はじめて気がついたかのように、
はっと見下ろしたアスファルトに、肌に、
雨の最期が砕けていて、砕けていて
既に息を引き取った冷たさが明らかで、明らかで
それをわたしは見て見ぬ振 ....
冬の病院の
日曜日には車の少ない駐車場の
荒々しいアスファルトの
理由も何もない黒いところに
石灰を撒き散らす
何処から引用した余白なのか
誰も見透かさないからこそ
安心して引用 ....
夜が増えてゆく空に向かう帰り道
心を込めて目を閉じて
アルト・リコーダーを吹いていた
嘗てのこと
夜が増えてゆく空の方角へ
向かっても向かっても届かない、と
示し始めてくれた空 ....
夕刻の代償として 
こぼれ始めた 影
あけすけに落ち込んだ明度のわたし
こぼれ始めて
こぼれたら 伸びました
おとなの後ろを跳ねる 少女の脚の
美しい柔らかい ケン・ケン ....
こんにちはの時刻の欠落の日々の続き過ぎで、ね
胸いっぱいにレトロを溜めこんだ
公園にはゆきたくない、幼稚園にも何処にもゆきません
正当な主張ではないことを知りながら
こんにち ....
赤い傘を、どうしても、心持ち高く掲げました
救われない愛らしさが骨を伝い腕を伝い無意味に流れてしまい
雨景色を溺れ終えた傘と掌が打ち上げられた上がり框にて
ああ、と言ったらそれ ....
水曜日の、朝
雨の、海
ここは、底。


数え切れない水曜日が
既に溢れはじめてしまって
数え切れない雨として
朝を打ち消している
あらゆる残り香が
あ、香りではなくな ....
朝には
テーブルの余白から
夜に吐いたお伽噺は消えていて
お伽噺の糧として要した液体の缶や瓶は
テーブルの余白にて
死に惚けた口腔のような
得体の知れない黒い空虚に成り果てて ....
目を 凝らしても
何も 見えない
穫り入れの 済んだ
果樹園
の 翳り


もう
崩れる 積荷
の 無い
軽トラック
の 傾き


目を 凝らしたら
余計 見 ....
沢山の肌があって、沢山の息があって
電車の水疱まみれの窓硝子は、耐え切れず、つつ、と、壊れた
そしてまた、つつ、と、何度でも壊れた
沢山の肌があって、沢山の息があった
私わかってい ....
 込んでいるのは駅前だけかと思った。310号線に左折したらすいすいゆく。のだと思った。が、310号線、北へ、車は続いていた。
 永遠に続くような気がした。永遠に続いてくれればと思った。フロントガラス ....
枝で割れ
高くてたまらない空から降る日の光と共に
枝で割れ、枝から漏れ
枝で割れ枝から漏れる紅い朽ち葉は
可愛い可愛いと思った者への
女の、口付けの跡の
剥離、
塵、

 ....
一度切りの湾曲をとうに終え
錆び果てたガードレールは死んだように安堵している
その影に紛れた舗道の一部は黒々と陥没し消滅している


その上空を傷付ける有刺鉄線、私ではな ....
雨滴…
雨滴…


噤み・噤み…とうに声帯を埋没させた雲の体中が産卵し
雨滴・雨滴・雨滴…


句読点の見当たらない文章のように発作の予感を孕んだ雨滴のリズムを
掴めない ....
ビルディングの肩はとうに壊れていて
投げ損ねられた昼がアスファルトで砕け続ける
どれが致命傷なのかわからないくらいの夜が始まる
黒々と割れたビルディングの窓は
誰かの死に愕然としたまま死ん ....
するり、逃げ
架空の生き物のように、人の手には触れられず
するり、猫は逃げ
けれどいつか


その気儘な速度の肢体にある肉球で地面を圧することをやめ
肉球を翻し、力無く、空に ....
しとり
しとり
肩が
ひとつ浴び終えた白い固形石鹸のように、しとり
うな垂れる夜だ
秋の、


始めから用途のない石鹸水の
最後まで澄めない、白濁
いつまでも済めない、 ....
古い倉庫、砂埃に覆われたコンクリートの床は
汚れた床とは二度と呼ばれることはなく
砂埃ごと床として在って
鉄パイプの配置もダンボールの配置も
いつしか放置に変わって


私は ....
午後には、カーテンに漂白され、
白色に、夏の気はふれてゆく


目蓋で覆い尽くすも、白光する夏、白光する、午睡混じりの

色など要らないと叫びたかった私は、
今は、誰

 ....
人の指と
繋がり忘れた指に
連なる透明巾着の紐は食い込まず
わたし
一寸金魚の軽さを恨んだ
水の純でわたしを責めた


駆け出すしかなかった、ある夏の夜
透明巾着の、同じ ....
夏の玉蜀黍畑が夏に朽ち
私は鼓動を探ってうずくまった
途方も無い大気の、余りの光、余りの熱
玉蜀黍の呼吸には錆びて乾いた砂が混じり始め
焦がれるように焦げながら体躯は空に触れた
 ....
書物の陳列の疲労の飽和した本棚は
朝方には回復を諦め軋みもしなかった
テーブルクロスのうつ伏せた脱力の背にある
アルコールの抜け殻の横倒しの唇は投げ遣りに香った
そっと、突き倒した ....
指、で押す
蝉のお腹の柔らかさのことを
私はぼんやり考えている


お腹、を
開いた人は
仰向けになり空の方角へ開いている


光、の直進は
結局ことごとく挫折し ....
夜から朝の為に空いたボトル押し退けたら
ふらふらの激しさが昼の為のコップ倒した


テーブル掛けの端で
黄色い花柄、千切れ
そこから床へ滴るも
滴るも、美しい麦茶
息の要ら ....
夕立でもぎ取れた蝉が
丁度今乾き切りました
私はアスファルトに足を揃えました
腹をかえし対の肢を合わせたその亡骸は
無音の言祝ぎでした


夕立のあと再び燃えていた日は、結局 ....
朝の花瓶から落ちたばかりの
新しい百合の花の傍らに
朝の床にて閉じたばかりの
新しい蝶々を添えたらば
一滴も流れず
ふたつ
満ちた


何も願わない夏の朝
百合の花と蝶 ....
ある窓があって
その窓は生まれつき北向きなのに、あちら側では
目を開いたまま湛えられた池の水面が光になり
崩れそうに傾きながら何かを守る強い屋根瓦が光になり
駐車場に並ぶ誰もいない ....
最後の人が飛び降りたまま
裏返ったブランコの鎖が歪に静止している
翌日になれば元に戻される、それだけのこと
わたしは、もうずっと公園にいない
だから知らない


ブランコ ....
手のひらに握り締めた
生まれつきひび割れた蝉のひび割れた雲母
手のひらの中のその震えと光とを
唯一手に負える夏の単位として感じていた


けれど、もしも
手のひらの中の光など単な ....
青ざめた夜に
チック、音


青ざめた夜にチックが走る
そして、音のある鬱
青ざめた夜にチックが走る、そして
音のある鬱


を、雷光が
ヒステリックに笑う、雷光が
 ....
A道化(290)
タイトル カテゴリ Point 日付
ミゼラブル未詩・独白204/11/21 17:15
余白の引用自由詩704/11/19 0:47
アルト・リコーダーの動揺未詩・独白304/11/18 16:24
夕刻の逃走未詩・独白604/11/17 8:54
レトロ未詩・独白304/11/17 8:53
上がり框にて未詩・独白504/11/17 8:52
水曜日の底自由詩1104/11/16 15:02
テーブルクロス自由詩504/11/14 16:51
暮れる感傷自由詩304/11/12 16:54
重々しい諦め自由詩804/11/12 16:53
日常の渋滞散文(批評 ...304/10/23 7:09
剥離過程[group]自由詩404/10/18 11:05
あるカーブで自由詩3204/10/8 17:32
産卵雲自由詩004/10/8 10:33
秋のカルテ自由詩1004/9/29 9:31
、秋、冬、土自由詩504/9/21 23:32
布地の下自由詩504/9/14 22:34
愛称倉庫[group]自由詩704/9/10 14:59
漂白色自由詩604/8/28 7:57
金魚薄弱[group]自由詩504/8/26 6:58
玉蜀黍砂漠自由詩504/8/20 10:14
爪の気配自由詩304/8/17 7:17
遠隔作用自由詩9*04/8/5 21:00
残酷生活[group]自由詩404/7/31 6:03
忘刻自由詩1304/7/28 5:49
満ち潮の数々自由詩604/7/26 15:49
何処にでもある窓自由詩404/7/16 5:42
公園にいない自由詩1804/7/16 5:42
手に負えない夏自由詩1004/7/13 10:05
ヒステリック自由詩704/7/11 11:31

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