歩みよれば
空から天使が
降ってくる
光る太陽
変わらない日
今日の気分は快晴らしい
暗闇の中に置かれた
精神異常者が
主張も出来ずに
崩れていく
今は愛の季節だ
風が強 ....
塀越しに高く高く
はなみずきが咲いた
芝生に植えられた一本の花水木
随分昔のことのような気がする
裏口から出られる婦人は
いつも和服をきちんと着て
わたしににっこり微笑んで
丁寧 ....
きみが{ルビ枝=え}を{ルビ手折=たお}り給ふか鈴鳴りの
{ルビ満天星=ドウダンツツジ} 満ちて{ルビ咲くらむ=錯乱}
白目が灰色に染まりはじめる
黒目が必死に見つめるもの
白目を穢して
黒目に映る暴力の影
白目は不安から恐怖へ
黒目がきらりと光る
白目は恐怖から絶望へ
黒目が執拗に見つめるもの
白目が ....
死者のあしおと散るこえの
花息吹だき{ルビ御霊=みたま}ふる
{ルビ永久=とわ}をかぎりと{ルビ去年=こぞ}を問う
晴れるや明日は靴飛ばし
あまどい伝うなみだかな
はあ、長い……退院まではやはり三ヶ月ほどかかるようです。
今日は父が面会に来て……同じ病棟の年下の患者さんから「家族が面会に来るのって嬉しいですか?」と聞かれたのですが、「うちの父親はもう認 ....
「あした 先生はお休みします」
そういって以来さわぐち先生は
学校に来ない
もう二度と会えないんだという
くだらないうわさがガヤガヤと
一組と三組と四組には広まっている
....
幼い日々を映す鏡は真っ黒
警報と瓦礫の思い出
爆撃から守ろうと摘んだ花は
ドライフラワーになって胸に残る
わたしの正義は残酷だった
誰かの正義が真っ黒な鏡に
矢を放って
鏡が割れると
....
蝉時雨の日に緑の紙に捺印をすると決めた
いつまでも友達でいようなんて嘘をつき
きみは天を突き抜け歓喜の歌をうたい
ぼくはどぶ板を這いずり回るゴキブリになるという
今までの18年は悲喜こもごもの ....
昨日は近く
今日は遠い
明日はその中間くらい
夏は遠く
秋は近い
春はよく分からなくて
冬は一周回って背中に
張りついている
夕は近く
朝は遠い
昼はいつも手探りで
....
嘔吐物の匂い
リネンの手触り
二日酔いの痛み
神さまが死んだあとに
うまれてしまったので
自分の重みを
神さまとわかちあえない
昨夜
目につく鏡をすべて割ってしまった
や ....
ちかづければ
チカチーロ
離れれば
リチャードスペック
冗談とかじゃない
この黒犬と
そこらのしたいと
雨のふりをした血が
ジョンゲキシーに
笑っている
....
缶切りできみのこころを開けてゆく 指を切りつつざくざく進む
思いっ切り
石を投げたら
大地から 、
真っ赤な花が咲き出でた。◯
はる、
勉強机と低い本棚の間に架けられた、
一本のクモの糸、
その事が今なんだか妙にうれしい、
それは春が春のなかを渡り歩いたという、
ささやかで、
たしかな軌跡、
ひさしぶりに開け放っ ....
あなたの耳の中に
階段があった
手摺はないけれど
転ばないように
わたしは一段一段
下りていく
一番下にたどり着く
幼いあなたが
膝を抱えて泣いている
もう大丈夫だよ、と ....
ただ広いだけの野に
一つの観覧車が淋しく建っている
観覧車は時とともにゆっくりと回り
様々な風景を人に見せる
観覧車に乗り慣れた人は
見慣れた風景をまた見ることになるが
そうでない人にとっ ....
私という存在を証明するものは何もありません
有るようで無い
無いようで有る
闇に明滅する蛍火のように微かなものなのです
煙草をふかし
ウイスキーを飲み干し
少しの食事で生きていることを ....
ポケットから出した手を
温んだ風の中で
大きく振りながら
まるで音色みたいな
あなたの名前を呼んだ
読み飽きた季節の頁が
温んだ風の中で
めくれるように
まるで花弁みたいな
....
この盆地の西の山の
てっぺんから吹く風は
なぜか大昔の野生の匂いがする
とおい異国のオレンジ農園に
水をまくホースにさす
錆びどめオイルのいい香り
ではなく
三 ....
書けないのなら
書く必要がない
心の縁から
投げ込んだテーマが
もったり沈んでいくのを
焦げたトーストを齧りながら
眺めていた
書けていないのなら
書く意味がない
心 ....
妻が来院して誕生日を祝ってくれた
二人の共通の友人である江中さんと三人で
ぼくはイチゴのショートケーキ
江中さんは確かイチゴのタルトだったと思う
妻はチョコレートケーキ
草団子とクッキー
....
久しぶりに
馴染みの店に
掃き寄せられた
落ち葉の面々
互いの無事を
半ば涙目で喜びつつ
とりあえずハイボールで
万感をこめて乾杯する
真っ赤に出来上がるヤツ
いつまでも ....
涼風たつ坂 くだれば川辺
たっぷりとゆれる 青柳
樹下にたたずめば おとこの腕を
やさしい檻を思い出す
長い髪したひとでした
たてがみみたいに見えました
抱きしめられると 肩に背中に ....
土砂降り雨、
それは胸中の無性のそわそわ、
屋内という安全圏から聞く、
トタン屋根を打ちはじめる激しいその響き、
一時的に水浸しになってゆく外の世界に、
人は良くも悪くも予感する、
いつも ....
あまいお酒が沁みてるケーキ
まるであたしの脳みそみたい
ねじがゆるくて軽やかだから
きみのことも縛らない ぼんやり見送るの
旅のおみやげは 自慢と ジョッキに一杯のぐちと
アンゼリカみたい ....
いまだに風は
冬を吹聴していくが
すでに光は
春を祝福している
押し黙る蕾は
華やかな企みを内に秘め
気象予報士を惑わせながらも
季節は巡ろうとしている
代り映えの ....
雨の子になってみたいな 魂が渇くことなく笑えるでしょう
レインツリー 逃げ込んだなら枝の下 母に似た君に会える気がする
さぼてんが奏でる音色レインスティック 何かと問う声ふるえは止まず
....
黒いスニーカーに 赤い爪を隠して
きみの隣で揺られてる 私鉄 日曜午後八時
窓に映る顔が白くて 目ばかりが大きくて
きみの隣で疲れを見せてる こんな自分がいや
さっき呑んだ梅酒
リト ....
ものわかりがよくなったような顔で
笑いも怒りもせずに
人の話を聞き
夕暮れに詩なんか書いて
夜には酔わない酒を飲み
寝つきの悪いベッドに入る
真っ暗な部屋に少しだけ目が慣れた頃
掻き ....
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