空中の緑を
音も無く貫く光
音も無く跳ねる光、の
無数の視線の合う一瞬
摩擦熱が
無数の蝉として発火してゆきます


公園で遊ばずに焦げる皮膚は
可愛らしいアイスクリ ....
あなたが海に沈めたノートを
魚のままで取りにゆこう


強い水と光のために
泣いていることがわからなかった夏が閉じ
ノートを手にとるころには
手足があり
波音はなく
 ....
あなたが見上げている
タクシーの水面、を過ぎていく雨のスピードに
わたしたちは削り取られている
飛び去ってゆく、見知らぬパーティー
灯に濡れたアスファルトの急流
きらきら、きらき ....
お好きでしょう?
と、高みから言い下ろす、雨の
密かな祈りは
花と花の陰へ、葉と葉の陰へ
しと、しと、黙られてゆく。


紫陽花から立つ水の匂い。
後戻りできない蝸牛の渦巻 ....
傍にいてもとってくれぬ夜に、
わたしの赤いあやとりが、ゆるり、たわむ。
想像の余地を失った惑星の軌道みたいに明確に、
ゆるり、
たわむ、
床に、


指の、
床にうず ....
指の願い
叶わず
雨垂れて落下する夕暮れに
そっと逆らい 立ち上がり 
すとん と見下ろせば
窓硝子に迫りくる夕闇に もっと ひろく 
もっと しとしと
見下ろされ


あ ....
信号待ちをするときは
雨のアスファルトを
濡らす夜の光を
滑るように踏み締める車の連続の
車、車、車の
融合しているかのようなスピードに
巻き込まれないだけの重さの、足 ....
訳もなく
お砂糖の糸の溶けて漂う
コップの中の水の宙が
明るい、そこへ
悲しい左目から順に
預ければいい


ほら
眼球が融けて、眩しい
それから右の頬 ....
ゆる、ゆる、何度もまぶたは
まぶた、と知る。
いないあなたを知らず
カーテン、と知り、朝、と知る。
行き来する仄明るい青に促され
ゆる、ゆる、まぶたは
ぬくい水、と知る。

 ....
眠りをすり抜けた昨日の喪失は
ぱらり、
白いお皿への林檎と一緒に
落下して
静止する





ぱらり、ぱら、ぱら、手の平から
白いお皿へと、剥いて ....
今すぐ
私たちが震えていることに
気づきなさい





春、春、
夏夏夏、
瞬きの度に私たちは
その色を、その言葉を
飲み込み、黙り、街路樹に
その芯に、 ....
雨上がりの
仄白い、広い、ひとつの湿度が
冬の夜の終わりに、ふ、と
灯る


夜明けだ
空はひとつの肺となり
冷たく湿った冬の朝を呼吸する
細やかな鳥の霧を含んで
 ....
プラットホーム
薄青く透けた空白へ
真っ直ぐに冴え立つ
色の無い脊椎の林の
プラットホーム


始まる
冬の朝の微細な輪郭線は
薄荷のことなど忘れた振りをしよ ....
どく、どく、と
森と、甲虫を熱くした樹液の脈拍の
どく、
夏の最後の一拍、
の響き終わったあとの静けさが
そっと割れて、孵る、
リ…、ひとつ、
生まれたての、震える鈴が
震 ....
だるい西でカーテンが
光に負けて
ゆ、ゆ、ゆ、
項垂れるように光になり
ほら、カーテンの
半透明の脱力が止まらない。
橙色へ、ゆ、ゆ、ゆ、
痛みを伴って、どうして ....
誰も
さよならを言わない
誰も、何も、言わない





ジ、


ただ
重々しい青へ、空の、青へ
弾け散るように飛び立った蝉の
既にこげ ....
わたしたちの目の前で
落ちるブルー、ブルー、ブルー、





ブルー、ブルー、ブルー、
いちにちの、落ちる、朽ちる、空はやがて
静かに液化して海となり、闇となり
ざ…、 ....
ねえ、
地下鉄の中の私の中の
柔らかい容器を満たすアルコールの中でゆらゆらする
ぬるい両生類みたいな内臓が既に私を憎むことを始めている
グヮ、グヮ、グヮ、そうだ ....
小さく折れ曲がり
玉蜀黍畑にうずくまる
光と共に、空から
夥しく剥がれ落ちる玉蜀黍の葉の
激しい葉脈を見上げる


光、
青、深緑、
夏、
という、灼熱
 ....
あなたを睨む

眼が痛む


守り隠すように
あなたは柔らかな腹部を下にして
その為に息苦しい眠りの上表には
あなたの背が波打っている
私は扇風機を止める
 ....
あなたが夕刻を告げると
わたしのお遊戯が
奇妙な形で切り落とされて
真っ暗になって
ぽた、ぽた、落下する
わたし
という無数の子供たち
の見上げる、灯り
に群が ....
あなたがいた
ある午後のことを
ただ
あおいビー玉と
して


ふと
体をわるものと認めたら大人になり
わるさがすでにこころに及んでいることに
気付くころには、あ、 ....
淡く
夢にいた人は水彩でした


*


(あ、)


こめかみとシーツの間に
かすかに染み入り、そこから
まぶたに明けてゆく一筋の朝の滲みに、すっと
打 ....
朝の窓へ起き上がればいつも
眠りと夢の、仄明るいマーブルが
窓形の光に飲み込まれて、消える
その途端、光の中を雨のように下降する黒髪と
閉じたまま濡れてゆく傘の内側のように黙った胸 ....
混じり気のない東から
広い、まばゆい氷が溢れる
吸うわたしは、吐く
愛おしい、正しい、愛おしい、
ひゅう、ひゅう、
吸う、吐く、わたしは
空気にキスをしている
ああ、だからこの肺 ....
くちびるの
置き場所を間違えた、夜明け
あなたへと無音で震える春が
無音で体温する春が
祈りを湿らせるので
耐え切れずに申し上げた春が
ぬくく、痛く、ここに
滲み始めるの ....
ガードレールの
かすかなすり傷から
少しずつ、ずるり
赤錆と化してゆく
そこを避けて触れた人さし指の
さらさらの、その
真っ白に乗じて、何も
何もかもわからな ....
音も無く
特別な体温は過ぎ
今は、ここは
「ふゆ、」
という
息と


(さよなら、)
という
息と





ただの息
と化す。
 ....
通過電車が
高音の向こうに消え去り
どこまでも
正しいラインを描く傷跡のような
線路上の余韻を見やる


風と白線の内側に
残されたわたしは、ひとつの
丸められた ....
風の金属、高音域の。
線状の宙、引っ掻き傷の。
あなたの心が難しい
というシーンを走れば
眼を閉じてもなお白いスピード、


止まらない、
破けたように白いガードレール ....
A道化(290)
タイトル カテゴリ Point 日付
黒焦げ公園律自由詩208/9/4 9:46
課題図書自由詩608/8/9 16:44
雨のスピード自由詩408/6/26 23:25
雨期の告白自由詩908/6/22 20:52
ひとり宇宙自由詩708/6/22 20:51
練習曲自由詩5+08/5/9 10:07
幽霊雨林自由詩1008/4/23 3:02
お砂糖不全自由詩308/4/20 2:45
培養自由詩3+08/4/12 12:59
本当の林檎自由詩808/3/11 2:56
反抗季自由詩408/2/14 2:45
呼吸器系の季節自由詩908/1/17 8:37
薄荷時間自由詩2108/1/10 3:52
水深浴自由詩707/10/18 13:09
限られた食卓自由詩107/10/7 18:27
滴る耳自由詩2507/8/22 4:14
落ちるブルー自由詩907/8/11 10:15
容器自由詩607/7/27 23:17
微粒子自由詩1407/7/19 8:57
初夏の人自由詩18+07/7/9 21:25
ぽた、ぽた、する自由詩1407/6/26 9:31
わるい頬自由詩1407/6/12 11:41
水彩の夢自由詩3007/4/24 10:58
マーブルが、消える自由詩1407/3/12 8:55
心呼吸自由詩1407/2/14 8:40
種子の祈り自由詩1807/2/5 21:12
赤錆わずらい自由詩1607/1/7 22:44
息の降る、自由詩1606/12/27 17:50
ラブレター自由詩1406/12/14 7:36
白いスピード自由詩806/12/8 12:27

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