄色い、無数の鱗が目に入って
濡れるしかなかった視線が水性インクとなって
雨の夜に、明るい水族館を描いてゆく
ばらばら降り注いでは砕け跳ね散らばる
青い魚群と黒い魚影の雨足が強くなれば
ひとり分の足音さえなくなって
ああ、水族館には誰ひとりいない
きっとわたしも一匹の
明るい熱帯魚になれたのだ


2009.7.28.


自由詩 魚類の夜 Copyright A道化 2009-07-28 08:14:05
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