耳たぶが
熱い


空調装置にたしなめられた
浅いシーツのような室内の夜には
昼間に溜め入れた太陽の
滴りそうに赤い耳たぶ一滴で
ベッドが太陽の海になってしまうのを
防ぐ ....
街路樹の木漏れ日の
軽い暗号から、単なる錯乱への
変質
街路樹の木漏れ日の
軽い暗号から、単なる錯乱への
変質



染み込まない
土瀝青


指の隙間から覗く ....
下方を流れる
動けないアスファルトを
凝視している
夏の衣服の軽率な体で、出来うる限り
常に重力のことを忘れず
下方を流れる、動けないアスファルトを
凝視している


歩く私 ....
声帯で
黙殺された孤独は
肺に
積もったようでした


声帯で黙殺された孤独は肺に積もったようでした
そして、やがては
床板に屈した体を
どうしても規則的に置いてゆく呼気に乗 ....
窓枠から遠く、鴉の発音から
鴉の翼が発生して
西の方角、地平線に降ってゆく
黒い花火があったとしたら
こんな風に
ゆっくり悲しいのだろう


この手の中の窓枠を忘れず
この手 ....
身体を懸け
窓硝子が投じくる色彩鈍角と
眼球につきものの悲痛鋭角との
区別が付かず
ずきん、瞑りました
それでなおさら
難解な幾何学を閉じ込めてしまった眼を
白く、拭き取 ....
壁、壁、壁、の、コンクリート、の
暗澹へ、暗澹へ、暗澹へ
投身する風の、その跡形を独占する為
すぐさま雨が投身する
同時に見えるも僅差のあるそれらの自決を
私は、右目と左目で悼む ....
梳き櫛の息の根をわたし止めて
泣く姿、の、無音部分
を拭った指、の
薄命部分、月に透かせば
血潮は青ざめるばかりで
発光もせず


黒髪、の
窒息密度で、黙ったままの ....
夜で潤んだ廊下のタイルに
こぼれていた非常口の灯りは



それなのに
何からも 何処からも
匂いの消えた夜だった


緑色に 浸りたい
そんな気がしていたのは
 ....
夏の日が
この白いカーテンを掴み引くことを正しいと言い切り
この白いカーテンを掴み引く私の手の甲を
えぐる、痛い、傷口は
眩しい



下垂した詐術を失った途端
険しく ....
細く開けたより扉より覗き視る、眼球
にとっての、夏
そこから、差し込む昼の筋が
はっきりと割る、私


半分でいいから、どうか、連れて行ってちょうだい
とは、一言も言えぬうちに昼 ....
風を
包んだ
雨の羽の
横たわりゆく地にて
しめやかになった夏を
やわらかになったアスファルトを
踏む


その
私の
リズムの
ひとつひとつに含まれた 私の
しめや ....
角膜の表面にて
夏の日は湿った瞬きだらけになり
結局はわたし目蓋でその色彩を瞑り流します
そう、悲しい映写幕として
角膜は常時日陰です


鼓膜の表面にて
夏の波動は痒みに酷似 ....
泡立たず
飛散した
夏の光の下
沸騰前のアスファルト
その沈黙、の蒸れ上がり
その、陽炎


提げた虫籠の中
音から立つ
蝉の
匂い
それを
汗を分泌して拒み ....
敷布団への埋没から
起き上がり損ねた体に
小さく開いた口腔、にて
夏って発音が粘つく


天井あたりの酸素眺めながら
吸気は低位置で間に合わせてしまうの
天井に届かない ....
手の甲を
濡れ遅れた微熱にあてがう
初夏だなんて
初夏、だなんて


密度を増しゆく空や緑を背景にしても尚明るく
誇るように明るく無数の二の腕が溢れていて
その無邪気さ、罪は無いけれど ....
濃度を増した緑 の根元
アスファルトには 日陰がある
かつて人だった空間には
かつて花束だったものが 積もっている


湿度に黒ずんだ日陰 の隣
アスファルトには 日向がある ....
俯きがちという言い方は生ぬるく
人々の首は、方角の違いはあれど
完全に折れています


それぞれに掛かる負荷の為に
多くの頭は地面の方向へ折れています
左や右へ折れている首も ....
底面の アスファルトまでも
濡らす五月の緑を
どれほど丁寧に踏みしめても
足音は奇妙に乾くのでした


その足音に含まれた 一連の私は
ぱらぱら 小さくほどけ散るところで ....
しゃがれた体がとぎれそうになったら
ちょうど 一日がおわって
ちぎれ落ちそうな目を浴槽に浸したら
ちょうど まに合って


なんだか ぎりぎりなのだ
それでいて
真夜中には
 ....
墨の ように 
雨が 落ちて


朝の駅に向かうひとびとの
ぼんやり
傘までが 喪に服している
今日失うものの分まで 
悼む顔つきの 薄い朝


雨を 追いすぎて 私は
 ....
夜が
朝 に
ならず
雨になり
ツツジ 切れ
濡れ 流れた 蜜


この先 ひとつの舌も
幸福になりません


雨が
晴れ に
ならず
夜になり
何かが ....
廊下に落ちた西日の溜まりは
しろくしろくまぶしく
まぶしすぎると口に出すことは体の不足を認めることである気がして
目蓋薄め密かに調整しました


床板では、遠くからのピアノ音が ....
午睡が
目蓋をあとにして 引いた頃
残された畳は
幾重もの夕刻で磨耗して
いつしか
青みを失っていた


かつて 
お伽噺の 
わざとらしい色合いの湿度を
痒がって むず ....
浴槽に沈んでいる 午前三時の
代わりに沈み始めた 
無益な水分を含んだ体だ
生暖かく悲しがり
一匹の魚も住めない水分子を
誰か 泣いてくれ


眼球が 震えているのか 
眼球 ....
不揃いな足音は鳩 鳩 鳩の
何かを象徴して下さることを願った赤い皴の寄る足でした
逸らした塞いだ目に耳に染み付いた 赤の皴 皴 皴に
自らの底面の砂利を明け渡す為ベンチの上面へ足を抱え上 ....
紅色に蕾んだハナミズキの予感の
爆ぜるように的中した枝の 昼間の春の
染み込んだ雲は少しも耐えたりしないので
自在に 夜は春を濃くして暮れ


紅を翳らせてゆく 通りの並木の直立の ....
鳴きちる鳥の満ちる朝に形が満ち
形を得た形たちを再び濁らせゆくのは
千切れけぶる花の煙


それは なれの果てではなく
気が遠くなるほど緩やかな横溢
浮かされ翻弄されているのは
 ....
曇天とは無関係に翳った夢の後
ぎゅっと
その翳り残るこめかみを圧する
スピーカーからの果汁


光みたいな酸味、沁み
やっとのことで
鈍すぎた朝に気がついたのは
昼に ....
屋根瓦に置かれた夕刻の重みで
玄関を飛び出したまま私は戻りません


西空の 夜にかけての諦めが
すべて諦め終わった証拠
としての 暗い打撲跡の広がり
そして癖になったそ ....
A道化(290)
タイトル カテゴリ Point 日付
海と耳たぶ自由詩1104/7/5 6:10
偏愛する土瀝青自由詩404/7/2 7:00
喪失訓練[group]自由詩604/6/30 5:18
雨降り回帰自由詩504/6/26 9:48
鴉火自由詩804/6/24 16:17
幾何学夏模様自由詩404/6/23 9:18
風雨心中[group]自由詩404/6/22 9:44
黒虫自由詩604/6/19 6:02
非常口自由詩404/6/16 6:19
白骨自由詩404/6/15 6:48
黒い顔自由詩404/6/13 6:46
踏む自由詩504/6/13 6:45
逆流癖自由詩504/6/13 6:45
夏災報知器自由詩504/6/8 9:18
呼吸狂自由詩404/5/30 23:15
溢れる二の腕自由詩504/5/30 22:19
容器の中の夏自由詩1104/5/18 10:20
屈折率自由詩704/5/11 18:02
五月の枯渇音自由詩1004/5/3 6:28
ぎり ぎり自由詩104/4/30 1:34
自由詩404/4/30 1:32
雨天占い自由詩804/4/27 21:40
艶布巾落とし自由詩604/4/27 17:01
お伽、隠滅自由詩504/4/22 20:49
明けの化石自由詩504/4/22 20:33
偏光病自由詩504/4/19 21:09
ハナミズキ通りの夜自由詩304/4/19 21:04
横溢過程[group]自由詩604/4/15 12:58
レモン自由詩504/4/15 12:57
転落時刻[group]自由詩504/4/5 13:52

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