下校時間
A道化



遠い管楽器の呼吸が
校庭にゆき渡る
共鳴して震える放課後の
まぶたが橙色にうつ伏せて
伸びてゆく睫の影が、滲む


正しく失われたチャイムの
赤い、低い、余韻
その、金属の香り
下校時間は
赤錆の静けさ


優しくない君が好き、と、吐(つ)き、深く
自らそれを深く吸い込む、真っ赤な
真っ赤な女生徒の制服の中で
誰も知らないミの音が迷宮入りして
痛かった


そもそも触れたこともないところに
帰りたいような気持ちになる時間は
始められたまま
ねえ、君、このまま
何度夕暮れればいいのだろう


2008.9.16


自由詩 下校時間 Copyright A道化 2008-09-16 18:32:44
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